
都道府県別の労働災害度数率 — 職場の安全水準を統計データで比較する
自社の労働災害の発生率は高いのか、低いのか。それを判断するには比較できる基準が必要です。全国平均や、自社と産業構成の近い地域の水準が分かれば、自社の安全管理がどのあたりに位置するのかを客観的に捉えられます。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別労働データから労働災害度数率と強度率を取り上げ、全国の推移と都道府県間の差を分析します。職場の安全水準を比較するためのベンチマークとして、これらの指標をどう読むかを見ていきます。
労働安全衛生法に基づいて収集される労働災害統計では、発生頻度と重傷度を表す2つの主要指標が使われます。
| コード | 指標名 | 計算方法 |
|---|---|---|
| F8101 | 労働災害度数率 | 死傷者数 ÷ 延べ実労働時間数 × 100万 |
| F8102 | 労働災害強度率 | 労働損失日数 ÷ 延べ実労働時間数 × 1000 |
度数率は「100万時間あたりの死傷者数」で、頻度が高いほど値が大きくなります。強度率は「1000時間あたりの労働損失日数」で、重傷事故が多いほど値が大きくなります。これらを組み合わせることで、件数は多いが軽傷が中心なのか、件数は少ないが重篤な災害が起きているのかを区別できます。
まず、全国全体の度数率の長期推移を確認します。このデータは e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別労働データ(f_pref_labor)から取得しています。
1975年の度数率は6.75でしたが、安全衛生対策の強化や機械化の進展により長期的に低下し、2010年代前半には1.6前後まで改善されました。しかし2018年以降は再び上昇に転じており、2023年には2.14となっています。高齢労働者の増加や物流・介護など新たな労働集約型産業の拡大が背景にあると考えられます。
全国の3年平均が約2.10の中で、都道府県間にはどの程度の差があるのでしょうか。単年の値は突発的な事故1件で大きく動くことがあるため、2021〜2023年の3年平均で47都道府県を比較します。
最も高い沖縄県(3.98)と最も低い山口県(1.07)では約3.7倍の差があります。上位には北海道・沖縄県・九州など一次産業・建設業・観光業の比重が高い地域が並ぶ傾向があります。一方、下位には製造業が盛んな愛知県・三重県・山口県など、製造拠点として歴史のある地域が入っています。製造業大手の安全管理水準が地域の統計を押し下げていることを示唆します。
なお、度数率の高低はその地域の安全意識だけでなく、産業構成(農林漁業・建設業の比率)や労働者の年齢分布にも大きく影響されます。単純な優劣比較ではなく、自社の業種・業態に近い産業構成の地域と比較することが有用です。
強度率は1件あたりの災害の重篤度を示します。度数率が高くても軽傷が多い場合と、件数は少ないが重傷事故が多い場合では、安全対策の優先事項が異なります。強度率も3年平均で比較することで、単年の重大事故による突出を平滑化します。
3年平均でも香川県(0.45)が上位に位置しており、2位以下(鹿児島県0.23)と比べて約2倍の水準です。強度率は重大事故が1件発生しただけで急上昇する性質があるため、3年平均でもこの差が残る場合は産業構造や特定業種の集積が背景にある可能性があります。
上位グループ全体を見ると、度数率ランキングと上位の顔ぶれが一部重なる一方で、強度率が特に高い地域は重篤事故のリスクが高い産業(林業・採石業・海運など)が集積している傾向があります。重篤な事故が発生している地域では、転落・崩落・挟まれなど致命的な災害類型への対策が特に重要です。
この分析は以下のように活用できます。
ここで注意したいのは、都道府県別の度数率・強度率はその地域の産業構成(農林漁業・建設業の比率など)や労働者の年齢分布を強く反映している点です。地域単独で「安全な地域」「危険な地域」と解釈するのではなく、自社の業種・規模に近い条件と照らし合わせて読むことが有用です。
労働災害の発生率は、全国の長期推移を見て初めてどちらに向かっているかが分かり、都道府県を並べて初めて地域差や産業構成の影響が見えてきます。こうした全体像は、自社の数値を単独で眺めているだけではつかめません。こうした比較の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。e-Statをはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の労働災害統計データから、自社のある地域や同業種が集積する地域の水準を確かめ、自社の安全水準と照らし合わせられます。データ整備に時間を取られず、安全衛生の目標設定や施策の評価そのものに集中できます。
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