
産婦人科は48年で6割減り、1施設が受け持つ妊娠の数は東京で増え秋田で半分以下になった
市町村が産後ケアや妊婦健康診査の委託先を探すとき、前提になるのは県内にどれだけの産婦人科が残っているかです。市町村の区域内で委託先が見つからないときは都道府県が広域の調整に入るため、県全体でどこにどれだけあるかを把握しておく必要があります。
では、産婦人科を掲げる施設は実際にどれだけ減ったのでしょうか。ここでは総務省統計局の社会・人口統計体系に収録された都道府県別データを使い、1975年度から2023年度までの施設数と妊娠の届出数を並べます。
産婦人科を掲げる施設は48年で6割減った
このデータは社会・人口統計体系の都道府県別健康・医療データ(i_pref_health)から取得しています。産婦人科の施設数は、病院と診療所で別のカテゴリに分かれています。
| コード | 内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| I530120 | 診療科目別一般病院数(産婦人科) | 医療施設調査 |
| I530216 | 診療科目別一般診療所数(産婦人科) | 医療施設調査 |
| I2201 | 妊娠の届出数 | 地域保健・健康増進事業報告 |
同じテーブルには産科(I530121)と婦人科(I530122)を掲げる一般病院数も別建てで収録されていますが、こちらの収録は1998年度からです。以下で「産婦人科の施設」と呼ぶのは、1975年度からそろっている産婦人科(I530120・I530216)の2つを合わせた数です。診療科目別一般診療所数は3年ごとの医療施設静態調査でしか集計されないため、以下では1975年度から2023年度までの3年刻みの年度を並べています。
全国の産婦人科は、1975年度の9,579施設から2023年度の3,845施設まで、およそ6割減りました。内訳を見ると一般病院が2,357施設から1,061施設へ、一般診療所が7,222施設から2,784施設へと減っています。減り方は診療所のほうが大きく、2023年度でも数の上では診療所が病院の2.6倍を占めます。産婦人科の分布を考えるとき、病院だけを数えると全体の3割ほどしか見ていないことになります。
なお、この数字は施設が掲げている診療科目の集計です。産婦人科を掲げていても分娩を扱っていない施設は含まれてしまうため、「分娩できる施設の数」としては読めません。
1施設が受け持つ妊娠の数は、48年前とほぼ同じ
施設が6割減ったのなら、1施設あたりの負担は大きく増えたはずです。次に、妊娠の届出数を施設数で割った件数を年度ごとに並べます。妊娠の届出は母子保健法にもとづいて妊婦が住んでいる市町村に出すもので、その年度に妊娠が把握された件数にあたります。
1施設あたりの妊娠の届出数は、1975年度が201.6件、2023年度が195.3件です。48年を隔てて、ほぼ同じ水準に戻っています。妊娠の届出数そのものも1,931,345件から750,992件へ、施設と同じくおよそ6割減ったためです。
ただし途中は平坦ではありません。1987年度の166.4件がもっとも少なく、そこから上がり続けて2014年度に251.4件で最多となり、以降は2023年度の195.3件まで22.3%下がっています。1990年代後半から2010年代前半は施設の減り方が妊娠の減り方より速く、2014年度以降は逆に妊娠の減り方が施設の減り方を追い越した、という順序で動いています。
妊娠の届出は妊婦の居住地の市町村に出されるので、この件数は分娩した施設の所在地ではなく住んでいる場所で数えられています。県境をまたいで受診する分は、施設のある県ではなく住んでいる県に計上されます。
県別に見ると、正反対に動いている
全国では48年でほぼ同じ水準に戻りましたが、これは県ごとの動きを平均した姿です。都道府県別に1975年度と2023年度の1施設あたり件数を比べます。
増えたのは15県、減ったのは32県で、幅は東京都の31.2%増から秋田県の56.1%減まで開きます。増加幅が大きいのは東京都(144.6件→189.6件)、埼玉県(261.5件→324.3件)、岡山県(183.1件→226.5件)です。減少幅が大きいのは秋田県(189.3件→83.0件)、新潟県(219.3件→139.7件)、和歌山県(181.6件→120.5件)、岩手県(176.7件→119.1件)と続きます。
起きていたのは、都市を抱える県で1施設が受け持つ件数が増え、人口の減った県では施設が減った以上に妊娠が減って件数が下がる、という反対方向の変化でした。減った県で件数が下がったのは受け入れに余裕ができたからではなく、妊娠そのものが施設の減少より速く減ったためです。
件数が多い県と、範囲が広い県は別
1施設あたりの件数が少ないことは、その県の産婦人科が足りていることを意味しません。施設が少ない県では、残った施設が広い範囲を受け持つことになります。2023年度について、1施設あたりの可住地面積と1施設あたりの妊娠の届出数を並べます。可住地面積は同じ社会・人口統計体系の都道府県別自然環境データ(b_pref_land)の可住地面積(B1103)で、総面積から林野と湖沼を除いた面積です。
