
熊本県の大口の電力需要は2023年末から2年4か月で19.6%増えました
資源エネルギー庁の電力調査統計には、都道府県別の電力需要実績が2016年4月から2026年4月まで、月ごとに収録されています(power_demand_by_prefecture)。小売電気事業者が供給した電力量を、契約の電圧区分で3つに分けたものです。
| 列 | 区分 |
|---|---|
extra_high_demand_mwh |
特別高圧 |
high_demand_mwh |
高圧 |
low_demand_mwh |
低圧 |
この記事で追うのは特別高圧です。3区分のうち契約がいちばん大きいもので、電力の小売自由化も使用最大電力2,000kW以上の需要家から始まり、50kW以上、そして2016年4月の全面自由化へと広がりました。区分を分けているのは契約の電圧だけなので、業種の区別はありません。製造業以外の需要家も同じ区分に入っています。
月ごとの値をそのまま並べると夏と冬が高く出ます。直近12か月を合計すると1年分の季節がひととおり入るので、水準の変化だけが残ります。この形で2017年3月から2026年4月まで追ったのが次の図です。県によって水準が5倍以上違うので、縦軸は対数目盛にしてあります。線の傾きが同じなら増加率も同じです。
取り上げるのは、2016年度から2023年度にかけて特別高圧の需要が二桁増えた岩手県・長崎県・三重県・熊本県・鹿児島県の5県です。
5県とも2016年度から2023年度で増えていますが、増えた時期はそれぞれ違います。岩手県は系列の底である2019年7月の1,421GWhから2023年1月の2,405GWhまで、42か月で69.2%増えました。そのあと2024年1月の2,376GWhまで1年ほど平らになり、2026年4月には2,656GWhへ再び増えています。長崎県は2020年半ばの1,403GWhを底に2025年1月の2,052GWhまで46.3%伸び、そこから先は2026年4月の2,101GWhまで緩やかです。
鹿児島県は最も早く、系列の始まりである2017年3月の1,445GWhから2019年1月の1,569GWhまで上がり、そのあとは2026年4月の1,657GWhまで1,528〜1,662GWhの幅から出ていません。三重県は5県のなかで水準がひとつ大きく、2017年3月の7,628GWhから2022年の9,524GWhまで伸びたあと、2026年4月は9,318GWhです。熊本県は逆に最も遅く、2023年を通じて2,841〜2,882GWhの狭い幅に収まっていました。2024年に入ってから上向き、2026年4月には3,399GWhになりました。この帯の下端にあたる2023年12月の2,841GWhと比べると19.6%多く、2年4か月での変化です。
なお電力需要実績は小売電気事業者が供給した分なので、事業所が自前の発電設備で作って自分で使う電力は入っていません。系統から買う量が変われば、そこで使う電力の総量が変わらなくてもこの数字は動きます。
全国は9年で5.4%減っている
5県の増加がどれくらいの大きさなのかは、全国と比べると分かります。3つの区分それぞれについて、47都道府県の合計を年度ごとに出したものが次の図です。
特別高圧は2016年度の231.4TWhから2025年度の219.0TWhへ、9年で5.4%減りました。高圧は308.3TWhから289.6TWhへ減り、家庭を含む低圧は310.8TWhから308.8TWhとほぼ横ばいです。低圧だけが増えて他の2区分が減ったのは、収録期間では2019年度から2020年度にかけての一度だけです。特別高圧は229.9TWhから215.0TWhへ、高圧は302.8TWhから291.2TWhへ落ちる一方、低圧は303.4TWhから314.7TWhへ増えています。
ただし特別高圧は一方向に減り続けているわけではありません。収録期間で最も多いのは2018年度の236.3TWh、最も少ないのは2020年度の215.0TWhで、そのあと2021年度に225.4TWhへ戻し、2025年度は219.0TWhです。この全国の水準に対して、先ほどの5県は同じ期間に水準を上げたことになります。
出荷額の側はどうなっているか
製造業の規模を金額で表した統計に、製造品出荷額等があります。e-Statの社会・人口統計体系に収録された都道府県別の経済データ(c_pref_economy)に、製造品出荷額等(C3401)として1975年から2023年まで入っています。項目定義によれば、単位は百万円、対象は従業者4人以上の事業所、集計期間は暦年(1〜12月)です。電力需要のほうは年度(4〜3月)なので、以下の比較は3か月ずれた期間を重ねています。
両方が揃う2016年から2023年について、都道府県ごとの変化率を並べたものが次の図です。横軸が製造品出荷額等、縦軸が特別高圧の電力需要で、どちらも2016年を起点にした変化率です。なお出荷額の2016年の値は工業統計調査、2023年の値は経済構造実態調査によるもので、変化率にはこの調査の切り替えの影響も含まれます。
点のほとんどが右下に集まります。製造品出荷額等は47都道府県のうち46で増えていますが、そのうち36では特別高圧の電力需要が減っています。両方が増えたのは10だけです。図では岐阜県が横軸に重なって見えますが、変化率が0.0%に丸まっているためで、減った36に含まれます。
出荷額の伸びが最も大きいのは大分県の+53.8%と愛媛県の+46.6%ですが、電力はそれぞれ16.4%、17.2%減っています。電力の減り幅が最も大きいのは高知県の-37.4%で、この県の出荷額も+15.2%と伸びています。反対の端は岩手県の+58.8%で、出荷額の+31.7%を上回りました。先ほど図に載せた5県のうち、電力の伸びが出荷額を上回ったのは岩手県と長崎県(+6.4%、+28.2%)の2県です。
この2つは測っている量が違います。製造品出荷額等は名目の金額で、電力需要は物量です。金額のほうは、生産した量が同じでも単価が変われば動きます。
そして熊本県について言えば、電力が動き出したのは2024年に入ってからでした。製造品出荷額等の収録は2023年までなので、この2年4か月ぶんの増加は出荷額の統計にまだ1か月も入っていません。
データの出典
本記事は経済産業省 資源エネルギー庁の電力調査統計から都道府県別電力需要実績(power_demand_by_prefecture)を、e-Statの社会・人口統計体系から都道府県別経済データ(c_pref_economy)の製造品出荷額等(C3401)を、2026-08-05 時点で集計しています。電力は2016年4月から2026年4月まで、製造品出荷額等は1975年から2023年までが収録範囲です。
月ごとの数字は、1年分をまとめて初めて水準の変化として読めるようになります。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。資源エネルギー庁やe-Statをはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別電力需要実績から自分の県の直近の動きを確かめたり、都道府県別経済データと突き合わせたりできます。
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たとえば「三重県と鹿児島県の特別高圧の電力需要を2016年4月から月ごとに出して。12か月移動累計にして、水準が動き出した月も教えて。」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 三重県と鹿児島県の特別高圧の電力需要を2016年4月から月ごとに出して。12か月移動累計にして、水準が動き出した月も教えて。 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/industrial-power-demand-signal.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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