
職場のけがは10年で3割増えた — 47都道府県のうち43で増え、1人あたりの重さは下がった
働いた時間あたりでけがをする人の数は、長いあいだ下がり続けてきました。厚生労働省の労働災害動向調査が測っている度数率は、1975年の6.75から2013年の1.58まで4分の1以下になっています。ところがそこで下げ止まり、2023年は2.14。2011〜2013年の平均と2021〜2023年の平均で比べると、10年で31%上がりました。
上がっているのは頻度だけです。同じ調査が測っている災害の重さは同じ10年で13%下がり、強度率から計算した死傷者1人あたりの労働損失日数は64.7日から42.9日になりました。増えたのは、休んだ日数の短い災害のほうです。
2つの指標が測っているもの
労働安全衛生法に基づいて実施される労働災害動向調査は、発生の頻度と災害の重さを別々の指標で公表しています。
| コード | 指標名 | 計算方法 |
|---|---|---|
| F8101 | 労働災害度数率 | 死傷者数 ÷ 延べ実労働時間数 × 100万 |
| F8102 | 労働災害強度率 | 労働損失日数 ÷ 延べ実労働時間数 × 1000 |
分母はどちらも延べ実労働時間数なので、2つの比をとると分母が消え、死傷者1人あたりの労働損失日数(強度率 ÷ 度数率 × 1000)が出ます。労働損失日数は項目定義 F 労働の基準で決まり、死亡と永久全労働不能が7,500日、身体障害等級に応じた永久一部労働不能が50〜5,500日、休業だけで復帰した場合は暦日の休業日数に300/365を掛けた日数です。死亡が1件入るだけで7,500日が乗るため、強度率は重い災害の有無に強く反応します。
発生頻度は2013年で下げ止まった
1975年から2023年までの49年分がそろっていて、最低は2013年の1.58です。2023年の2.14はその1.35倍にあたります。
公表されているのは、常用労働者30人以上の事業所から無作為に抽出した標本のうち、事業所規模100人以上を集計した値です。小規模な事業所や一人親方は入っていないので、日本で起きた労働災害の全数ではありません。
調査対象の産業も途中で広がっています。項目定義の注意事項によれば、2008年に医療・福祉、2011年に農業、2018年に漁業が加わり、厚生労働省も追加の前後で時系列を比べることに注意を促しています。ただし2018年を最後に対象産業は変わっておらず、その後も1.83から2.14へ上がっています。
重さの指標は下がっている
度数率と強度率を、2011〜2013年の平均を100として並べます。
度数率は2018年に114.6へ上がってから110を下回らず、2023年は134です。強度率は2018年から2023年までずっと87で、100に戻っていません。3年平均でみると度数率が31%増、強度率が13%減です。
強度率を度数率で割ると、死傷者1人あたりの労働損失日数が出ます。2011〜2013年の平均が64.7日、2021〜2023年の平均が42.9日で、34%減りました。1人あたりが重くなったわけではありません。
この日数は概算です。強度率が小数第2位までの公表なので、0.01の違いで指数は約10ポイント、1人あたりの日数は約5日動きます。2015年だけ指数が68に落ちるのは強度率が0.07だったためで、2010年以降の他の年は0.09から0.11の範囲にあります。
上がったのは特定の県ではない
全国の数字が動いた理由が一部の県にあるのかを確かめるため、47都道府県それぞれについて2011〜2013年平均と2021〜2023年平均を比べます。
上がったのは47都道府県のうち43で、変化率の中央値は34.7%です。下がったのは鳥取県(-26.2%)・徳島県(-23.2%)・和歌山県(-13.3%)・山口県(-3.6%)の4県だけでした。最も上がったのは長崎県で112.9%です。
同じ10年を強度率で見ると、上がったのが23県、下がったのが24県、中央値は-2.7%です。度数率のように一方向へそろってはいません。頻度はほとんどの県で上がり、重さは県ごとにばらついたまま動いていない、という形になっています。
この調査は標本調査で、抽出時の目標精度は産業別・事業所規模別に度数率の標準誤差率が9〜10%以内となるよう設定されています。都道府県別の精度は設定されていないので、県ごとの1つの値を細かく読むことはできません。43県が同じ向きに動いたという数え方のほうが、抽出のばらつきに左右されにくくなります。
また2011年から2016年までの調査は、東日本大震災の被災地域や避難指示区域を含む市区町村の事業所を対象から外しています。岩手県・宮城県・福島県の起点は、他県と同じ範囲の事業所を集計した値ではありません。
水準そのものには3.7倍の開きがある
上がり方ではなく水準を並べると、2021〜2023年平均で最も高い沖縄県(3.98)と最も低い山口県(1.07)に3.7倍の差があります。
