
指定緊急避難場所11万か所を災害種別で数える
大雨や地震の警報が出たとき、多くの人はまず「一番近い避難場所」を思い浮かべます。しかし指定緊急避難場所は、災害の種類ごとに指定されているのをご存じでしょうか。津波に対応する場所、洪水に対応する場所、地震に対応する場所は、それぞれ別に定められています。最寄りの施設が、いま起きている災害に対応しているとは限りません。
指定緊急避難場所は、災害対策基本法にもとづき市町村長が災害種別ごとに指定する制度です(2013年の同法改正で整備されました)。避難生活を送る「指定避難所」とは区別され、危険が迫ったときに命を守るために緊急的に逃げ込む場所を指します。この記事では、国土地理院が整備・公開する指定緊急避難場所データを使い、全国の避難場所が災害種別ごとにどう指定されているかを数えていきます。
このデータは国土地理院「指定緊急避難場所データ」(gsi.main.emergency_evacuation_site)です。全国で11万5,540か所、1,698市区町村分が収録されています。各施設には、対応する災害の種類が8つの真偽値カラムとして記録されています。
| カラム | 災害種別 |
|---|---|
for_earthquake | 地震 |
for_flood | 洪水 |
for_landslide | 崖崩れ・土石流・地滑り |
for_large_fire | 大規模な火事 |
for_tsunami | 津波 |
for_inland_flooding | 内水氾濫 |
for_storm_surge | 高潮 |
for_volcano | 火山現象 |
まず、それぞれの災害種別に対応する場所が全国に何か所あるかを数えます。
最も多いのは地震で、全体の76.4%にあたる8万8,260か所が対応しています。次いで洪水が62.1%(7万1,771か所)、崖崩れ・土石流・地滑りが58.2%(6万7,297か所)と続きます。一方で最も少ないのは火山現象で、9.3%(1万726か所)にとどまります。地震はどの地域でも起こりうるため広く指定される一方、火山現象は火山周辺に限られるため、対応する場所も少なくなります。棒の割合(%)は全11万5,540か所に対する比率です。
同じ場所が複数の災害に対応していることもあれば、特定の1種類だけに指定されていることもあります。1か所あたりが対応する災害の種類数を数えてみます。
対応する災害が1種類だけの場所が2万343か所(17.6%)あり、全体のおよそ6分の1を占めます。2〜4種類に対応する場所が最も多く、8種類すべてに対応する場所は1,795か所(1.6%)にとどまります。この分布が示すのは、避難場所の多くが万能ではないということです。ある災害では有効でも、別の災害では指定されていない場所が数多くあり、「近いから」という理由だけで避難先を選ぶと、その災害に対応していないことがありえます。
災害の種類によって、指定のされ方には地域差が生じます。海に面するかどうかが直接効いてくる津波について、都道府県ごとに「その県の指定緊急避難場所のうち津波に対応している割合」を地図にします。市区町村名(muni_name)の先頭から都道府県を取り出して集計しています。
沿岸の県ほど津波指定率が高く、沖縄県では80.7%、石川県では80.0%の避難場所が津波に対応しています。一方、海に面していない内陸県では津波指定はほとんど、あるいはまったくありません。長野県・岐阜県・埼玉県・群馬県・栃木県の5県では、津波に対応する指定緊急避難場所は0か所です。津波という災害の性質が、避難場所の指定の地理そのものに反映されていることが読み取れます。
同じ地理的な偏りは、火山現象でも見られます。火山現象に対応する指定緊急避難場所が多い上位10都道府県を並べます。
最も多いのは青森県で1,069か所、次いで長野県(954か所)、福島県(921か所)、北海道(875か所)、熊本県(751か所)と続きます。いずれも活火山を抱える地域で、火山現象という災害への備えが避難場所の指定に表れています。津波が沿岸に集中していたのと同様に、火山現象への対応もまた、その土地の地理に沿って分布していることが分かります。
全国の指定緊急避難場所を災害種別で数えることで、次のことが見えてきました。
避難場所は「近さ」だけでなく「どの災害に対応しているか」で選ぶ必要がある——この構造は、全国の11万か所を災害種別ごとに並べて数えて初めて像を結びます。Queriaは、こうした行政のオープンデータを整えた形で公開しています。緯度・経度や災害種別のフラグを扱いやすいカラムにそろえ、列の意味をメタデータとして添えてあります。本記事で使った指定緊急避難場所テーブルから、自分の住む市区町村ではどの災害に何か所が指定されているかを、そのまま確かめられます。
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