
政府調達の落札実績データで官公庁市場の参入余地を読む——入札方式と落札の集中
中央省庁は近年、毎年1兆円を超える物品・サービスを民間から調達しています。この市場に新しく参入したい、あるいは受注を広げたい事業者にとって、まず知りたいのは「どれくらいの規模の市場で、どんな売り方(入札方式)が中心で、実際にどんな企業が受注しているのか」という全体像です。発注がいつ・どの規模で出るかは別の記事で扱いましたが、ここでは一歩進めて、受注のしやすさを左右する入札方式と、落札の集中度に焦点を当てます。
使うのは、政府電子調達システム(GEPS)に登録された落札実績を公開する調達ポータルのオープンデータです。1行が1件の落札案件にあたり、落札決定日・落札価格・発注した府省庁・入札方式・落札した事業者(法人番号付き)が収録されています。gBizINFOなど他の調達データにはない「入札方式」と「法人番号で名寄せできる落札企業」がそろっている点が、このデータの特徴です。
まず市場の規模とトレンドを押さえる
最初に、落札額の合計が年度ごとにどう推移しているかを見ます。年度は会計年度(4月〜翌年3月)で、集計途中の2026年度は除き、2017〜2025年度を対象にしています。
落札総額は2017年度の約6,200億円から2025年度の約1兆3,300億円へと、8年で2倍を超える規模に拡大しています。件数も同じ期間に約2万2千件から約3万4千件へと増えており、政府調達は縮小どころか着実に広がっている市場だと分かります。新規参入を検討する立場からは、パイそのものが伸びているという前提を確認できます。
入札方式の構成——どこで勝負するか
次に、この市場が「どんな売り方」で成り立っているかを見ます。入札方式は落札案件ごとに記録されており、ここでは2025年度の案件を4つに整理しました。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 一般競争・最低価格 | 公告して広く募り、最も安い価格を提示した者が落札 |
| 一般競争・総合評価 | 価格と技術提案を点数化し、総合点で落札者を決める |
| 随意契約 | 特定の事業者と直接契約(少額随契・プロポーザル等を含む) |
| その他 | 指名競争入札、最高価格による売却案件など |
一般競争入札は公告して広く参加者を募る方式で、新規事業者でも入り込みやすいのが特徴です。総合評価は価格だけでなく技術力で差がつく方式、随意契約は既存の取引実績がある事業者が優位になりやすい方式です。件数のシェアと金額のシェアを並べると、方式ごとの性格の違いがはっきりします。
件数で見ると、2025年度の落札の74.8%は一般競争・最低価格が占めます。一方で金額で見ると、この方式のシェアは37.8%に下がり、代わりに件数では16.3%にすぎない一般競争・総合評価が金額の59.2%を占めます。つまり、数の多い案件は価格で決まる小〜中規模の調達が中心で、金額の大きい案件は技術提案を競う総合評価に集中している、という二極構造です。随意契約は件数8.3%・金額2.3%と、少額案件が中心で市場全体に占める比重は小さいことも読み取れます。
この構造は参入戦略に直結します。まず件数の多い最低価格の案件で実績を積みたいなら価格競争力が要になり、金額の大きい総合評価の案件を狙うなら技術提案の質で勝負することになります。自社の強みがどちらにあるかで、狙うべき案件の種類が変わります。
落札は誰に集まっているか
最後に、実際に受注しているのがどんな企業かを見ます。落札企業は法人番号で名寄せできるので、同じ企業の複数落札をまとめて集計できます。2025年度の落札総額を企業別に足し上げ、上位15社を並べました。
金額の上位は富士通、日本電気(NEC)、NTTデータといったIT・システム大手が並びます。2025年度に落札した企業は9,529社にのぼりますが、落札総額でみると上位3社だけで18.4%、上位10社で30.2%を占めます。金額の大きい案件はこうした大手に集中している一方で、件数ベースでは9千社を超える企業に広く分散しており、多くの案件は中小の事業者が受注していることになります。
言い換えると、大型のシステム開発は上位数社の寡占に近い一方、金額の小さい案件には広い参入余地が残っています。自社の規模や強みに見合う「勝てる案件の帯」を、金額と方式の両面から見定めることが現実的な参入戦略になります。
業務にどう活かすか
- 参入方式の見極め: 自社の強み(価格か技術か)に合わせて、最低価格の案件を数で取るか、総合評価の大型案件を狙うかを判断する
- 発注元の選定: どの府省庁がどの方式でどれくらい発注しているかを調べ、営業リソースを振り向ける先を絞り込む
- 競合の把握: 狙う分野で落札実績のある企業を法人番号でたどり、競合の受注規模や得意な案件を把握する
このデータの読み方と注意点
