Queria

工場が自前で作って自分で使う電気は、山口県では電力会社が売る量の7割——秋田県の自家発電は6割が風力です

工業団地に企業を誘致するとき、電力は必ず聞かれる項目のひとつです。系統に余裕はあるか、料金水準はどうか、止まったときにどうなるか。手元の資料はたいてい、電力会社が県内で売った電力量の統計です。

その脇に、もうひとつの電気があります。工場が自分の敷地に発電設備を持ち、そこで作ってそのまま自分で使っている電気です。電力会社との売買が発生しないので、販売量の統計には現れません。この記事では、その量が全国にどれだけあり、県によってどう違うのかを数えます。

自家用発電所という区分

使うのは、経済産業省 資源エネルギー庁の電力調査統計にある「自家用発電所等実績」です。自家用発電所とは、電気を売ることを事業とするのではなく、自らの需要のために発電する設備を指します。工場の屋根に載せた小規模な太陽光の自家消費や、家庭の設備はここに入りません。

このテーブルは、都道府県 × 月 × 原動力の1レコードで、発電した電力量とその行き先を収めています。発電した電気は3つに分かれます。

区分 意味
自家消費電力量 発電した事業者が自分で使った分
所内及び損失電力量 発電所そのものの運転に使った分と送る途中で失われた分
送電電力量 発電所の外へ送った分

2025年度(2025年4月〜2026年3月)の全国の合計は94,949GWhでした。このうち61,060GWhが自家消費、7,825GWhが所内及び損失、26,064GWhが外へ送られています。作った電気の64.3%は、作った場所でそのまま使われていることになります。

同じ年度に小売電気事業者が全国で供給した電力需要量は817,450GWhです。自家消費された61,060GWhはこれに含まれない別の量なので、両者を足せば重複せずに並べられます。全国では小売販売量の7.5%にあたる電気が、電力会社を通らずに作られて使われていました。

臨海の工業地帯に偏っている

この7.5%は、県ごとに見るとまったく違う値になります。自家消費された電力量が、その県で小売電気事業者が売った電力量の何%にあたるかを地図にしました。色が濃いほど、電力会社の外側にある電気の比重が大きい県です。

濃い色は臨海部に偏っています。順位で並べ直すと、県ごとの開きの大きさがはっきりします。

最も高いのは山口県の69.8%です。県内で小売電気事業者が売った電力量の7割にあたる電気が、その脇で作られてそのまま使われています。岡山県が40.1%、広島県が30.5%、和歌山県が23.7%と続きます。いずれも臨海部に大規模な工場が並ぶ県です。

反対の端では、沖縄県と奈良県が0.4%、石川県が0.5%、東京都が0.7%です。上位と下位では100倍以上の開きがあります。全国の7.5%という値は、47都道府県のどこかを代表しているわけではありません。

企業誘致の資料に「県内の電力需要」を載せるとき、山口県と東京都では、その数字が県内の電気の使われ方をどこまで説明しているかが大きく違うことになります。

同じ「自家用」でも中身が違う

自家用発電所は、電源の内訳も持っています。2025年度の全国の内訳は次のとおりです。

全国では火力が82,223GWhで86.6%を占めます。新エネルギーの計は18,988GWhで20.0%です。この表は計とその内訳を同じ列に並べているので、構成比を足すと100%を超えます。さらにバイオマスの8,076GWhは、新エネルギーの計に入りながら同じ量が火力の計にも含まれています。以下では重複しない太陽光・風力・地熱の3つを合わせた割合を「太陽光・風力・地熱の割合」として使います。全国では10,911GWh、合計の11.5%にあたります。

この電源の違いは、発電した電気の行き先と結びついています。横軸に太陽光・風力・地熱の割合、縦軸に発電量のうち外へ送った割合を取り、都道府県を並べました。円の大きさは発電量です。

