
東京都の認可保育所データで、運営主体の構成と地域差を読む
認可保育所は、かつて社会福祉法人と自治体が運営の中心でした。2000年に株式会社などの営利法人の参入が認められ、待機児童の解消を急ぐ都市部を中心に、企業が運営する保育所が増えていきます。とりわけ東京では、駅の近くにビルの一室を借りた小規模な園が数多く開設されてきました。運営主体が多様になったいま、認可保育所は誰が担っているのでしょうか。
この記事では、東京都オープンデータカタログが公開する東京都福祉局「社会福祉施設等一覧」(令和7年5月1日時点)から、都内の認可保育所3,581施設を運営主体別に数えます。1施設ごとに設置主体・所在地・認可定員が記録されているため、運営の担い手の構成と、その地域による違いを施設単位で追うことができます。
まず、都内3,581施設を設置主体で4つに分けて全体像を見ます。設置主体は「営利法人」「社福法人(社会福祉法人)」「区市町村(公立)」のほか、公益法人・学校法人・医療法人などが少数含まれます。ここでは数の少ない主体を「その他」にまとめました。
| 運営主体 | 施設数 | 施設数の割合 | 認可定員の割合 | 平均定員 |
|---|---|---|---|---|
| 営利法人 | 1,388 | 38.8% | 30.6% | 69.4人 |
| 社会福祉法人 | 1,261 | 35.2% | 39.7% | 99.2人 |
| 公立(区市町村) | 756 | 21.1% | 25.2% | 105.0人 |
| その他 | 176 | 4.9% | 4.5% | 79.8人 |
施設数では営利法人が最多で、全体の38.8%を占めます。ただし1園あたりの認可定員は営利法人が69.4人と最も小さく、社会福祉法人(99.2人)や公立(105.0人)とは30人以上の差があります。この規模の違いから、施設数と定員では担い手の構図が入れ替わります。
営利法人は施設数の割合(38.8%)が定員の割合(30.6%)を上回り、逆に社会福祉法人は施設数の割合(35.2%)より定員の割合(39.7%)が大きくなります。営利法人は「数は多いが1園あたりは小規模」、社会福祉法人は「数は営利法人に次ぐが、大きな園で定員を支えている」という対照が見えてきます。定員の総量では、社会福祉法人がなお最大の受け皿です。
運営主体の構成は、地域によって大きく異なります。各施設の所在地から区市町村を取り出し、認可保育所が10施設以上ある49市区町村について、営利法人が運営する施設の割合(営利法人比率)を計算しました。所在地は「千代田区外神田…」のように都道府県名を含まない形式なので、国土数値情報の市区町村境界の市区町村名と突き合わせて集計しています。色が濃いほど営利法人比率が高い地域です。
営利法人比率が高いのは、中央区・文京区・新宿区・港区といった都心部の区に集中しています。反対に、地図の西側に広がる多摩地域の市では色が薄く、営利法人の運営する認可保育所がほとんど、あるいはまったくない自治体もあります。49市区町村の営利法人比率の中央値は29.5%で、都心から郊外へ向かうにつれて下がる傾向が読み取れます。
地図で見た地域差を、具体的な自治体名で確認します。認可保育所が10施設以上ある49市区町村を、営利法人比率の高い順に並べたものです。
最も高いのは中央区の71.4%で、認可保育所の7割超が営利法人によって運営されています。小金井市(63.6%)、文京区(62.5%)、新宿区(61.8%)、港区(59.8%)と続き、都心部の区が上位を占めます。一方、多摩地域の市は軒並み低く、八王子市(5.7%)、町田市(5.3%)、立川市(2.8%)のほか、日野市・国立市・武蔵村山市・羽村市など営利法人比率が0%の自治体もあります。これらの自治体では、認可保育所を社会福祉法人や公立が担っています。
23区の中では世田谷区が20.9%と例外的に低く、社会福祉法人を中心に、公立も市部並みの2割を占める構成です。同じ都心部の区でも、待機児童対策として企業立の園をどれだけ受け入れてきたかによって、運営主体の構成には差が生じています。
東京都の認可保育所を運営主体別に数えると、担い手の構図がいくつか浮かび上がります。
いずれも、園を1つずつ見ているだけでは見えにくい、運営主体の構成とその地域差です。こうした全体像を数える土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。東京都をはじめとする行政のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。本記事で使った認可保育所テーブルには、設置主体・認可定員に加えて施設ごとの緯度経度も含まれます。特定の自治体に絞った園の一覧や、定員規模別の分布、地図上での立地の確認など、同じデータを自分の関心に沿って掘り下げられます。
関連つくば市が公開している4列構成の指定緊急避難場所CSVを、推奨データセット形式へ変換し、緯度経度を補完してQueriaのデータカタログに登録した手順と現状をまとめます。
2026-04-21 · queria
関連NDBオープンデータの特定健診検査値分布を集計し、肥満・血圧・血糖の基準以上割合が年齢・性別・地域でどう変わるかを確認します
2026-07-16 · queria
関連全国20万件の障害福祉サービス事業所を数え、人口当たりの整備量とサービス構成の地域差を定量化します。人口10万人当たりの事業所数は大阪府の303.8から東京都の100.9まで開きます
2026-07-15 · queria
関連全国20万件の障害福祉サービス等事業所を数え、放課後等デイサービスの供給密度を都道府県別に求めます。15歳未満人口1万人あたりの事業所数は、鹿児島県の33.0件から東京都の9.2件まで約3.6倍の開きがあります
2026-07-14 · queria
関連国土地理院の指定緊急避難場所データ11万か所を8つの災害種別で数え、避難先が災害の種類ごとに指定されている構造と地域差を読み解きます。
2026-07-13 · queria
関連市区町村平均では見えない商圏の将来需要を、1kmメッシュ別の将来推計人口で読み解きます。足立区を例に、区内で割れる人口の増減と高齢化を出店判断に生かす見方を示します
2026-07-08 · queria