
障害福祉サービス事業所データで、地域の整備差と就労支援の偏りを読む
障害福祉サービスは、障害者総合支援法や児童福祉法にもとづき、市町村がそれぞれの障害福祉計画・障害児福祉計画で整備を進めています。ホームヘルプのような訪問系、生活介護や短期入所といった日中活動系、就労を支える就労継続支援、放課後等デイサービスなどの児童向けサービスまで、種別は多岐にわたります。どのサービスがどの地域にどれだけあるかは、自治体の計画担当者や、サービスへの参入・拡充を検討する事業者にとって、供給の過不足を見極める出発点になります。
こうした整備状況は、個別の事業所や制度改正を追っているだけでは全体像がつかめません。この記事では、全国の障害福祉サービス等事業所データを横断して数え、サービス種別の構成と、人口当たりの整備量の地域差を定量化します。
使うのは、厚生労働省の障害福祉サービス等情報公表システムから抽出した障害福祉サービス等事業所データ(establishment)です。障害者総合支援法・児童福祉法にもとづくサービスを提供する事業所を、所在地・緯度経度・法人番号・サービス種別・定員などとともに収録しています。1つの事業所が複数のサービス種別で指定を受けることがあり、その場合は種別ごとに別レコードになります。本記事で数える「指定件数」は、このサービス種別ごとの指定の数を指します。
全体の規模を数えると、レコード数は209,452件、サービス種別は29、都道府県は47すべてにわたります。まず、指定件数の多いサービス種別の上位を見てみます。
最も多いのは居宅介護(ホームヘルプ)の25,386件、次いで放課後等デイサービスが25,020件、重度訪問介護が21,153件と続きます。就労継続支援B型(20,783件)や児童発達支援(16,993件)も上位に並びます。訪問系のサービスと、放課後等デイサービス・児童発達支援といった児童向けサービスが件数を押し上げていることが読み取れます。
29のサービス種別は、機能に応じて大きく6つの系統に整理できます。ホームヘルプなどの訪問系、生活介護や短期入所の日中活動系、就労継続支援や就労移行支援の就労系、グループホーム(共同生活援助)や施設入所支援の居住系、放課後等デイサービスや児童発達支援の児童系、そして計画相談支援などの相談系です。この6分類で指定件数を集計しました。
最も多いのは訪問系で57,397件、次いで児童系が46,871件です。就労系(30,867件)と相談系(30,384件)がほぼ同水準で続き、日中活動系(24,607件)、居住系(19,326件)の順になります。在宅生活を支える訪問系が土台として最大で、児童向けサービスがそれに迫る規模まで広がっている点が、障害福祉サービスの供給構成の特徴です。
件数の絶対数は人口の多い地域ほど大きくなります。整備の手厚さを地域間で比べるには、人口で割った密度で見る必要があります。ここでは各都道府県の指定件数を、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別人口データ(a_pref_population)の総人口(A1101、2024年)で割り、人口10万人当たりの指定件数を求めました。値が大きいほど濃く塗っています。
人口10万人当たりの指定件数は、大阪府の303.8が最も多く、奈良県(276.5)、鹿児島県(265.0)、沖縄県(258.2)が続きます。西日本や南九州・沖縄が濃く塗られる一方、首都圏は薄く沈みます。東京都は100.9で全都道府県の最下位、神奈川県(120.6)、埼玉県(125.3)、千葉県(133.7)も下位に並びます。
件数の絶対数では東京都が14,309件で最多ですが、人口10万人当たりに直すと最も少なくなります。人口が集中する首都圏では、事業所の数そのものは多くても、人口規模に対する整備量は相対的に手薄になっていると読み取れます。反対に、地方や西日本では人口当たりの整備が厚く、大阪府と東京都のあいだには約3倍の開きがあります。同じ全国制度のサービスでも、人口当たりで見た届き方には地域差が大きいことが分かります。
サービス構成の地域差は、就労支援の中身にも表れます。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金が保障されるA型と、雇用契約を結ばず作業に応じた工賃を支払うB型があります。全国では指定件数がA型4,650件に対しB型20,783件と、B型がA型の約4.5倍を占めます。この比率は地域によって異なります。就労継続支援のうちA型が占める割合を都道府県別に計算し、全47都道府県を高い順に並べました。
A型比率が最も高いのは熊本県の36.8%で、石川県・福井県(ともに29.2%)、福岡県(28.0%)が続きます。西日本や北陸で、雇用契約型のA型が就労継続支援の3割前後を占めています。対照的に、下位には東京都(7.5%)、秋田県(11.4%)、山形県(11.9%)、神奈川県(12.2%)が並びます。東京都では就労継続支援のうちA型は1割に届かず、大半が非雇用のB型です。
同じ就労継続支援でも、雇用契約を前提とするA型の広がりには、熊本県の36.8%から東京都の7.5%まで約5倍の差があります。障害のある人がどのような形で働く場に出会えるかは、住む地域によって傾向が異なることを示しています。
全国の障害福祉サービス事業所をサービス種別・地域別に数えると、供給の構造がいくつか浮かび上がります。
いずれも、個別の事業所や制度改正を追っているだけでは見えにくい、サービス種別ごと・地域ごとの整備量の差です。こうした全体像を数える土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。厚生労働省の情報公表システムをはじめとする行政のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。本記事で使った障害福祉サービス事業所テーブルから、自分の地域のサービス種別ごとの件数を数えたり、人口データと組み合わせて整備量を確かめたりできます。行政データの整備に時間を取られず、地域の障害福祉サービスの過不足を見極める判断そのものに集中できます。
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