この顔ぶれは固定ではありません。上位10県のうち長崎県・鹿児島県・香川県・山形県の4県は、10年前には全国平均の1.60を下回っていました。逆に下位10県のうち7県も10年前より上がっていて、水準が低いことと上昇を免れたことは別です。
度数率は、その県で働いた時間の重みで産業ごとの発生率を平均した値です。産業構成が違えば値も違うので、県の順位を安全管理の優劣として読むことはできません。自社と産業構成の近い県を選んで比べる使い方になります。
この数字の使い方
- 自社の度数率・強度率を、全国の水準(2021〜2023年平均で度数率2.10、強度率0.09)と並べて位置を確かめる
- 自社の数値が横ばいでも、全国が10年で31%上がっている中での横ばいなのかを見る
- 度数率と強度率のどちらが動いたかで対策の向きを分ける。頻度だけが上がっているなら、重篤化の防止より発生そのものを減らす施策が先に来る
データの出典
本記事は e-Stat 社会・人口統計体系(総務省統計局)の e_stat.ssds.f_pref_labor を 2026-09-10 時点で集計しています。使った分類コードは労働災害度数率が F8101、労働災害強度率が F8102 で、どちらも単位を持たない率、収録は1975年から2023年までの49年分、全国と47都道府県の48区分です。元データは厚生労働省の労働災害動向調査で、常用労働者30人以上の事業所と、製造業のうち特定の産業に属する10〜29人の事業所から、産業・事業所規模別に層化して無作為抽出した約32,000事業所を対象とする標本調査です。公表値は事業所規模100人以上の集計で、集計期間は1月から12月の1年間です。指標の定義と対象産業の変更は項目定義 F 労働によります。都道府県別の集計では、同じテーブルに混在する「全国」の行を除いています。
けがをする人が増えているのか、1人あたりが重くなっているのかは、2つの指標を同じ期間・同じ地域で並べて初めて分かれます。Queriaは、こうした官公庁のオープンデータを整えた形で公開しています。列名・単位・文字コードを揃え、分類コードや項目の意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の労働テーブルから、自社のある県や同業種が集まる県の水準を確かめられます。データ整備に時間を取られず、安全衛生の目標設定そのものに集中できます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「度数率(F8101)と強度率(F8102)を都道府県別に2011年から2023年まで出して、両方が同時に下がった年が多い県を数えて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 度数率(F8101)と強度率(F8102)を都道府県別に2011年から2023年まで出して、両方が同時に下がった年が多い県を数えて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/labor-accident-regional-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
ターミナル(CLI)で始める
claude "Queria の公開データで次を分析してください: 度数率(F8101)と強度率(F8102)を都道府県別に2011年から2023年まで出して、両方が同時に下がった年が多い県を数えて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/labor-accident-regional-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
おすすめ記事
関連1975〜2024年度の都道府県別交通事故死者数データを分析。1992年度のピーク11,452人から2024年度の2,663人へ、約77%減少した全国トレンドと、人口10万人あたり死者数で約4.6倍の格差が残る都道府県間の構造差を可視化します。
関連有料老人ホームと特養の定員を、都道府県別に2014年から2024年まで比べました。有料老人ホームのほうが多い県は14から36に増え、75歳以上あたりの定員は県によって3.5倍違います。
関連e-Stat「社会・人口統計体系」の1人1日当たりごみ排出量とリサイクル率を都道府県別に分析。廃棄物処理・リサイクル事業の地域需要や提案先の見極めに使えるデータの読み方を解説します。
関連都道府県別の有効求人倍率を2015年度から追い、1倍前後の県が県外就職の多い県とそうでない県の2種類に分かれることを示します
関連1975年度からの都道府県別の火災データを整理し、人口あたり出火率と死亡率の地域差を火災保険のリスク評価向けに分析しました
関連精神障害者保健福祉手帳の交付件数は1997年度の10.7万件から2023年度の152万件へ14.2倍に。人口あたりの件数で上位10と下位10の都道府県の差は2.5倍から1.48倍に縮み、2005年度に少なかった10県はすべて3.75倍以上に伸びました