本記事はデジタル庁が運営する調達ポータルの落札実績情報オープンデータを、2026年7月24日時点で取得して集計しています。対象は政府電子調達システム(GEPS)に登録された中央省庁の落札案件で、地方自治体や独立行政法人の調達は含まれません。
年度別の推移は会計年度で集計し、まだ年度途中の2026年度を除いて2017〜2025年度を対象にしました。入札方式は記録されている方式名を4つに整理したもので、「随意契約」は方式名が「随意契約」で始まる案件をまとめ、指名競争入札や最高価格による売却案件は「その他」に入れています。企業別の集計では、法人番号が入っていない案件を除いています。法人番号のない個人事業主などが混ざったまま名寄せすると、同じ名前の別事業者を1社として合算してしまうためです。ただし名寄せの単位は商号(trade_name)なので、同じ法人番号でも商号の表記が違えば別の行として数えられます。落札企業数9,529社という値もこの商号単位の集計で、法人番号で数え直すと社数は一致しません。
このデータで分かるのは落札の結果だけで、何社が応札したかは記録されていません。競争の激しさや不落・不調の件数はここからは読めず、参入のしやすさは方式の性格から推測するにとどまります。落札価格は契約時点の金額で、その後の変更契約は反映されません。また案件の中身を示す区分は入っていないため、業種や商材ごとの市場規模を出すには、案件名から分類する別の作業が必要になります。
政府調達は、方式ごとに参入のしやすさが異なり、金額の集中度も案件の規模によって大きく変わります。こうした市場の輪郭は、個別の入札公告を一件ずつ追っているだけでは見えてきません。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。調達ポータルのオープンデータについて、落札価格・入札方式・府省庁名・落札企業の法人番号を扱いやすい列にそろえ、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った落札実績テーブルから、自社が狙う分野の発注府省庁や落札企業の傾向を確かめられます。市場調査のためのデータ整備に時間を取られず、どこで勝負するかという判断そのものに集中できます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「特定の府省庁(ministry_name)の落札実績を入札方式別に、2020年度以降の推移で出して。一般競争の最低価格と総合評価で金額の比率がどう変わるかを比べて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 特定の府省庁(ministry_name)の落札実績を入札方式別に、2020年度以降の推移で出して。一般競争の最低価格と総合評価で金額の比率がどう変わるかを比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/procurement-award-bidding-methods.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
ターミナル(CLI)で始める
claude "Queria の公開データで次を分析してください: 特定の府省庁(ministry_name)の落札実績を入札方式別に、2020年度以降の推移で出して。一般競争の最低価格と総合評価で金額の比率がどう変わるかを比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/procurement-award-bidding-methods.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
おすすめ記事
関連gBizINFOの調達実績データで国の公共調達を分析。発注が集中する時期、中小企業でも狙える契約規模、発注機関の傾向を、官公庁ビジネスへの参入検討に役立つ形で読み解きます。
新着津波浸水想定区域と500m四方の将来推計人口を重ねました。28道府県の区域内に住む人は2050年までに17.6%減り、65歳以上は4.6%増えます。
新着京都市のホテル・飲食店用の新築床面積は2018年の35.2万㎡から2024年は3.3万㎡へ。京都府の2021〜24年の着工は2016〜19年の21%で、47都道府県で最小です。
新着首都圏と京阪神の8都府県を除く39道府県では、2000年から2025年に中学1年生が29.7%減った一方、私立中学校の1年生は2万2千〜2万6千人台で推移し、割合は2.72%から4.07%になった
新着有料老人ホームと特養の定員を、都道府県別に2014年から2024年まで比べました。有料老人ホームのほうが多い県は14から36に増え、75歳以上あたりの定員は県によって3.5倍違います。
新着50cc以下の原付は14年で327万台減りましたが、50cc超125cc以下の原付の増加はその6分の1です。人口あたりで多く残る地域は、50cc超の原付も多い地域でした。