
国勢調査の小地域データで町丁・字別の高齢化率を可視化する(千葉市の例)
訪問介護や配食、調剤薬局、シニア向けの小売など、高齢者を対象とするサービスの立地を考えるとき、市区町村単位の高齢化率はしばしば粗すぎます。同じ市の中でも、一斉入居のニュータウンと新しく開発された住宅地とでは、住民の年齢構成がまったく異なるためです。市の平均値を見ているだけでは、この濃淡は見えてきません。
そこで本記事では、町丁・字まで下ろせる全数調査である令和2年国勢調査の小地域集計を使い、千葉県千葉市を例に、高齢化率が市の中でどう分布しているかを読み解きます。
使うのは e-Stat の令和2年国勢調査 小地域集計(census_small_area_age)です。町丁・字ごとに、男女・年齢5歳階級別の人口が収録されています。年齢は5歳刻みのほか、以下のような区分の合計も用意されています。
| コード | 内容 |
|---|---|
| 0010 | 総数(年齢不詳含む) |
| 0170 | 15歳未満(年少人口) |
| 0180 | 15〜64歳(生産年齢人口) |
| 0190 | 65歳以上(老年人口) |
| 0200 | 75歳以上 |
ここでは高齢化率を「65歳以上人口(0190)÷ 総人口(0010)」として計算します。境界データ(small_area)と町丁・字コードで結合すれば、そのまま地図に描けます。まず千葉市の6区について、区単位の姿を見ておきます。
区単位で見ると、高齢化率は若葉区の30.4%から中央区の21.6%まで、その差は約9ポイントです。若葉区・花見川区がやや高く、都心機能が集まる中央区が最も低い、という緩やかな傾向にとどまります。しかし、この区の平均値は、区の中にある町丁・字の濃淡をならしてしまっています。
同じデータを町丁・字の単位まで下ろし、地図にしたのが次の図です。人口が極端に少ない町丁・字は率が振れやすいため、ここでは総人口100人以上の町丁・字に絞っています。
町丁・字まで下ろすと、高齢化率は最も低いところで4.9%、最も高いところで76.6%と、区平均では見えなかった大きな幅で分布しているのが分かります。色の濃い(高齢化率の高い)地区は市の内陸側や、丘陵に造成された住宅団地に固まり、色の薄い地区は臨海部や近年開発が進んだエリアに現れます。同じ市内でも、住宅地が開発された時期によって年齢構成が層状に分かれていることが読み取れます。
この濃淡は、同じ区の中でも生じます。高齢化率が対照的な町丁・字をいくつか取り出してみます。
美浜区の高浜六丁目は高齢化率54.0%で、65歳以上の人口が住民の半分を超えています。一方、同じ美浜区の幕張西四丁目は4.9%と、高浜六丁目の10分の1以下です。区の平均(26.3%)だけを見ていると、この二つの極が互いに打ち消し合って見えなくなります。高浜のような1970年代に一斉入居した住宅団地は、入居世代がそろって高齢期に入ることで高齢化率が急上昇します。対照的に、あすみが丘東五丁目(緑区、5.0%)のような新しい戸建て開発地区には子育て世帯が集まり、高齢化率は低くとどまります。
一斉高齢化した地区と、若い世帯が集まる地区のちがいは、高齢化率(65歳以上)と年少人口率(15歳未満)を町丁・字ごとに並べるとより明確になります。
点はゆるやかな右下がりの帯を描きます。年少人口率が低い町丁・字ほど高齢化率が高い傾向があり、両者は負の相関を示します。図の左上(年少人口率が低く高齢化率が高い)には一斉入居後に子世代が転出した住宅団地が、右下(年少人口率が高く高齢化率が低い)には子育て世帯が流入した新しい開発地区が位置します。高齢者向けサービスの需要は左上の地区に厚く、右下の地区は将来の需要予備軍と読めます。市の平均値ひとつでは、この分岐は捉えられません。
町丁・字別の年齢構成は、高齢者向けサービスの商圏を設計する場面で使えます。
市区町村単位の高齢化率は、こうした地区ごとの濃淡をならしてしまいます。町丁・字まで下ろして初めて、同じ市の中で需要が層状に分かれていることが見えてきます。Queriaは、こうした分析の土台になる国勢調査のオープンデータを整えた形で公開しています。小地域集計と境界データについて、列名・単位・年齢区分のコードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った小地域 年齢別人口テーブルから、対象を任意の市区町村に切り替えて同じ地図を描けます。データの整備に時間を取られず、拠点配置やサービス設計の判断そのものに集中できます。
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