2つの軸は別々に動きます。件数の差は埼玉県の324.3件から秋田県の83.0件まで3.9倍ですが、1施設あたりの可住地面積は北海道の166.8km²から東京都の2.8km²まで60倍近く開きます。
件数が多い側には埼玉県(324.3件・19.0km²)、沖縄県(318.6件・28.9km²)、千葉県(254.1件・23.7km²)が並び、1施設あたりの可住地面積はいずれも30km²未満です。範囲が広い側は北海道(176.3件・166.8km²)、山形県(149.6件・89.8km²)、岩手県(119.1件・87.2km²)で、件数はいずれも全国の195.3件を下回ります。両方が重い県は茨城県(242.6件・59.8km²)と栃木県(202.0件・58.9km²)で、件数は上位10県に入りながら1施設あたりの可住地面積も約59km²と広いままです。
なお、この面積は県の可住地を施設数で割った値なので、住民から施設までの実際の距離ではありません。産婦人科は人口が集まる場所に立地するため、多くの住民にとっての距離はこの値が示すよりも短くなります。県内で施設が1つ閉じたときにどれだけの範囲を残りの施設で引き受けることになるか、その規模を見る目安として使えます。
業務でどう使うか
1施設あたりの件数と可住地面積は、以下のように使えます。
- 制約の見分け: 自分の県が件数の多い側か範囲の広い側かを確かめ、前者では委託先の受け入れ枠、後者では移動距離の負担が先に立つものとして、産後ケアの実施方式(宿泊型・通所型・訪問型)の組み合わせを変える
- 課題の優先順位: 1施設あたりの件数の推移を県単位で追い、上がり続けている県では委託先の追加確保を、下がっている県では施設そのものの維持を先に置く
- 監視対象の絞り込み: 施設数が20〜30施設の県では1施設の休止が県全体の受け入れ枠を3〜5%動かすため、件数の水準ではなく施設数の絶対値で監視対象を選ぶ
- 契約実務の設計: 病院と診療所を分けて数え、診療所の比重が大きい県では委託契約の相手が小規模施設に偏ることを見込んで、書式や報告の負担を軽くする
データの出典
本記事は総務省統計局の社会・人口統計体系の都道府県別データを2026年8月17日時点で集計しています。産婦人科の施設数の元データは厚生労働省の医療施設調査、妊娠の届出数は地域保健・健康増進事業報告で、可住地面積は同じ社会・人口統計体系の自然環境データです。数値はすべて年度の値で、収録は1975年度から2023年度までです。
産婦人科がどこにどれだけ残っているかは、施設数だけを見ても、妊娠の件数だけを見てもつかめません。両方を同じ年度・同じ地域単位でそろえて初めて、自分の県が抱えている制約が受け入れ枠なのか距離なのかが分かります。こうした比較の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。社会・人口統計体系のように分野ごとにばらばらに公表される統計について、列名・単位・年度の表記をそろえ、カテゴリコードの意味をメタデータとして添えてあります。本記事で使った健康・医療テーブルと自然環境テーブルから、自分の県の推移をその場で確かめたり、近隣県と並べたりできます。統計を集めて加工する手間をかけずに、委託先の確保や施設配置の判断そのものに時間を使えます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「産婦人科の一般病院数(I530120)と一般診療所数(I530216)を自分の県だけ1975年度から3年ごとに並べて、妊娠の届出数(I2201)で割った1施設あたりの件数も出して。隣接する県とも比べて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 産婦人科の一般病院数(I530120)と一般診療所数(I530216)を自分の県だけ1975年度から3年ごとに並べて、妊娠の届出数(I2201)で割った1施設あたりの件数も出して。隣接する県とも比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/obstetrics-facility-load-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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claude "Queria の公開データで次を分析してください: 産婦人科の一般病院数(I530120)と一般診療所数(I530216)を自分の県だけ1975年度から3年ごとに並べて、妊娠の届出数(I2201)で割った1施設あたりの件数も出して。隣接する県とも比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/obstetrics-facility-load-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
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