
宿泊客は2019年を超えたのに、京都市でホテルや飲食店の新しい建物は2018年の1割を下回った
ホテルの出店候補地を比べるとき、宿泊客がどれだけ来ているかと並んで気になるのが、これからどれだけ競合の客室が増えるかです。2024年の延べ宿泊者数は全国で2019年を8.0%上回り、京都府も12.9%上回りました。観光客でにぎわう京都では、ホテルも建ち続けていると考えている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、国土交通省の建築着工統計調査から、ホテルや飲食店として建てられ始めた建物の床面積を市区町村ごとに2011年から2024年まで並べ、宿泊者数と客室数の推移に重ねます。
京都市の着工は2018年の35.2万㎡から、2024年は3.3万㎡に
建築着工統計調査は、建築基準法の届出をもとに、床面積10㎡を超える建物の着工を全数で集計しています。Queria の e_stat.building_starts.municipality_use は、その市区町村別・用途別の表を2011年から2024年まで収録したもので、年は1月から12月に着工した分です。用途は建物の主な使い道で18に分かれていて、この記事で使うのはそのうちの1つです。
| コード | 用途 | 主な内容 |
|---|---|---|
56 |
M宿泊業,飲食サービス業用建築物 | ホテル・旅館・飲食店などの建物 |
11 |
計 | 18用途の合計 |
12 |
A居住専用住宅 | 戸建てやマンションなど |
51 |
J卸売業,小売業用建築物 | 店舗・倉庫を含む商業の建物 |
この用途はホテル・旅館と飲食店を1つに数えていて、統計の上では分けられません。以下で「ホテルや飲食店」と書くのはこの区分のことです。
京都市でホテルや飲食店として着工した建物の床面積は、2016年の11.8万㎡から2018年に35.2万㎡まで増えたあと、2021年は3.5万㎡、2024年は3.3万㎡になりました。2024年は2018年の9.4%で、2011年から2015年の2.2万〜6.0万㎡と同じ水準です。棟数も2018年の279棟から、2021年から2024年は31〜63棟に減っています。数棟の大型案件が抜けたのではなく、建てられる数そのものが減りました。
同じ時期に、東京23区は2024年に93.0万㎡と、2011年以降で最も多くなりました。全国の合計に占める東京23区の割合は、2018年の15.2%から2024年の34.5%に上がっています。
京都府の客室は5割増え、着工が減ったあとも2023年度まで増え続けた
着工した建物が開業するまでには時間がかかります。厚生労働省の衛生行政報告例にもとづく、旅館業法の許可を受けたホテル・旅館の客室数(C3802、社会・人口統計体系の c_pref_economy)を京都府について重ねます。客室数は各年度の3月31日現在の値で、都道府県単位なので京都府全体です。ホテル営業と旅館営業の許可を受けた施設の客室で、簡易宿所の客室は入りません。2016年から2019年に京都府で着工したホテル・飲食店の床面積の96%は京都市が占めます。
京都府のホテル・旅館の客室数は、2015年度の33,595室から2023年度の50,263室へ1.50倍になりました。客室は着工が減った2020年度以降も増え続け、2019年度の43,379室から2023年度までにさらに6,884室増えています。2016年から2019年に着工した建物が、遅れて開業していった分と考えられます。一方で2021〜2024年の京都市の着工は年2.6万〜8.6万㎡で、2011〜2015年と同じ水準に戻っています。
宿泊者が増えた府県ほど建っているわけではない
都道府県ごとに、2016〜2019年と2021〜2024年の4年間の着工床面積を比べ、宿泊者の増え方と並べます。宿泊者は観光庁の宿泊旅行統計調査の延べ宿泊者数(G7101、社会・人口統計体系の g_pref_culture)で、暦年の値です。従業者10人以上の施設の宿泊者で、小さな簡易宿所などの宿泊者は入りません。ホテル・飲食店の着工床面積は、全国では2021〜2024年が2016〜2019年の65%です。
京都府は、2021〜2024年の着工床面積が2016〜2019年の20.7%で、47都道府県で最も小さくなりました。一方で延べ宿泊者数は2019年から2024年に12.9%増え、47都道府県で8番目に大きく伸びています。宿泊者が26.5%増えて伸びが2番目の東京都は、着工床面積も99.9%とほぼ同じ規模を保ちました。
着工床面積が2016〜2019年を上回ったのは、和歌山県・長崎県・秋田県など13県で、そのうち11県は宿泊者が2019年より減っているか、増加が5%未満にとどまっています。47都道府県で宿泊者の増減と着工床面積の比の相関係数を取ると-0.23で、宿泊者が伸びた府県ほど新しい建物が多いという関係は見られません。
新しい建物はどの市区町村に集まっているか
2021〜2024年の着工床面積が多い15市区町村を、2016〜2019年と並べます。
