
医療費の西高東低は高齢化だけでは説明できない — 75歳以上どうしで比べても1.54倍の差
2022年度の一人当たり医療費は、最も高い高知県が47.9万円、最も低い埼玉県が33.2万円で、1.44倍の開きがあります。上位7県はすべて九州・四国・中国の県で、下位には首都圏の県が並びます。
高齢者が多い県ほど医療費がかかるのは確かです。47都道府県で高齢化率と一人当たり医療費の相関をとると0.57になります。では、年齢をそろえて比べたら、この差は消えるのでしょうか。年齢をそろえた2つの系列、75歳以上の1人当たり医療費と、協会けんぽが年齢構成の違いを除いて出している地域差指数で確かめます。
75歳以上どうしで比べると、高齢化率との関係は消える
一人当たり医療費は、国民医療費を人口で割った値で、年齢構成の違いを調整していません。これに対して75歳以上の1人当たり医療費は、後期高齢者医療事業状況報告による後期高齢者医療制度の加入者1人当たりの医療費で、比べる相手がはじめから75歳以上にそろっています。加入者には、65〜74歳で一定の障害があると認定された人も含まれます。
次の図は、両方の医療費を全国を100とした値にして、高齢化率に対して並べたものです。
全年齢の医療費(橙)は高齢化率が高い県ほど上に来ますが、75歳以上の医療費(青)は高齢化率と関係なく散らばっています。
いちばんはっきり入れ替わるのが秋田県と沖縄県です。秋田県は高齢化率が38.6%で全国最高、全年齢の医療費は全国の107.2%ですが、75歳以上に限ると85.0%で全国を下回ります。沖縄県は高齢化率23.4%で東京都に次いで低く、全年齢では93.0%と全国を下回りますが、75歳以上では108.9%です。全年齢の順位は、1人当たりにかかる医療費の差よりも、医療費のかかる年齢の人がどれだけ住んでいるかで決まっている部分があります。
それでも差そのものは縮みません。75歳以上の1人当たり医療費は、最も高い福岡県が117.6万円、最も低い新潟県が76.4万円で、1.54倍です。全年齢の1.44倍より広がります。
75歳以上の中でも、85歳以上が多い県と75〜84歳が多い県があり、この系列はそこまではそろえていません。
年齢調整した協会けんぽの指数でも同じ県が上に来る
75歳以上とは別の人たちでも同じ傾向が出るかを、協会けんぽの地域差指数で見ます。協会けんぽは主に中小企業の従業員とその家族が加入する健康保険で、加入者は現役世代とその子どもが中心です。地域差指数は、都道府県ごとの年齢階級別の1人当たり医療費を全国の年齢構成で重み付けし直した値で、全国を1とします。協会けんぽの都道府県は、加入者の住所ではなく勤め先の事業所がある都道府県で分かれます。2022年度は佐賀県の1.116が最も高く、新潟県の0.907が最も低くなっています。
横軸に75歳以上の医療費、縦軸に協会けんぽの地域差指数をとると、右上と左下に都道府県が集まります。相関は0.76です。
赤は次の節で数える「両方で毎年全国を上回る」14道府県、青は「両方で毎年下回る」15県です。
14道府県は、年齢をそろえた2つの系列で毎年全国を上回る
1年だけなら偶然もありえるので、年をまたいで確かめます。75歳以上の1人当たり医療費は、後期高齢者医療制度で対象が75歳以上にそろう2008年度以降を使います。協会けんぽの地域差指数とあわせて、使った期間は次のとおりです。この期間で、どちらの系列でも毎年全国を上回った都道府県と、毎年下回った都道府県を数えます。
毎年上回った14道府県のうち、北海道を除く13府県はすべて近畿・中国・四国・九州にあります。毎年下回った15県には、九州・四国・中国の県が1つも入っていません。毎年上回る14道府県と毎年下回る15県は、加入者が重ならない2つの制度のどちらでも同じ側に並びます。
宮崎県は、協会けんぽの指数が15年のうち1年だけ全国と同じ値で、残りの年は両方の系列で全国を下回っているため、どちらでもないに入っています。2つの系列で向きが逆になる県もあり、秋田県は75歳以上で16年とも全国を下回る一方、協会けんぽでは15年とも上回ります。沖縄県はその逆です。
47都道府県の値は次の表のとおりです。「全国超えの年数」は、それぞれの期間のうち全国を上回った年の数です。
まとめ
- 2022年度の一人当たり医療費は高知県が埼玉県の1.44倍で、高齢化率との相関は0.57です
- 75歳以上の1人当たり医療費に絞ると、高齢化率との相関は-0.05で関係が消えますが、差は福岡県と新潟県で1.54倍に広がります
- 年齢構成の違いを除いた協会けんぽの地域差指数も、75歳以上の医療費と0.76の相関で同じ県を上に置きます
- 北海道と近畿・中国・四国・九州の13府県は、75歳以上(2008〜2023年度)でも協会けんぽ(2009〜2023年度)でも毎年全国を上回っています。関東・中部を中心とする15県は毎年下回っています
全年齢の一人当たり医療費で上位9道県(高知県から北海道まで、熊本県と北海道は同額)は、すべて「両方で毎年上回る」14道府県に入っています。高齢者が多いことは医療費を押し上げますが、これらの県は、75歳以上の加入者どうしでも、年齢調整した協会けんぽの指数でも全国を上回り、その状態が15年以上続いています。医療費の地域差を県どうしで比べるときは、高齢化率の差だけでは説明できない部分があることを前提にしてください。
データの出典
本記事は e-Stat 社会・人口統計体系の都道府県別データを2026年9月28日時点で集計しています。元データは厚生労働省の国民医療費(2022年度まで)と後期高齢者医療事業状況報告(2023年度まで)、全国健康保険協会の事業年報(2023年度まで)で、高齢化率は同じ体系の総人口と65歳以上人口から計算しています。
Queriaは、e-Statをはじめとする官公庁のオープンデータを、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えた形で公開しています。本記事で使った都道府県別の福祉統計テーブルから、自県の医療費を年齢をそろえた系列で確かめられます。
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