
工場の街で主力の業種が崩れても伸びても、ほかの業種で働く人は同じだけ減っていました
製造業の事業所がまとまってある街では、働く人の何割かがひとつの業種にぶら下がっています。その業種の大きな工場が縮んだとき、街の製造業全体がどうなるのか——取引先が連鎖して減るのか、それとも別の業種が人を引き受けるのか。産業振興の担当者にとって、どちらが起きるかで打つ手が変わります。
工業統計調査は、市区町村ごとの製造業の従業者数を日本標準産業分類の中分類24区分まで分けて記録しています。2008年と2020年の2時点を並べれば、主力業種が大きく減った街と増えた街で、同じ街のほかの業種がどう動いたかを比べられます。
業種別の内訳がある761市町村
このデータは e-Stat「工業統計調査」の市区町村別・産業中分類別統計(e_stat.manufacture.municipality_industry)から取得しています。1つの地域につき製造業計(industry_code = 00)と中分類24区分が縦に並びます。従業者数には秘匿による欠測がなく、内訳を持つ地域では24区分の和が製造業計にちょうど一致します(2008年の766地域・2020年の772地域すべてで一致し、ずれは0件です)。ある業種の従業者が0人と出るのは、その業種に従業者4人以上の事業所が残っていないことを意味します。対象は従業者4人以上の事業所で、それ未満の小さな工場は数に入りません。
産業中分類の内訳が公表されるのは市区町村と政令指定都市の行政区だけで、都道府県の行は製造業計しか持ちません。2008年と2020年の両方で内訳を持つのは761市町村です。産業別の内訳が公表されていない小規模な市町村と、内訳が行政区ごとにしか無い政令指定都市・東京23区はここに入りません。761市町村の従業者数は2008年が5,880,574人、2020年が5,596,635人で、それぞれ全国の70.3%と72.5%にあたります。
製造業の街は、ひとつの業種に偏っています。各市町村で2020年に従業者数が最も多い業種を「主力業種」と呼ぶと、それが街の製造業従業者の3割未満にとどまるのは434市町村です。3割から5割が226市町村、5割から7割が77市町村あり、7割以上を1業種が占める街も24市町村あります。5割以上を1業種が占める街は101で、761市町村の13%にあたります。製造業の街のおよそ8つに1つでは、働く人の半分以上が同じ業種に集まっていることになります。
そこで各市町村の従業者数を、2008年時点の主力業種と、それ以外の業種の2つに割ります。産業中分類のコードと名称は2008年から2020年まで同じ産業を指したままなので、2つの年の同じ区分どうしを比べられます。
主力が崩れた街も伸びた街も、ほかの業種の減り方は同じでした
まず街を1つずつ、主力業種の変化率の順に並べて5等分し、グループごとの中央値を取ります。主力業種とそれ以外がどちらも2008年に500人以上いた647市町村が対象です。
赤い棒は左から51.0%減、21.3%減、8.6%減、7.5%増、29.7%増と、80.7ポイントの幅で並びます。これはグループの分け方そのものなので、読むべきは青い棒です。左から4.8%減、6.3%減、5.7%減、5.8%減、6.7%減——5つのグループの差は1.9ポイントしかありません。ばらつきの位置もほぼ重なります。それ以外の業種の変化率は、どのグループも第1四分位が15.5%減から16.9%減、第3四分位が1.3%増から9.9%増の間にあります。
主力業種が半減した街も、3割伸びた街も、そのほかの業種の減り方は変わりません。中央値も四分位の位置も、5つのグループでほぼ重なっています。
主力業種の10年は、業種によってまったく違います
主力業種の側がこれだけ振れるのは、業種ごとの結果が大きく分かれているからです。761市町村を合計して、業種別に2008年から2020年の従業者数の変化を見ます。
24区分のうち増えたのは6業種だけです。最も伸びたのは化学工業で254,086人から287,237人へ13.0%増、次いで石油製品・石炭製品製造業が11.0%増、輸送用機械器具製造業が770,447人から810,117人へ5.1%増でした。残る18業種は減っています。落ち込みが最も大きいのは情報通信機械器具製造業で、176,659人から95,500人へ45.9%減。繊維工業が28.7%減、なめし革・同製品・毛皮製造業が26.5%減と続きます。
同じ「製造業」でくくられていても、この2時点の間に従業者が1割増えた業種と半分近くまで減った業種が同居しています。街の側から見れば、どの業種を主力にしていたかで結果がまったく違ったことになります。
業種ごとにまとめても、ほかの業種は動いていません
今度は街を2008年時点の主力業種で分け、街が8つ以上ある16業種について、主力業種とそれ以外の変化率を並べます。
赤い棒は大きく振れています。情報通信機械器具製造業を主力とする22市町村では、その業種の従業者が56,443人から28,348人へ49.8%減りました。業務用機械器具製造業の17市町村で35.7%減、電子部品・デバイス・電子回路製造業の80市町村で27.3%減。反対に化学工業の30市町村では11.5%増、輸送用機械器具製造業の87市町村では5.1%増えています。赤い棒の幅は61.3ポイントに広がります。
青い棒はほとんど動いていません。主力業種が半分近くまで減った情報通信機械器具製造業の街で、それ以外の業種は2.6%減にとどまりました。主力が11.5%伸びた化学工業の街でも、それ以外は0.0%です。16業種を通した青い棒の幅は、最も減った印刷・同関連業の街の13.5%減から、最も増えた繊維工業の街の2.4%増まで、15.9ポイントしかありません。
しかも青い棒の並びは赤い棒の並びと対応していません。主力が最も崩れた情報通信機械器具製造業の街でそれ以外は2.6%減、主力がほぼ横ばいだった食料品製造業の街ではそれ以外が8.5%減と、むしろ逆になっています。主力業種の浮き沈みは、同じ街のほかの業種には伝わっていません。連鎖して減ってもいませんが、減った分を引き受けてもいません。ここで数えているのは製造業の事業所だけなので、物流や小売など製造業の外へ波及したかどうかは、このデータからは分かりません。