2021〜2024年に最も多かったのは大阪市の45.7万㎡ですが、2016〜2019年の128.0万㎡からは36%に縮んでいます。2016〜2019年に大阪市に次ぐ2番目だった京都市は、105.9万㎡から18.1万㎡になり10番目です。福岡市(33%)と名古屋市(28%)も3割前後に減りました。
上位15のうち5つは東京23区の区で、中央区・千代田区・新宿区・港区・品川区が並びます。ただし東京23区の2023年と2024年の伸びは5つの区に集まっていて、2年間の東京23区の着工床面積155.4万㎡のうち79.2%は、1年で10万㎡を超えた5つの区・年(品川区の2023年、港区の2023年、千代田区・新宿区・中央区の2024年)が占めます。
棟数は新宿区の2024年が74棟、品川区の2023年が4棟と幅があり、品川区は4棟だけで25.0万㎡に達しました。長崎市の19.0万㎡も、そのうち18.4万㎡は2022年の1年分(17棟)です。市区町村の単位では、1年分の着工が4年分の合計を決めることがあります。
出店候補地を比べるときの使い方
- 候補の市区町村について、2016〜2019年と2021〜2024年の着工床面積を並べます。京都市のように宿泊者が増えているのに新築が大きく減った地域では、競合として加わる客室は、すでに開業した建物がほとんどになります。逆に東京23区のように新築が続く地域では、開業前の競合が控えていることを前提に計画を立てます
- 4年分の合計だけで判断せず、年ごとの床面積と棟数を見ます。長崎市の2022年や品川区の2023年のように1年だけ跳ねている場合は、その年の着工が合計を決めていて、その地域に建設の波が続いているとは限りません。京都市の2016〜2019年のように棟数も一緒に増えていれば、多くの事業者が参入した時期だと読めます
- 着工床面積にはホテルと飲食店が混ざっているので、都道府県単位の客室数(
C3802)の伸びと合わせて、増えた分がホテルの客室として出てきているかを確かめます
データの出典
本記事は国土交通省の建築着工統計調査の市区町村別・用途別データと、総務省統計局の社会・人口統計体系の都道府県別データ(観光庁の宿泊旅行統計調査、厚生労働省の衛生行政報告例)を、2026-10-07 時点で集計しています。着工床面積と延べ宿泊者数は暦年、客室数は年度末の値です。
宿泊客の戻り方と新しい建物の量は別々の統計に入っていて、市区町村別の着工と都道府県別の宿泊者・客室を並べたときに初めて食い違いが見えます。Queriaは建築着工統計の市区町村別の表と社会・人口統計体系を、列名・単位をそろえ、テーブルや列の意味をメタデータとして添えて公開しています。本記事で使った建築着工統計のテーブルから、候補地の市区町村でホテルや飲食店の新築がいつ、どれだけ続いたかを確かめたり、宿泊者数のテーブルで県の宿泊者の推移と並べたりできます。統計を集めて突き合わせる手間をかけずに、どこに出すかの判断に時間を使えます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「e_stat.building_starts.municipality_use の宿泊業・飲食サービス業用建築物(use_code = '56')について、自分が出店を考えている県の市区町村ごとに、2016〜2019年と2021〜2024年の着工床面積と棟数を並べて出して。年ごとの値も見たい」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.building_starts.municipality_use の宿泊業・飲食サービス業用建築物(use_code = '56')について、自分が出店を考えている県の市区町村ごとに、2016〜2019年と2021〜2024年の着工床面積と棟数を並べて出して。年ごとの値も見たい 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/kyoto-hotel-construction-slump.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
ターミナル(CLI)で始める
claude "Queria の公開データで次を分析してください: e_stat.building_starts.municipality_use の宿泊業・飲食サービス業用建築物(use_code = '56')について、自分が出店を考えている県の市区町村ごとに、2016〜2019年と2021〜2024年の着工床面積と棟数を並べて出して。年ごとの値も見たい 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/kyoto-hotel-construction-slump.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
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