
都道府県別のごみ排出量とリサイクル率 — 廃棄物事業の地域需要を統計データで読む
廃棄物処理やリサイクルの事業を地域単位で考えるとき、最初に知りたいのは「その地域でどれだけごみが出ていて、どこまで資源として回っているか」です。1人あたりの排出量が多い地域は処理需要そのものが大きく、リサイクル率が低い地域は分別・資源化サービスの余地が残っています。こうした地域ごとの違いは、営業エリアの優先順位づけや設備投資の判断、自治体への提案を組み立てる土台になります。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データから、1人1日当たりのごみ排出量とリサイクル率を取り上げます。全国の長期推移と都道府県間の差を確認し、両者を組み合わせて地域ごとの課題をどう読むかを見ていきます。
ごみ処理データの所在
ごみに関する指標は、社会・人口統計体系では「H 居住」の生活環境分野に収録されています。住宅の統計と同じテーブル(h_pref_housing)に、上水道・下水道・ごみ処理といった生活インフラの指標がまとめられています。主なごみ関連カテゴリは次のとおりです。
| コード | 内容 | 単位 |
|---|---|---|
| H5609 | ごみ総排出量(総量) | t |
| H5610 | 1人1日当たりの排出量 | g/人日 |
| H5614 | ごみのリサイクル率 | % |
| H5615 | ごみ最終処分量 | t |
| H5617 | 最終処分場残余容量 | m³ |
総排出量や最終処分量は人口規模に比例して大きくなるため、地域間の比較には人口で割った指標が向いています。ここでは、1人あたりの量を表す「1人1日当たりの排出量(H5610)」と、資源化の進み具合を表す「ごみのリサイクル率(H5614)」の2つを使います。
まず、全国の1人1日当たり排出量の推移を確認します。
全国の1人1日当たり排出量は、2005年度の1,131gから2023年度には851gまで、おおむね一貫して減少しています。約25%の縮小で、分別の浸透や食品ロス削減、レジ袋・容器包装の見直しといった発生抑制の取り組みが積み重なってきたことがうかがえます。市場全体としては、ごみの「量」を処理する事業から、減量・資源化を支える事業へと比重が移ってきていると考えられます。
ただし、これはあくまで全国の平均値です。事業を地域で展開するうえで重要なのは、平均からどれだけ離れた地域があるかという点です。
都道府県別の1人1日当たり排出量(2023年度)
次に、2023年度の1人1日当たり排出量を47都道府県で比較します。値が大きいほど、住民1人あたりのごみ処理需要が大きい地域です。
最も多い富山県(989g)と最も少ない京都府(749g)では約1.3倍の差があります。上位には富山県・福島県・青森県・鳥取県・秋田県など、地方圏の県が並びます。一方、下位には京都府・滋賀県・神奈川県といった都市圏の府県が入っています。
1人あたり排出量には、事業系ごみの構成や観光客の流入、ごみ処理の有料化の有無などが影響します。地方圏で値が大きくなる背景には、家庭ごみに事業系ごみが混ざりやすい収集体制や、有料化の進み具合の違いがあると考えられます。排出量が多い地域は、それだけ住民1人あたりの処理量が大きく、減量・分別の支援サービスや収集効率化の余地が大きい市場と読めます。
都道府県別のリサイクル率(2023年度)
排出量の「多い・少ない」だけでは、ごみが資源として活かされているかは分かりません。同じ2023年度で、ごみのリサイクル率を比較します。値が大きいほど、排出されたごみのうち資源として再生利用された割合が高い地域です。
全国平均が19.5%のところ、最も高い岡山県(29.0%)と最も低い和歌山県(11.9%)では約2.4倍の開きがあります。排出量の順位とは顔ぶれが大きく異なる点が特徴です。リサイクル率の上位には岡山県・鳥取県のほか、東京都・埼玉県・神奈川県といった都市圏が入り、下位には和歌山県・青森県・大阪府・福井県・石川県が並びます。
リサイクル率は、住民の分別協力に加えて、自治体の資源回収体制や中間処理施設の整備状況に左右されます。率が低い地域は、分別区分の見直しや資源回収ルートの整備によって改善の余地が大きく、資源化を支える設備やサービスの提案先になり得ます。
排出量とリサイクル率を組み合わせて読む
排出量とリサイクル率は別々の指標で、両者の相関は弱い(相関係数 約-0.12)ことが分かっています。つまり「排出量が多い地域ほどリサイクルが進んでいない」とは一概には言えず、組み合わせることで地域の状況をより細かく分類できます。横軸に1人1日当たり排出量、縦軸にリサイクル率をとり、全国平均(排出量851g、リサイクル率19.5%)を基準線として4つの象限に分けます。
右下の「排出量が多く、リサイクル率が低い」象限には、青森県(排出量967g・リサイクル率12.6%)、福島県(968g・13.2%)、秋田県(957g・13.6%)、和歌山県(890g・11.9%)などが位置します。これらは住民1人あたりの処理量が大きいうえに資源化が進んでおらず、減量と分別の両面で改善余地が大きい地域です。廃棄物の発生抑制から資源化までを一貫して支えるサービスの需要が見込める市場と読めます。
一方、左上の「排出量が少なく、リサイクル率が高い」象限には、東京都・埼玉県・神奈川県など都市圏の都県が入ります。これらの地域はすでに減量と資源化が一定程度進んでおり、提案の方向性は新規導入よりも、効率化や高度な資源化(プラスチック・食品廃棄物の再資源化など)に移ると考えられます。
特徴的なのは鳥取県(排出量963g・リサイクル率28.2%)で、排出量は多いものの資源化が全国トップクラスに進んでいます。排出量の多さが必ずしも資源化の遅れを意味しないことを示す例で、地域ごとに事情が異なることが読み取れます。
データの活用方法
この2つの指標は、以下のように活用できます。
- 営業エリアの優先順位づけ: 排出量が多くリサイクル率が低い地域を、減量・資源化サービスの需要が大きい市場として絞り込む
- 提案内容の出し分け: 都市圏には効率化・高度資源化を、地方圏には分別体制や資源回収ルートの整備を、と地域の状況に合わせて提案を変える
- 自治体への企画提案: 全国平均や近隣県との比較を示し、改善目標の根拠として使う
- 設備投資の検討: 地域ごとの処理需要と資源化の進み具合から、中間処理・資源化施設の立地を検討する
ごみ処理の状況は、全国の推移を見て初めて市場全体がどちらに向かっているかが分かり、排出量とリサイクル率を並べて初めて地域ごとの課題が見えてきます。こうした全体像は、個別の自治体の公表値を一つずつ追っているだけではつかめません。こうした比較の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。e-Statをはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の居住・生活環境データから、対象エリアの排出量とリサイクル率を確かめ、自社のサービスが刺さる地域を見極められます。データ整備に時間を取られず、地域戦略の立案そのものに集中できます。
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