
鉄道駅の分布データで都道府県別の公共交通アクセスを比較する
出店候補地を評価するとき、その市場が鉄道を前提に動いているのか、車を前提に動いているのかは、業態や立地の選び方を左右します。鉄道網が密な地域では駅前や駅ナカへの出店が来店動線の中心になり、鉄道が薄い地域ではロードサイドや駐車場の確保が前提になります。同じ「都市部」「地方」という括りでも、鉄道アクセスの充実度は都道府県ごとに大きく異なります。
ここでは全国の鉄道駅の位置データを都道府県別に集計し、土地の広さや人口に対して駅がどれだけ密にあるかを比べます。駅の絶対数は人口や面積の大きい地域ほど多くなるため、そのままでは比較になりません。可住地面積や人口で割って密度に直すことで、市場ごとの鉄道アクセスの性格が見えてきます。
使用するデータ
駅の位置は国土数値情報の鉄道データ(nlftp.railway.station)を使います。全国の駅が緯度経度付きの点データとして収録されており、主な列は次のとおりです。
| 列名 | 内容 |
|---|---|
| station_name | 駅名 |
| line_name | 路線名 |
| operator | 運営事業者名 |
| operator_type | 運営主体タイプ(JR在来線・民営鉄道・第三セクター・公営鉄道・JRの新幹線) |
| station_group_code | 同一地点の駅をまとめるコード |
| geometry | 駅の位置(点) |
複数路線が乗り入れる乗換駅は路線ごとに行が分かれて入っているため、ここでは同一地点をまとめる station_group_code で重複を除き、一意の駅として数えます。この方法で全国の駅数は約9,000駅になります。各駅の位置を都道府県境界データ(nlftp.boundary.prefecture)と空間結合し、どの都道府県に属するかを判定しています。
密度の分母には、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別自然環境データ(e_stat.ssds.b_pref_land)の可住地面積(B1103)と、人口・世帯データ(e_stat.ssds.a_pref_population)の総人口(A1101)の2024年値を使います。可住地面積は総面積から林野や湖沼などを除いた、実際に人が住める土地の広さです。山林の多い地域では総面積で割ると鉄道アクセスが過小評価されるため、可住地面積を分母にしています。
可住地面積あたりの駅密度
まず、可住地面積100km²あたりの駅数を地図で見ます。色が濃いほど、人が住める土地に対して駅が密にある地域です。
濃い色は首都圏・近畿圏・福岡周辺の都市圏に集中し、東北から北海道、九州南部にかけては薄い色が広がります。可住地面積あたりの駅密度は、市街地の中で鉄道がどれだけ歩いて到達できる範囲をカバーしているかを表します。色が濃い地域ほど、駅を起点にした徒歩商圏が成立しやすい市場といえます。
都道府県別の駅密度ランキング
同じ指標を47都道府県で並べます。上位10・中間27・下位10の3グループに色分けしました。
最も密度が高いのは東京都で、可住地面積100km²あたり45.8駅です。大阪府が36.5駅、神奈川県が23.7駅、京都府が20.3駅と続きます。一方、下位は沖縄県の1.7駅、北海道の1.9駅で、最上位の東京都とは約27倍の開きがあります。沖縄県は鉄道が沖縄都市モノレール(ゆいレール)に限られ、在来線が走っていないため、可住地が広い割に駅がごく少なくなっています。北海道も広大な可住地に対して路線が点在するため、沖縄県に次いで低い水準です。
中央値は7.9駅で、上位の都市圏と下位の地方圏の間に大きな差があります。この指標が低い地域では、徒歩圏を前提とした駅前型の出店は来店者を集めにくく、車での来店を前提とした立地設計が現実的になります。
面積あたりと人口あたりは別の指標
駅の密度は、何で割るかによって見える景色が変わります。横軸に可住地面積あたりの駅数、縦軸に人口10万人あたりの駅数を取り、47都道府県を散布図にしました。
破線は各指標の中央値(面積あたり7.9駅、人口あたり9.2駅)です。2つの指標はほとんど連動しておらず、面積あたりの密度が高い県が人口あたりでも高いとは限りません。
右下に位置する東京都・大阪府・神奈川県は、面積あたりの駅密度は高い一方で、人口あたりの駅数は少なくなっています。人口が密集しているため、1つの駅が受け持つ人口が多いという構図です。これらの地域は徒歩商圏が成立しやすい反面、1つの駅前を多くの人口が共有するため、競合も集まりやすい市場といえます。なかでも埼玉県は、人口あたりの駅数が全国でも最少クラスで、1駅あたりの人口規模が大きい市場です。
上方に位置する高知県は、人口あたり25.3駅と全国で最も多く、人口の少ない地域に在来線が張り巡らされていることを示します。秋田県のように面積あたりの駅密度は低いものの人口あたりでは高い東北の県もあり、地方では「人口の割に駅は多いが、土地の広さに対しては薄い」という形が目立ちます。左下の沖縄県は面積あたり・人口あたりのどちらでも最も低く、鉄道を前提にできない市場であることがはっきりと表れています。
出店市場の鉄道アクセスを評価するときは、徒歩商圏の密度を見るなら面積あたり、需要に対する路線の充実度を見るなら人口あたり、と目的に応じて指標を使い分ける必要があります。1つの指標だけで「鉄道が充実している/していない」と判断すると、市場の性格を読み違えることになります。
業務での活用
- 出店候補地の業態選択: 面積あたりの駅密度が高い市場では駅前型・駅ナカ型、低い市場ではロードサイド型と、市場特性に合わせて立地と業態を選ぶ
- 商圏設計の前提整理: 鉄道が薄い地域では徒歩圏ではなく車での到達圏で商圏を設計し、駐車場の規模を見積もる
- 複数候補地の横並び比較: 進出を検討する複数の都道府県を同じ指標で並べ、鉄道前提か車前提かを早い段階で振り分ける
鉄道アクセスの充実度は、駅の数そのものではなく、土地や人口に対する密度として見て初めて市場ごとの性格が見えてきます。こうした比較の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。国土数値情報の鉄道データや行政区域データ、e-Statの統計について、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った鉄道駅テーブルや都道府県別自然環境テーブルから、自社が検討する地域の鉄道アクセスを確かめられます。地理データの整備に時間を取られず、出店市場の見極めそのものに集中できます。
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