
竹富町では2025年に、住民の6人に1人が町を出ていきました。それでも人口は34人増えています
自治体が自分の町の人口を見るとき、まず目に入るのは前年からの増減です。何人減ったか、何人増えたか。けれど住民票の出入りを数えると、その増減の裏で動いている人数は桁が違います。沖縄県竹富町では2025年の1年間に691人が町を出て、713人が他の市区町村から入ってきました。人口4,208人の町での出来事で、1年間の人口の増減は34人増です。
この記事は、住民基本台帳人口移動報告の市区町村別データを住民基本台帳人口と突き合わせて、1年間に町を出た人が住民の何%にあたるかを全国1,719市区町村で比べます。以降この割合を「転出率」と呼びます。移動報告は住民票の異動届にもとづく実績で、推計ではありません。数えているのは市区町村をまたぐ移動だけで、同じ市区町村の中での引っ越しと、国外との出入りは含みません。
転出率は市区町村で13倍違う
全国では、2025年に市区町村をまたいで移動した人が5,190,548人います。人口124,330,690人の4.17%で、およそ24人に1人です。これを市区町村ごとに分けて1%刻みで並べると、次のようになります。棒の高さは、その範囲に入る市区町村の数です。
最も多いのは3%台の640市区町村で、2%台の571がこれに次ぎます。全体の中央値は3.33%で、住民のおよそ30人に1人が1年で町を出ていく計算です。全国の4.17%は移動者の総数を総人口で割った値で、市区町村を1つずつ数えた中央値とは別の量です。一方、9%以上の市区町村が32あります。最も低いのは山形県大蔵村の1.56%、最も高いのは北海道占冠村の20.82%で、両端の開きは13倍です。
住民の出ていく速さは、同じ国の市区町村でこれだけ違います。では、どんな町が右端に並ぶのでしょうか。
上位に並ぶのは大都市の周辺、島と観光地、空港や工場のある町
人口2万人以上に絞って転出率の高い順に20並べます。棒は日本人住民と外国人住民の転出に分けてあります。移動報告は国籍の区分を持っており、日本人移動者(61000、2010年から)と外国人移動者(62000、2020年から)の合計が移動者(60000、2018年から)になります。分母はどちらも町の総人口なので、2つの棒を足すと総数の転出率になります。東京23区は移動報告が「特別区部」をひとつの団体として集計しているため、区から区への移動はこの数字に入りません。冒頭の竹富町は人口4,208人なので、この図には出てきません。
並んでいるのは、大都市とその周辺の市、島と観光地、空港や工場のある町です。大都市そのものは東京都特別区部6.80%、大阪府大阪市6.89%、愛知県名古屋市6.25%で、隣接する埼玉県和光市7.71%と埼玉県蕨市7.51%はこれを上回り、東京都武蔵野市も6.38%と名古屋市より高くなっています。島と観光地では沖縄県石垣市7.12%、沖縄県宮古島市6.32%、広島県江田島市6.29%が入ります。空港や工場のある町は千葉県成田市7.45%、千葉県富里市9.87%、千葉県酒々井町7.45%、群馬県大泉町6.09%です。
棒の色の内訳は町によって正反対です。埼玉県和光市は日本人住民が7.00%に対して外国人住民が0.71%、石川県輪島市は6.19%に対して0.12%で、動いているのはほぼ日本人住民です。逆に千葉県富里市は日本人住民3.64%に対して外国人住民が6.23%、愛知県美浜町は2.98%に対して4.73%で、外国人住民の転出のほうが多くなっています。転出率が同じ7.71%の和光市と美浜町でも、誰が動いているかはこれだけ違います。
外国人住民の転出率の分母も町の総人口なので、外国人住民が何割出ていったかを示す数字ではありません。また移動報告は国外との出入りを含まないため、ここに入っているのは国内で市区町村をまたいだ分だけで、帰国した人は数に入っていません。
出ていく人数と、人口の変わり方は別の話
転出率の高さは、人口が減っていることを意味するわけではありません。横軸に転出率、縦軸に人口の増減率(住民基本台帳人口の1年間の増減数を人口で割った値)を取ると、次のようになります。1点が1市区町村です。この縦軸は出生・死亡と国外との出入りを含んだ実際の増減で、横軸の転出とは数えている範囲が違います。
転出率が7%以上の市区町村は65ありますが、その転出率の中央値が8.96%なのに対し、人口増減率の絶対値の中央値は1.78%です。中央値どうしで比べると、出ていった人数の5分の1ほどしか人口の変化としては表れていません。1,719市区町村全体でも、転出率の中央値3.33%に対して人口増減率の絶対値の中央値は1.46%です。
個別に見ると、この差はもっとはっきりします。埼玉県和光市は住民84,890人のうち6,542人が転出しましたが、1年間の人口の増減は27人増です。東京都特別区部は661,232人が転出して、人口は66,171人増えています。沖縄県竹富町は691人が転出して34人増、北海道倶知安町にいたっては1,755人が転出したうえで277人増えました。
ただし、転出率が高い市区町村がすべて人口を保っているわけではありません。転出率7%以上の65市区町村で人口の減り方が最も大きいのは石川県珠洲市で、転出率8.33%に対して人口は8.39%減りました。2024年1月に地震のあった能登地方の市です。
抜けた分は、国外から埋まっていることがある
では出ていった分はどこから埋まっているのでしょうか。住民基本台帳の集計は転入者を国内からと国外からに分けて持っているので、先ほどと同じ20市区町村について転入の内訳を見ます。分母は同じく町の総人口です。
