
宿泊者数はコロナ前超えでも、客室稼働率の地域格差は広がっている
2024年は訪日外国人が過去最多を記録し、観光業界にはコロナ禍からの回復感が広がりました。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、同年の延べ宿泊者数は約5億4千万泊に達し、コロナ禍前の2019年(約5億泊)を初めて上回りました。
ところが、客室稼働率(利用された客室数÷提供可能客室数)を都道府県別に見ると、様子が異なります。2019年を上回った県がある一方で、大幅に下回ったままの県もあります。宿泊者数が増えても稼働率が下がる背景には何があるのか。e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データをもとに、2009年から2024年の宿泊市場の動向を追います。
延べ宿泊者数の推移
このデータはe-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別文化・スポーツデータ(pref_cultureテーブル)から取得しています。宿泊関連の主なカテゴリは以下のとおりです。
| コード | 内容 |
|---|---|
| G7101 | 延べ宿泊者数 |
| G710101 | 延べ宿泊者数(県内客) |
| G710102 | 延べ宿泊者数(県外客) |
| G7104 | 定員稼働率 |
| G7105 | 客室稼働率 |
ここではまず延べ宿泊者数(G7101)で全国の推移を確認します。
2009年に約3億泊だった延べ宿泊者数は、インバウンド需要の拡大を追い風に2019年には約5億泊まで増加しました。2020年にはコロナ禍で約2.7億泊と47%急落し、2021年も同水準に低迷しました。2022年から急速に回復し、2023年にはほぼ2019年水準(約5億泊)に戻り、2024年は約5億4千万泊と初めてコロナ禍前を超えました。
2024年の客室稼働率ランキング
次に G7105(客室稼働率)で都道府県別の状況を見ます。これは各都道府県内の宿泊施設が提供した客室のうち、実際に使用された割合(%)です。
2024年のトップは東京都(80.4%)、続いて大阪府(77.9%)、福岡県(75.0%)と都市部が上位を占めています。外国人観光客の集中が稼働率を押し上げていることがうかがえます。一方、最下位は長野県(57.8%)で、東京との差は22.6ポイントに達します。全国平均は69.4%で、都市部と地方の格差は20ポイント以上に達しています。
2019年比の変化率
宿泊者数の総量が回復した一方で、客室稼働率は2019年と比べてどう変化しているでしょうか。2019年から2024年にかけての変化幅を都道府県別に示します。
2019年比でプラスに転じた都道府県は6県のみです。島根県(+6.6ポイント)、富山県(+5.6ポイント)、石川県(+5.4ポイント)が上位に入っています。一方、最も下落したのは沖縄県(-8.9ポイント)で、佐賀県(-7.4ポイント)、鹿児島県(-6.0ポイント)と続きます。
沖縄の稼働率低下には供給側の要因が指摘されています。コロナ禍前後にかけて宿泊施設の新設が相次ぎ、提供可能な客室数がコロナ禍前より大幅に増加しました。観光客数が回復しても、客室の供給増が需要を上回れば稼働率は下がります。
石川県については、2024年1月に能登半島地震が発生したにもかかわらず、2019年比でプラスを維持しています。これは金沢市などの能登半島以外の地域の需要が回復したことを反映していると考えられます。
代表都道府県の時系列
稼働率の明暗が際立つ都道府県について、2009年から2024年の推移を比較します。
東京都は2015〜2019年にかけて80〜85%という高水準を記録していました。コロナ禍で2020年に32.2%まで急落しましたが、2022年以降急速に回復し、2024年は80.4%に達しています。大阪府は2019年に82.0%と高水準でしたが、2024年は77.9%にとどまり、コロナ禍前には届いていません。
沖縄県は2015〜2018年に77〜78%という高い稼働率を誇っていましたが、コロナ禍で2021年に30.7%まで落ち込みました。回復は続いているものの2024年は65.6%で、2015〜2018年の水準を大きく下回っています。島根県は2015〜2017年に70%前後の高水準を記録していましたが、その後62%程度に下がっていました。2024年は68.6%と上昇しており、2019年比では+6.6ポイントと全都道府県で最大の改善です。
まとめ
- 2024年の延べ宿泊者数は約5.4億泊と、2019年比で約8%増加しコロナ禍前を初めて超えた
- 客室稼働率は全国で69.4%と、2019年(72.0%)比で2.6ポイント下回ったまま
- 東京(80.4%)・大阪(77.9%)など都市部・インバウンド集中型の地域が高稼働率を維持
- 島根(+6.6pt)・富山(+5.6pt)・石川(+5.4pt)は2019年比プラスに転じ、地方分散の恩恵を受けている
- 沖縄は宿泊施設の供給増が需要回復を上回り、2019年比-8.9ポイントと最大の落ち込み
宿泊市場の総量回復は達成されましたが、その果実は均等に分配されてはいません。「供給を増やせば客が来る」という前提で整備された宿泊キャパシティが、コロナ禍後の需要構造の変化に直面しています。地域によっては、施設数の拡大よりも稼働率を高めるための需要喚起が、次の課題になりそうです。