
気象庁の日別平年値で季節商材の需要タイミングを地域別に読む
暖房機器や鍋物、ホットドリンク、あるいは冷房や冷たい飲料、熱中症対策グッズ。こうした季節商材は、需要が立ち上がるタイミングを外すと機会損失と過剰在庫の両方が生まれます。全国のチェーンで一律の時期に売り場を切り替えると、寒くなるのが早い地域では品切れ、遅い地域では売れ残りが起きがちです。
需要が動く時期は「その土地がいつ寒くなり、どれだけ暑くなるか」に大きく左右されます。地域ごとの季節の進み方を数字で押さえられれば、投入時期や在庫配分の判断材料になります。この記事では、気象庁のアメダス日別平年値を使って、季節がいつ・どこで動くかを定量化してみます。
分析には e-Stat ではなく、気象庁「アメダス日別平年値」(mart_jma_normals_daily)を使います。統計期間1991〜2020年の30年平均から求めた、観測所ごと・月日ごとの基準値です。日平均・日最高・日最低の気温、日照時間、降水量、積雪の深さが収録され、閏日(2月29日)を含む366日ぶんが並びます。
主なカラムは次のとおりです。
| カラム | 内容 |
|---|---|
station_id | アメダス観測所コード |
month / day | 月・日 |
temp_avg_c | 日平均気温(℃) |
temp_max_c | 日最高気温(℃) |
temp_min_c | 日最低気温(℃) |
precipitation_mm | 降水量(mm) |
観測所コードは観測所マスタ(mart_jma_stations)と結合でき、そこから緯度・経度・標高を取り出せます。ここでは気温の平年値を軸に、地域ごとの季節の動きを見ていきます。まず東京(観測所コード 44132)の年始の平年値を例に、データの形を確認します。
まず、7つの主要都市について、日平均気温の平年値を1年分並べてみます。各観測所の366日ぶんの temp_avg_c をそのままプロットしたものです。
札幌は冬の平年値が氷点下まで下がり、最も寒い日で約 −3.6℃、夏の最も暖かい日で約23.0℃と、年間で26℃以上の振れ幅があります。一方の那覇は最も寒い日でも約16.8℃、夏は約29.2℃で、冬でも他都市の春や秋にあたる暖かさが続きます。
同じ商品でも、需要が立ち上がる時期はこのカーブのどこに「切り替えの気温」が来るかで決まります。カーブが左右にずれているぶんだけ、地域ごとに需要期がずれると考えられます。那覇のように冬が来ない地域では、そもそも防寒商材の市場が小さく、冷涼商材の市場が通年で続きます。
季節商材の切り替え時期を数字にするために、「日平均気温が初めて15℃を下回る日」を各地点で求めてみます。8月以降で最初に15℃を下回った日を、その地点の秋の冷え込みの目安とします。全国の気象台・測候所など主要地点(151地点)について地図に示しました。色が青いほど早く、赤いほど遅く冷え込みが訪れる地点です。
冷え込みの到来は北から南へ、そして低地から高地へと段階的に遅れていきます。最も早いのは奥日光や旭川などの北日本・山地の地点で、9月中旬から下旬にはすでに15℃を割り込みます。関東・近畿の平野部では11月上旬、九州南部や南西諸島では12月に入ってからと、同じ「秋の冷え込み」でも到来には2か月以上の開きがあります。緯度だけでなく標高も効くため、奥日光や軽井沢のような山地の観測所は、緯度が近い平野部より早く冷え込むのが地図から読み取れます。
さらに、地図上に緑で示した10地点(那覇・石垣島・宮古島や奄美の名瀬など)では、平年値で日平均気温が15℃を下回る日がありません。これらの地域は防寒需要が立ち上がる時期そのものが存在せず、季節商戦のカレンダーを別に組む必要があると考えられます。
主要都市について、この「冷え込み到来日」を並べると次のようになります。
| 都市 | 平均気温が15℃を下回る最初の日 |
|---|---|
| 札幌 | 10月3日 |
| 仙台 | 10月20日 |
| 東京 | 11月3日 |
| 名古屋 | 11月4日 |
| 大阪 | 11月11日 |
| 福岡 | 11月13日 |
| 那覇 | (到来しない) |
札幌と福岡では冷え込みの立ち上がりに40日ほどの差があります。全国一律のタイミングで防寒商材を投入すると、この差のぶんだけ北で品切れ・南で売れ残りが生じやすくなります。地点ごとの到来日をカレンダー化すれば、地域ブロック単位で売り場の切り替え時期を前後にずらす判断ができます。
冬の「タイミング」に対して、夏は「規模」が地域差として表れます。日最高気温の平年値が30℃以上になる日数(真夏日に相当する平年の日数)を主要都市で数えると、暑さのボリュームの違いがはっきりします。
那覇は日最高気温の平年値が30℃以上となる日が年101日にのぼり、暑さの需要期が最も長い都市です。鹿児島(78日)、大阪(73日)、名古屋(68日)と続き、東京は46日、新潟は33日です。仙台と札幌では、日最高気温の平年値が30℃に届く日がありません。これは平年値(30年平均をならした基準値)でみた日数であり、実際の暑い日数はこれより多く出ますが、地域ごとの暑さの規模感を比べる目安になります。
冷房・冷飲料・熱中症対策といった夏商材は、需要期の長さが数倍違うことになります。那覇のように真夏日相当が3か月を超える市場と、仙台・札幌のように平年では真夏日が現れない市場とでは、投入する商品構成も在庫の厚みも変えるのが自然です。
日別平年値を地域ごとに読むと、季節商材の計画に次のように使えます。
季節ごとの需要が「いつ・どこで」動くかは、単年の実測気温を追うより、地域を横断して平年値を並べたときに全体像が見えてきます。こうした分析の土台になる気象データを、Queriaは整えた形で公開しています。気象庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、観測所の位置や統計期間をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使ったアメダス日別平年値テーブルと観測所マスタから、自社の商圏に近い地点の季節の動きを確かめられます。気象データの整備に時間を取られず、季節商戦の設計そのものに集中できます。
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