
米は6年で9割近く値上がりしても買う量が変わらず、3割近く高くなった魚は2割減りました
食品スーパーの商品部で品揃えと価格改定を決めていると、売上の伸びが単価の上昇によるもので、買い上げ点数はむしろ落ちている、という報告を毎月受け取ることになります。では、値上がりした食品から順に買われなくなっているのでしょうか。
家計が実際に何をどれだけ買ったかは、総務省統計局の家計調査が品目ごとに記録しています。支出金額と購入数量が別々の統計表になっているので、同じ品目コードで突き合わせれば、その食品に1単位あたりいくら払っているかが年ごとに出せます。この記事では、食品116品目について値上がり幅と購入量の変化を並べます。
家計調査の品目データ
家計調査の家計収支編には、品目別の支出金額(expenditure)と品目別の購入数量(quantity)という2つの表があります。品目コード(cat01)が共通なので、両方を結合すると1単位あたりの支払額が求められます。ここでの単価は、世帯が払った金額を買った数量で割った値です。店頭の表示価格ではなく、銘柄や容量の選び方も含めて世帯が実際に払った額になります。
世帯区分(cat02)は二人以上の世帯(03)を使います。年次の値は12か月の合計で、たとえば米の購入量は1世帯の年間キログラム数です。購入数量は品目ごとに記録されていて、単位も品目ごとに違います。食料は12の中分類に分かれますが、そのうち菓子類・調理食品・外食には数量の記録がありません。
費目の単位で数量がそろうのは、食料のうち次の12区分です。加工肉や調味料は品目ごとには数量があるものの、費目の単位では数量が公表されていません。
| コード | 区分 | 数量の単位 |
|---|---|---|
| 010110001 | 米 | 1kg |
| 010120000 | パン | 1g |
| 010130000 | 麺類 | 1g |
| 010140000 | 他の穀類 | 1g |
| 010210000 | 生鮮魚介 | 1g |
| 010220000 | 塩干魚介 | 1g |
| 010310000 | 生鮮肉 | 1g |
| 010410001 | 牛乳 | 1l |
| 010430001 | 卵 | 1g |
| 010510000 | 生鮮野菜 | 1g |
| 010610000 | 生鮮果物 | 1g |
| 010710000 | 油脂 | 1g |
起点は新型コロナ前の2019年です。2020年と2021年は購入量が押し上げられた品目が多く、その2年を起点にすると減り方が実際より大きく出ます。米の購入量も2019年の62.2kgから2020年の64.5kgへ増えています。
値上がり幅の順に並べても、買う量の減り方は揃わない
12費目それぞれについて、1単位あたりの支払額と購入量が2019年から2025年でどう動いたかを並べます。上にいくほど値上がり幅が大きい費目です。
値上がり幅が最も大きいのは米で86.8%、次いで卵が58.6%です。ところが購入量はどちらもほとんど動いておらず、米は1.4%減、卵は2.7%減にとどまります。反対に、購入量が最も大きく減ったのは生鮮魚介の22.5%減で、値上がり幅は28.2%と米の3分の1以下です。この数量は家庭で使うために買った分で、外食や惣菜として口に入った魚は入っていません。油脂も43.2%の値上がりに対して20.5%減、塩干魚介は26.3%の値上がりに対して19.5%減と、値上がり幅の順序と減り方の順序は噛み合っていません。
購入量が増えている費目もあります。他の穀類が5.2%増、麺類が4.1%増、生鮮肉が4.0%増です。生鮮肉の値上がり幅は12.0%で12区分のうち最も小さいものの、麺類は19.6%、他の穀類は18.9%で、22.5%減った生鮮魚介の28.2%との差はどちらも10ポイント未満です。
なお、二人以上の世帯の平均世帯人員はこの6年で2.97人から2.87人へ3.4%減っています。1世帯あたりの購入量はこの分だけ下がる方向に押されるので、数%の減少はここで説明がつきます。生鮮魚介の22.5%減はその6倍以上で、世帯の縮小だけでは届きません。
米は2年で単価が倍近くになり、買う量は増えた
値上がり幅が最も大きかった米について、単価と購入量の推移を2015年から見ます。
1kgあたりの支払額は2023年の360.1円から2024年に451.8円、2025年に697.1円へ動いています。2年で93.6%、ほぼ倍です。一方で年間購入量は2023年の56.7kgから2025年の61.3kgへ8.1%増えました。値段が倍近くになった2年間に、家庭が買った米の量は減るどころか増えています。
さかのぼると、2015年から2023年にかけては1kgあたりの支払額が330.6円から360.1円へ8.9%しか動かない間に、購入量は69.5kgから56.7kgへ18.4%小さくなっています。値段が8.9%しか動かなかった8年間に量が2割近く落ち、値段が倍になった2年間に量が増えた、という並びです。
同じだけ値上がりした30品目で、購入量は33%減から11.6%増まで割れる
費目より細かい品目の単位で、116品目を値上がり幅と購入量の変化で散らします。この116品目は穀類・魚介類・肉類・乳卵類・野菜海藻・果物・油脂調味料の7分類に属し、数量の記録がある飲料と酒類は含みません。品目分類は2025年改定版で、途中で統合された品目は2019年の値と範囲がそろわないことがあります。このうち、支払額の上昇が17%から23%の範囲に収まる30品目を色分けしました。値上がり幅がほぼ同じ品目群です。
色を付けた30品目は、支払額の上昇が17.3%から23.0%までのほぼ横並びです。それでも購入量はさやまめの33.0%減から合いびき肉の11.6%増まで、44.6ポイントの幅に散らばりました。30品目のうち8品目は購入量が増えています。
同じ値上がり幅で結果が真逆になった組を2つ挙げます。こんぶは21.7%高くなって31.2%減り、バターは21.9%高くなって7.7%増えました。さしみ盛合わせは18.0%高くなって26.8%減り、カップ麺は18.1%高くなって7.6%増えています。いずれも値上がり幅の差は0.2ポイント以下です。