右上と左下に分かれます。

左下は山口県です。発電量は9,500.8GWhで全国最大、そのうち87.6%が石炭を燃料とする火力で、太陽光・風力・地熱は2.9%しかありません。外へ送るのは18.7%だけで、残りは自分で使います。岡山県(太陽光・風力・地熱2.2%、外へ送るのは23.5%)、愛知県(3.2%、20.8%)も同じ位置にいます。工場が自分の熱と電気をまかなうために置いた設備なので、作った電気は敷地の中で消えていきます。

右上は秋田県です。発電量は502.3GWhと山口県の19分の1ですが、太陽光・風力・地熱が70.9%を占め、うち風力だけで62.9%です。そして発電量の72.6%を外へ送っています。高知県は外へ送る割合が83.6%と最も高く、熊本県が76.1%、山形県が75.2%と続きます。名前は同じ「自家用発電所」でも、こちらは作った電気の大半を敷地の外へ出しています。

企業誘致の場面では、この2つは意味が違います。左下の県では、電気を大量に使う産業がすでに集まっていて、その電気を自分で作る設備が整っています。右上の県では、自家用として登録された再生可能エネルギーの設備が系統に電気を供給しています。「自家用発電所の発電量」という同じ列を見ていても、読み取れる産業の姿は別のものです。

送った先は電力会社とは限らない

外へ送られた電気には、送電先の内訳があります。電気事業者への送電、特定供給の相手方への送電、その他の事業者への送電の3つです。特定供給とは、生産工程・資本関係・人的関係などで密接な関係にある相手方へ電気を供給することを指します。同じ構内や隣接する敷地にある別の会社へ、電力会社を介さずに電気を渡している形です。

全国では、送電された26,064GWhのうち21,025GWhが電気事業者へ、4,899GWhが特定供給の相手方へ向かっています。送電量の多い15県について内訳を見ます。

送電量が最も多いのは広島県の2,578.2GWhですが、そのうち2,578.1GWhが電気事業者向けで、特定供給はゼロです。2位の茨城県は2,222.3GWhのうち1,519.6GWhが特定供給で、送電量の68.4%を占めます。山口県は1,780.9GWhのうち870.1GWh、愛知県は1,673.4GWhのうち849.3GWhが特定供給です。この3県だけで、全国の特定供給4,899GWhの66%にあたります。

一方、岡山県は1,921.8GWhを送電しながら特定供給は13.0GWhにとどまります。送電量が同じくらいでも、隣へ渡しているのか電力会社に売っているのかは県によって逆になります。

特定供給が大きい県には、電気を融通し合う企業が同じ敷地の中に複数いる、ということになります。産業用地の引き合いに答えるとき、系統の容量とは別の選択肢がその土地にあるかどうかを示す手がかりになります。

企業誘致の資料にどう使うか

  • 自県の「電力需要」に、自家消費されている電力量を並べて示せます。電力会社の販売量だけでは、県内で動いている電気の量を説明しきれない県があります
  • 誘致先の産業を検討するとき、自家用発電所の電源構成が手がかりになります。火力中心なら熱と電気を大量に使う産業が既におり、太陽光・風力中心なら発電事業そのものが立地しています
  • 特定供給の量が多い県では、構内で電気を融通し合う企業が既にいます。特定供給は資本関係などで密接な関係にある相手方に限られるので、グループ会社や取引先を伴う引き合いで、その形が取れる地区かどうかの手がかりになります
  • 月ごとに収録されているので、季節による変動や大きな設備の増減を追えます。県全体の水準がいつ動いたかを確かめられます

データの出典

本記事は経済産業省 資源エネルギー庁の電力調査統計のうち、統計表5「自家用発電所等実績」と統計表3-(2)「都道府県別電力需要実績」を2026年9月5日時点で集計しています。自家用発電所の都道府県別の収録は2024年4月から2026年3月までで、本記事はこのうち2025年度(2025年4月〜2026年3月)の12か月を対象にしています。電力量の単位はいずれもMWhで、本文と図では1,000で割ったGWhで表示しています。都道府県の地図は国土交通省の国土数値情報 行政区域データを使っています。

