
1kmメッシュの将来推計人口で商圏の将来需要を読む(足立区の例)
出店やサービス拠点の配置では、いま人が多いかだけでなく、10年後・20年後もその商圏に需要が残るかを見積もる必要があります。将来推計人口はその判断材料になりますが、市区町村単位の数字は商圏を評価するには粗すぎることがあります。同じ区の中でも、再開発が進む区画と高齢化して縮む区画では、人口の増減も年齢構成もまったく異なるためです。
そこで本記事では、国土数値情報の1kmメッシュ別将来推計人口を使い、東京都足立区を例に、区の中で商圏の将来需要がどう割れるかを読み解きます。市区町村より細かいメッシュの単位で見ると、区平均の数字だけでは見えない濃淡が浮かび上がります。
このデータは国土数値情報「1kmメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」です。総務省「令和2年国勢調査」と国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」に基づき、全国を約1km四方のメッシュに区切って将来の人口を推計しています。
| カラム | 内容 |
|---|---|
population_2025 / population_2035 / population_2050 | 各年の推計人口(メッシュ内) |
elderly_ratio_2025 / elderly_ratio_2050 | 65歳以上人口の割合(%) |
growth_rate_2025_2050 | 2025年から2050年への人口増減率(%) |
geometry | 1kmメッシュの境界ポリゴン |
city_code | メッシュが属する市区町村コード |
足立区(city_code = 13121)を対象に、推計人口が50人以上のメッシュ47個を分析します。無人や極端に人口が少ないメッシュは増減率が不安定になるため除外しています。足立区全体では、人口は2025年の約53.2万人から2050年に約53.6万人へと、25年間で+0.6%とほぼ横ばいの見通しです。
メッシュには地名が付いていないため、各メッシュの中心に最も近い町丁字(国勢調査の小地域境界)の名前を代表地名として補っています。以降のグラフはカーソルを合わせると「◯◯周辺」としておおよその場所が表示されます。1kmメッシュは複数の町丁字にまたがるため、あくまで位置の目安です。
まず、47メッシュそれぞれの2025年から2050年への人口増減率を、増える順に並べて見ます。
区全体では+0.6%とほぼ横ばいですが、その中身は大きく割れています。47メッシュのうち23メッシュで人口が増え、24メッシュで減り、増減率は最も増える区画で+11.6%、最も減る区画で-23.1%まで広がります。中央値は-0.1%で、区の平均が「横ばい」であっても、それは伸びる区画と縮む区画が打ち消し合った結果にすぎません。市区町村単位の一つの数字だけを見て出店の可否を判断すると、区内で二極化している商圏の実態を見落とします。
人口の規模だけでなく、年齢構成も商圏の性格を左右します。次に、2050年時点の高齢化率(65歳以上人口の割合)をメッシュごとに地図で見ます。色が濃いほど高齢化率が高い区画です。
2050年の高齢化率はメッシュによって29.0%から38.9%まで幅があります。足立区ではどのメッシュでも高齢化率が29%以上となり、区全体(人口で加重した平均)でも31.9%に達する見通しです。区内でも色の濃い区画と淡い区画が隣り合っており、シニア向けの需要がどこに厚く集まるかは、区の平均だけでは分かりません。高齢化が進む区画では医療・介護・調剤や、シニア向けの小売・宅配の需要が相対的に大きくなると考えられます。
人口が増えるか減るか(横軸)と、2050年の高齢化率(縦軸)を組み合わせると、メッシュを商圏のタイプごとに分類できます。円の大きさは2025年の人口規模です。
この散布図は、商圏を4つのタイプに分けて読めます。右下(人口が増え、高齢化率が相対的に低い)は、子育て世帯が流入して伸びるファミリー向けの成長商圏です。右上(人口が増え、高齢化率も高い)は、規模を保ちながらシニア比率が高まる区画で、シニア向けサービスの需要が伸びます。左上(人口が減り、高齢化率が高い)は縮小しながら高齢化する区画で、撤退の判断や、残る高齢層に密着した業態への転換が論点になります。人口規模の大きい区画(大きな円)でも増減率は+6.7%から-3.1%まで割れており、母数が大きいからといって将来も安泰とは限りません。同じ足立区でも、メッシュ単位で見れば取るべき打ち手はエリアごとに変わります。
1kmメッシュの将来推計人口は、出店戦略や商圏の将来評価を市区町村より一段細かい解像度で支えます。
将来の商圏需要は、市区町村の平均値では横ばいに見えても、メッシュまで下ろすと伸びる区画と縮む区画がはっきり分かれます。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。国土数値情報の将来推計人口をはじめとする地理データについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った1kmメッシュ別将来推計人口のテーブルから、自社が検討する市区町村に対象を切り替えて同じ分析を再現できます。データの整備に時間を取られず、どの商圏に将来の需要が残るかという判断そのものに集中できます。
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