主力が消えた街で実際に起きたこと
2008年に主力業種が5割以上を占めてその業種に2,000人以上が働き、それ以外の業種にも500人以上がいた街のうち、主力業種の従業者が最も多く減った8市を取り出します。
秋田県にかほ市は、2008年に電子部品・デバイス・電子回路製造業が製造業従業者の63.7%にあたる3,826人を占めていました。2020年にはこれが610人まで減っています。同じ街のそれ以外の業種は2,180人から2,616人へ20.0%増えましたが、増えた436人に対して主力業種が失ったのは3,216人です。千葉県茂原市も同じ形で、主力の電子部品・デバイス・電子回路製造業が6,264人から1,598人へ減る一方、それ以外は3,429人から3,767人へ9.9%増えました。
東京都武蔵野市と栃木県矢板市では、主力業種の従業者が0人になっています。武蔵野市は輸送用機械器具製造業に4,690人、矢板市は情報通信機械器具製造業に2,803人がいた街でした。武蔵野市ではそれ以外の業種も573人から333人へ41.9%減り、矢板市では2,541人から2,249人へ11.5%減にとどまっています。
一方、愛知県刈谷市の主力である輸送用機械器具製造業は37,244人から32,564人への12.6%減で、それ以外は15,577人から17,200人へ10.4%増えました。愛知県碧南市はそれ以外が24.3%増です。街1つずつを見ると、それ以外の業種は上にも下にもぶれます。ただしそのぶれ方は、主力業種が何割減ったかとは対応していません。
この結果を業務でどう使うか
- 担当する市町村の主力業種を特定し、その業種が761市町村の合計で増えたか減ったかを見る。主力業種の全体の動きが、その街の製造業雇用の行き先をおおむね決めています
- 主力業種が縮んでいる街で、既存の他業種が受け皿になることを計画の前提に置かない。2008年から2020年までの間、それ以外の業種は中央値で4.8〜6.7%減っており、主力の減少を埋める動きは見られません
- 2020年時点で主力業種が5割を超える101市町村に当てはまる街では、その業種の浮き沈みを雇用見通しの前提として扱う。3割未満の街とは備えるべき振れ幅が違います。この調査は2020年確報で終わっているので、それ以降の動きは別の統計で補うことになります
- 既存企業の支援対象を、主力業種の取引先という想定だけで絞り込まない。主力業種が縮んだ街でほかの業種が連鎖して減った形跡は、このデータには出ていません
データの出典
本記事は e-Stat の工業統計調査(経済産業省)に収録された市区町村別・産業中分類別統計(e_stat.manufacture.municipality_industry)を2026年9月15日時点で取得して集計しています。従業者数は調査期日時点の人数で、2014年までは調査年の12月31日現在、2017年以降は調査年の6月1日現在です。この調査は2020年確報を最後に行われていません。
製造業の街の雇用がどこへ向かうかは、街ごとの合計だけを見ていても分かりません。業種まで分けたうえで、ほかの街と同じ物差しで並べて初めて輪郭が出てきます。こうした集計の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。年ごとに書式の変わる統計表について、列名・単位・地域コードを揃え、産業分類の改定や調査期日の変更といった注意点をテーブルの説明として添えてあります。本記事で使った市区町村別・産業中分類別の工業統計テーブルから、担当する市町村の業種構成を確かめたり、同じ主力業種を持つほかの街を探したりできます。統計表を集めて加工する手間をかけずに、どの業種にどう手を打つかの判断そのものに集中できます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「e_stat.manufacture.municipality_industry から、自分の市区町村の産業中分類別の従業者数と事業所数を2008年と2020年で並べて、どの業種が増えて減ったか出して。同じ主力業種を持つほかの市町村も一覧にして」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.manufacture.municipality_industry から、自分の市区町村の産業中分類別の従業者数と事業所数を2008年と2020年で並べて、どの業種が増えて減ったか出して。同じ主力業種を持つほかの市町村も一覧にして 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/factory-town-core-industry.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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claude "Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.manufacture.municipality_industry から、自分の市区町村の産業中分類別の従業者数と事業所数を2008年と2020年で並べて、どの業種が増えて減ったか出して。同じ主力業種を持つほかの市町村も一覧にして 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/factory-town-core-industry.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
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