自家用発電所の統計と小売電気事業者の需要統計は対象が重ならないため、県内で使われた電気の総量を知るには両方を並べる必要があります。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。原典が月ごと・原動力ごとに分かれたExcelで配られているものを、都道府県コードと年月を揃えた1つのテーブルにまとめ、合計と内訳と再掲の区別をメタデータとして添えてあります。本記事で使った自家用発電所の実績テーブルと都道府県別電力需要テーブルから、自分の県の数字を月単位で確かめたり、電源別の内訳を追ったりできます。統計を集めて突き合わせる手間をかけずに、誘致先に示す説明そのものに時間を使えます。

続きや気になることをAIエージェントで深掘りする

Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。

たとえば「meti.energy.captive_power_generation_by_prefecture から、自分の県の自家用発電所の発電量を原動力別・月別に出して。自家消費電力量と送電電力量の内訳も月ごとに比べて」といった深掘りができます。

Queria の公開データで次を分析してください: meti.energy.captive_power_generation_by_prefecture から、自分の県の自家用発電所の発電量を原動力別・月別に出して。自家消費電力量と送電電力量の内訳も月ごとに比べて
参考 (この記事): https://queria.io/showcase/captive-power-self-consumption.md
Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
ターミナル(CLI)で始める
claude "Queria の公開データで次を分析してください: meti.energy.captive_power_generation_by_prefecture から、自分の県の自家用発電所の発電量を原動力別・月別に出して。自家消費電力量と送電電力量の内訳も月ごとに比べて
参考 (この記事): https://queria.io/showcase/captive-power-self-consumption.md
Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"

おすすめ記事

関連
使う量より多くの電気を送り出す市区町村は全国に410ある。いちばん多いのは太陽光ではなく水力の町

市区町村ごとに送電網へ流した電気と受け取った電気を突き合わせました。2024年度に送り出しが上回ったのは1,741のうち410で、最も多いのは水力が最大の電源の166市区町村です。

2026年8月27日
関連
地元で使う量より多くの太陽光の電気を送り出している市区町村が、全国に63あります

資源エネルギー庁の市町村別データで、太陽光が系統に送り出した電気を地域の電力需要と比べます。2024年度に需要を上回ったのは63市区町村でした。

2026年8月11日
関連
送電網につながる蓄電池が3年2か月で14倍——ただし出力の6割は4つの道県に集まっています

経済産業省の電力調査統計から、送電網につながる蓄電池の箇所数と最大出力を都道府県別・月ごとに集計しました。2023年4月から2026年6月までに12か所から169か所へ増えた一方、最大出力の6割は4道県に集まっています。

2026年9月1日·更新 2026年10月18日
関連
使う電気の1割しか作っていなかった佐賀県が、いまは2.5倍を作る——電気を作る県は10年で入れ替わる

都道府県別の発電実績と電力需要実績を突き合わせ、県内で使う電気を県内でどれだけ作れているかを2016年度から2025年度まで10年分並べました。

2026年8月15日
関連
熊本県の大口の電力需要は2023年末から2年6か月で21.1%増えました

資源エネルギー庁の都道府県別電力需要を12か月移動累計で追い、2016年度から2023年度に大口の需要が二桁増えた5県と、それぞれ増えた時期の違いを示します。

2026年8月5日·更新 2026年10月20日
関連
谷や斜面を埋めて造った宅地に住む人は推計391万人。住民の2割を超える市町村が17ある

大規模盛土造成地と500m四方の将来推計人口を重ねました。横浜市は住民の16.5%が盛土の上に住み、住民の2割を超える市町村は全国に17あります。

2026年10月22日

本記事はAIエージェントがQueriaの公開データを分析して作成し、別のエージェントが記事内のSQLをすべて実行して本文と照合したうえで、が公開前に確認しています。記事の数値はすべて掲載しているSQLから再現できます。