
駅からの距離で地価はどう変わる ― 地価公示で出店候補地の駅近プレミアムを測る
出店候補地の評価では、「駅からの近さ」が来店客数と賃料の両方を左右します。感覚的には「駅に近いほど高い」と分かっていても、その差が具体的にどの程度なのか、商業地と住宅地で効き方がどう違うのかまで数字で押さえている人は多くありません。
国土交通省が毎年公表する地価公示は、全国の基準地点ごとに最寄駅からの距離と1㎡あたりの価格を記録しており、駅に近いことの価値(駅近プレミアム)を定量化できる数少ないオープンデータです。この記事では、国土交通省の不動産情報ライブラリが提供する地価公示・地価調査の地点データを使い、用途別の地価水準と、駅からの距離による地価の変化を読み解きます。
用途別の地価水準とその推移
このデータは不動産情報ライブラリの「地価公示・地価調査ポイント」(mart_land_prices)から取得しています。1地点・1年あたり1行で、価格(current_price、1㎡あたりの円)、用途、最寄駅からの距離などが収録されています。調査は2種類あります。
| land_price_type | 内容 |
|---|---|
| 0 | 地価公示(国土交通省、毎年1月1日時点) |
| 1 | 地価調査(都道府県、毎年7月1日時点) |
用途(use_category)は住宅地・商業地・工業地・準工業地などに分かれます。ここでは公表時期がそろう地価公示(land_price_type = 0)を使い、住宅地・商業地・工業地の中央値の推移を確認します。
3用途とも2014〜2015年を底に持ち直しています。商業地の中央値は2010年の13万3,000円から2015年に11万3,000円まで下げ、その後上昇に転じて2026年は13万6,000円と2010年を上回りました。住宅地は7万7,100円から6万2,400円まで下げたあと7万4,400円まで戻していますが、なお2010年の水準には届いていません。工業地は2013年以降ゆるやかな上昇が続き、2026年は5万1,150円と系列で最も高くなっています。物流施設の需要を背景に工業地が底堅く伸びている点は、店舗だけでなく拠点立地を考えるうえでも見逃せない動きです。
駅からの距離と地価
ここからが本題です。最寄駅からの距離(station_distance、「1,200m」のような文字列で収録)を200m以下・200〜500m・500m〜1km・1〜2km・2km超の5つの帯に分け、商業地と住宅地それぞれで地価の中央値を比べます。いずれも2026年の地価公示です。
商業地は、はっきりとした距離減衰を示します。駅から200m以内の中央値は38万7,000円で、2km超の5万5,800円の約7倍です。駅に近づくほど価格が跳ね上がる構造は、駅前の集客力がそのまま地価に織り込まれていることを表しています。
一方、住宅地は単純な右肩下がりにはなりません。最も高いのは200〜500m帯(15万5,000円)で、駅至近の0〜200m帯(7万6,700円)はむしろ低くなっています。駅前は商業地として利用されることが多く、住宅地として残る地点は数が限られ、条件も特殊になりがちです。生活利便と住環境のバランスが取れる「駅から徒歩数分」の住宅地が最も評価される、という実務感覚とも合致します。出店業態が商業利用か住居系かによって、駅距離の読み方を変える必要があることが分かります。
都道府県別の商業地地価
最後に、商業地の地価水準が地域でどれだけ違うのかを見ます。2026年の地価公示・商業地について、都道府県ごとの中央値を全47都道府県で比較します(上位10・中間・下位10で色分け)。
商業地の地価は都道府県間で大きく開きます。最も高い東京都は中央値141万円で、最も低い秋田県(3万1,600円)の約45倍です。京都府(47万5,000円)、神奈川県(44万5,000円)、大阪府(35万円)と続き、上位は三大都市圏と政令市を抱える県が占めます。下位には秋田県・山形県・鹿児島県など地方圏の県が並びます。
中央値で比べることで、東京都心の突出した数地点に引きずられず、その県の「標準的な商業地の地価水準」を把握できます。出店時の賃料想定や、複数エリアを横並びで比較する際の出発点として使えます。
出店評価への活用
地価公示の地点データは、出店候補地の評価を次のように後押しします。
- 賃料水準の見積もり: 商業地の中央値と駅距離帯ごとの地価から、候補エリアのコスト感を早い段階でつかむ
- エリアの絞り込み: 都道府県・用途・駅距離でフィルタし、予算に合う商圏を抽出する
- 駅近プレミアムの定量化: 同じ商圏内でも駅距離による地価差を踏まえ、出店区画の優先順位づけに反映する
駅からの距離が地価に与える影響や、用途・地域による水準の違いは、地点ごとのデータを距離帯や用途で束ねて並べて初めて見えてきます。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。国土交通省の地価公示・地価調査について、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った地価公示・地価調査ポイントのテーブルから、自分の対象エリアの用途別の地価水準や駅近プレミアムを確かめられます。地価データの収集と整形に時間を取られず、出店判断そのものに集中できます。
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