この30品目のうち減り方の大きい10品目は、さやまめ33.0%減を先頭に、かれい32.6%減・しじみ31.9%減・こんぶ31.2%減・さしみ盛合わせ26.8%減・メロン25.9%減・他の貝22.3%減・ベーコン19.0%減・牛肉17.4%減・食塩16.7%減と続きます。増えた8品目は、だいこん漬・たい・カップ麺・バター・キウイフルーツ・鶏肉・パスタ・合いびき肉です。分類の中でも向きは割れていて、魚介ではかれいが32.6%減の一方でたいは3.4%増、肉類では牛肉が17.4%減の一方で鶏肉は10.3%増・合いびき肉は11.6%増です。116品目全体で購入量が増えたのは23品目にとどまります。
魚が減っているのは、どの市でも同じ
購入量の減り方が最も大きかった生鮮魚介について、県庁所在市と政令指定都市の52市を並べます。家計調査の地域区分は全国と52市で、都道府県別の値はありません。市ごとの標本は小さく1市の値は年によって振れるので、ここで読めるのは個々の市の順位ではなく、市がどちらの向きに動いているかです。
52市すべてで生鮮魚介の購入量が減っています。幅は和歌山市の7.5%減から仙台市の41.3%減までで、増えた市は1つもありません。全国の22.5%減は、どこか特定の地域が引き下げた結果ではありません。
売場と発注の判断にどう使うか
- 値上がり幅の大きい品目から棚を削るのではなく、品目ごとの購入量の動きを見て面積を決めます。米や卵のように大幅に値上がりしても量が落ちていない品目があり、値上がり幅だけでは減る品目を見分けられません
- 分類ではなく品目の単位で面積を決めます。値上がり幅が同じ帯に収まる品目でも、購入量は3割減から1割増まで割れ、同じ魚介・同じ肉類の中でも向きが分かれます
- 担当エリアの市を選んで全国と比べます。生鮮魚介はどの市でも減っていますが、減り方の大きさには5倍以上の開きがあり、全国の値がそのまま自エリアに当てはまるとは限りません
データの出典
本記事は総務省統計局の家計調査 家計収支編 二人以上の世帯について、品目別支出金額と品目別購入数量の年次データを2026年9月2日時点で集計しています。品目分類は2025年改定版で、年次の値は12か月の合計です。地域区分は全国と、47の県庁所在市(東京都は都区部)に川崎市・相模原市・浜松市・堺市・北九州市を加えた52市です。
家庭が何をどれだけ買ったかは、支出額の統計だけを見ていても分かりません。同じ金額でも、量を保っているのか減らしているのかで、棚に置くべきものが変わります。こうした突き合わせの土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。支出金額と購入数量のように別々に公表される統計表について、品目コードや地域コードを揃え、単位や収録期間をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った品目別支出金額テーブルと品目別購入数量テーブルから、担当する品目の単価と量を年ごとに確かめられます。統計の整備に時間を取られず、売場をどう組み替えるかの判断そのものに集中できます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「e_stat.household.quantity と expenditure を cat01 で結合して、塩干魚介(010220000)の1gあたり支払額と年間購入量を2019年と2025年で県庁所在市別に出して。生鮮魚介(010210000)と減り方を比べて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.household.quantity と expenditure を cat01 で結合して、塩干魚介(010220000)の1gあたり支払額と年間購入量を2019年と2025年で県庁所在市別に出して。生鮮魚介(010210000)と減り方を比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/food-price-rise-volume-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
ターミナル(CLI)で始める
claude "Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.household.quantity と expenditure を cat01 で結合して、塩干魚介(010220000)の1gあたり支払額と年間購入量を2019年と2025年で県庁所在市別に出して。生鮮魚介(010210000)と減り方を比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/food-price-rise-volume-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
おすすめ記事
関連東京都を100とすると、道府県の年間給与は63〜91、物価は92〜99でした。給与の差のうち物価の差で埋まるのは中央値で2割で、物価で割り戻しても業種によって9〜30ポイントの差が残ります
関連ドラッグストアの食品販売額を物価と店舗数で割ると、値上がり分を除いた1店あたりの量は2022年から2025年まで横ばいで、量の伸びの大半は店の数でした。
関連総務省の消費者物価指数を品目別に分解し、食料・エネルギー・米など費目ごとの値上がりの差を読みます。価格改定や仕入れ計画に使えるデータの見方を紹介します。
関連津波浸水想定区域と500m四方の将来推計人口を重ねました。28道府県の区域内に住む人は2050年までに17.6%減り、65歳以上は4.6%増えます。
関連京都市のホテル・飲食店用の新築床面積は2018年の35.2万㎡から2024年は3.3万㎡へ。京都府の2021〜24年の着工は2016〜19年の21%で、47都道府県で最小です。
関連首都圏と京阪神の8都府県を除く39道府県では、2000年から2025年に中学1年生が29.7%減った一方、私立中学校の1年生は2万2千〜2万6千人台で推移し、割合は2.72%から4.07%になった