
気象庁の震源データで日本の地震活動の分布と深さを読む
事業継続計画(BCP)や拠点の分散を検討するとき、まず押さえておきたいのが「その地域でどの程度の地震が、どのくらいの頻度で起きているか」という基礎情報です。ハザードマップは将来の想定を示してくれますが、実際に観測された地震がどこに、どんな深さで分布しているかを俯瞰しておくと、リスクの見立てに厚みが出ます。
この記事では、気象庁が公開する震源カタログを使い、直近5年間(2019〜2023年)の地震活動を場所・深さ・規模の3つの軸で読み解きます。使用するテーブルは jma.main.mart_jma_hypocenters で、地震1回ごとに発生時刻・緯度経度・深さ・マグニチュード・最大震度が記録されています。
記録された地震のほとんどは「感じない地震」
まず全体像を確認します。5年間の記録総数と、そのうち人が揺れを感じた有感地震(最大震度が観測された地震)の件数、その比率です。
約130万件という記録の大半は、観測網が捉えただけで人には感じられない微小な地震です。人が揺れを感じた有感地震は9,902回で、全体の0.76%にすぎません。それでも5年間で約9,900回、1日あたり平均5回以上のペースで、日本のどこかが揺れている計算になります。
有感地震を最大震度別に並べると、揺れの強さの分布が見えてきます。最大震度は、その地震で全国のいずれかの観測点が記録した最も強い震度です。
有感地震のうち最も多いのは震度1で6,497回、震度が上がるほど回数は急激に減ります(縦軸は対数目盛)。震度4以上は5年間で231回、強い揺れの目安となる震度6弱以上は7回でした。地震の回数はマグニチュードや震度が1段階上がるごとにおおむね一桁減る、という性質がこのグラフからも読み取れます。
その震度6弱以上の7回を個別に見てみます。
福島県沖では2021年と2022年に立て続けにマグニチュード7を超える地震が起き、いずれも最大震度6強を記録しています。能登地方では2022年と2023年に強い揺れが繰り返し発生しており、この地域で地震活動が活発化していたことが記録に残っています。強い揺れが特定の時期・地域に固まって現れる様子は、頻度の平均値だけでは見えてこない情報です。
大きな地震はどこで起きているか
次に、マグニチュード5以上の地震の震源を地図に落とします。ここで一つ注意が必要です。気象庁の震源カタログは日本周辺だけでなく、遠く離れた海外の大地震も収録しています。マグニチュード5以上は全期間で1,091件ありますが、そのうち日本周辺(緯度24〜46度・経度122〜149度)に絞ると552件です。ここでは日本周辺に限定し、色で震源の深さを表しています。
震源は太平洋側の沖合に帯状に集中しています。とくに東北から関東の東方沖に点が密集しており、ここが日本の地震活動の中心であることが一目で分かります。マーカーの色に注目すると、太平洋沖の浅い震源(青)から、内陸や日本海側に向かうほど深い震源(赤)へと移り変わる傾向が見えます。これは太平洋プレートが日本列島の下に沈み込み、震源が西へいくほど深くなるという構造を反映しています。
震源の深さの分布
深さは被害の出方に関わる要素です。同じ規模でも、浅い地震は地表の揺れが大きくなりやすく、断層が地表に現れることもあります。日本周辺のマグニチュード3以上の地震を深さ帯別に集計しました。
最も多いのは深さ30〜70kmの帯で11,270回、次いで地表に近い0〜30kmが8,487回です。一方で150km以上の深い地震も3,487回あり、日本周辺の震源は最深で約690kmに達します。地下数百kmで起きる深発地震は、震源から離れた場所が大きく揺れる「異常震域」を生むことがあり、震源に近いかどうかだけでは揺れの大きさを判断しきれない点に注意が必要です。
有感地震の年次推移
最後に、有感地震の回数が年ごとにどう推移しているかを見ます。
有感地震の回数は年間およそ1,500〜2,400回の範囲で推移しており、2021年が2,423回と最も多くなっています。年ごとの増減はありますが、大きな地震が起きた年やその翌年は余震が加わって回数が押し上げられる傾向があります。単年の回数だけを見て「今年は地震が多い・少ない」と判断するのではなく、複数年の水準と合わせて読むことが大切です。
まとめ
気象庁の震源データから、次のような地震活動の全体像が見えてきました。
- 記録された地震の大半は無感で、有感地震は5年間で約9,900回。震度が上がるほど回数は一桁ずつ減る
- 大きな地震は太平洋側の沖合に帯状に集中し、震源は西へいくほど深くなる
- 震源の深さは0〜690kmに広く分布し、深発地震は遠方が揺れることもある
地震活動の姿は、1回の大地震のニュースだけを追っていても見えてきません。震源の位置・深さ・規模を、長い期間と広い範囲で並べて初めて、どこにリスクが偏っているかという全体像がつかめます。Queriaは、気象庁をはじめとする官公庁のオープンデータを整えた形で公開しています。列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて整形する手間をかけずに、本記事で使った震源カタログのテーブルから、自社の拠点周辺で過去にどんな地震が起きていたかを緯度経度で切り出して確かめられます。データの整備に時間を取られず、拠点のリスク評価そのものに集中できます。
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