埼玉県和光市は国内から7.55%、国外から0.75%で、入ってくる人のほとんどは国内からです。一方、千葉県富里市は国内から5.15%、国外から5.92%で、国外からのほうが多くなっています。愛知県美浜町も国内2.60%に対して国外5.30%です。転出率の上位に並びながら人口が大きく減っていない町では、国外からの転入が抜けた分を埋めています。逆に石川県輪島市は国内から1.83%、国外から0.13%で、入ってくる人の割合がこの20市区町村のなかで最も低くなっています。転出率6.31%に対して入ってくるのは合わせて1.96%にとどまり、人口は1年で6.27%減りました。減少幅が転出入の差を上回るのは、人口の増減には出生・死亡や国外へ出ていった分も入るためです。
この動きが最も大きいのは、先ほど1,755人の転出に対して277人増えていた北海道倶知安町です。2025年の1年間に国外から3,411人が転入しており、人口17,120人の19.92%にあたります。国内では1,755人の転出に対して転入が1,377人で差し引き378人の転出超過ですが、人口は増えています。ここで見ているのは転入の側だけで、国外へ出ていった分も出生・死亡も差し引いていないので、この3,411人がそのまま人口の増加になるわけではありません。それでも、移動報告だけを見て人口の増減を判断すると、この町では符号を取り違えます。
8年でどう動いたか
転出率は年によっても動きます。全国と、顔ぶれの違う4つの市町を並べます。
神奈川県箱根町は2019年の11.11%から2021年の8.56%まで下がり、2025年に再び11.11%へ戻っています。北海道倶知安町は2022年の8.02%を底に、2025年は10.25%と8年間で最も高くなりました。どちらも観光地で、落ち込んだ時期は往来が制限されていた期間と重なります。
千葉県富里市は動き方が違い、2018年の5.13%から2025年の9.87%まで1.9倍になりました。2021年と2024年にいったん下がっていますが、8年を通して見ると水準そのものが上がっています。埼玉県和光市は8%前後で推移し、2025年は7.71%です。全国は2018年の4.20%から2025年の4.17%まで4%台のままで、こうした市区町村単位の動きは全国の値には出てきません。
業務での活用
転出率は自分の自治体の数字を1本のクエリで出せます。人口の増減とは別の軸なので、両方を並べると住民の構成の動き方が見えます。
- 転入者向けの案内の規模を見積もる: 自分の市区町村の国内からの転入者数を人口で割り、全国の中央値3.01%と比べます。中央値の2倍を超えるなら、転入手続きの窓口と新住民向けの案内は、人口規模から見積もった量とは別に決める必要があります
- 多言語対応の優先度を決める: 日本人移動者(
61000)と外国人移動者(62000)を分けて転出を出し、さらに住民基本台帳の国外からの転入者数を足して見ます。富里市や倶知安町のように国外からの転入が人口の数%から2割に達する自治体では、窓口と広報の多言語化が量として効きます - 名簿を起点にした施策の見直し: 転出率が8%を超える自治体では、1年で住民の12.5人に1人以上が町を出ます。健診の受診勧奨や地域行事の案内を住民名簿から出すなら、名簿の更新頻度そのものを施策の一部として決めることになります
- 人口ビジョンの前提を確かめる: 移動報告の転入超過数だけで社会増減を見ていると、倶知安町のように国外からの転入で符号が変わる自治体があります。住民基本台帳の増減数と並べて、どちらの数字で議論しているかをそろえます
データの出典
本記事は総務省統計局住民基本台帳人口移動報告の市区町村別 転入者数・転出者数と、総務省住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数の人口・人口動態を 2026-09-20 時点で集計しています。移動報告の値は1月から12月までを積んだ暦年の値です。分母の人口は2025年1月1日現在の値、人口の増減数と転入者数の内訳は2026年1月1日現在の表が持つ直前1年間の値で、移動報告と同じ2025年の1年間にあたります。
住民票の出入りは、人口の増減よりはるかに大きい数として動いています。転出は移動報告、国外からの転入と実際の人口の増減は住民基本台帳の集計にあり、市区町村ごとに突き合わせないと両方を同時に見ることができません。Queriaは総務省のこうしたデータについて、地域コードの桁と列名・単位を揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えて公開しています。表をダウンロードして結合し直す手間をかけずに、本記事で使った市区町村別 人口移動テーブルと住民基本台帳人口テーブルから、自分の自治体の転出入を近隣と並べたり、国籍や国内外の区分で分けて確かめたりできます。統計表の整理に時間を取られず、住民サービスの設計そのものに集中できます。
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たとえば「自分の県の市区町村について、2025年の転出者数を住民基本台帳人口で割った転出率を高い順に出して。日本人移動者と外国人移動者に分けた内訳と、住民基本台帳の国外からの転入者数も付けて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 自分の県の市区町村について、2025年の転出者数を住民基本台帳人口で割った転出率を高い順に出して。日本人移動者と外国人移動者に分けた内訳と、住民基本台帳の国外からの転入者数も付けて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/resident-turnover-rate.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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