市区町村別の課税対象所得で商圏の購買力を評価する—1人あたり所得と市場規模の2軸で出店候補地を絞り込む

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新規出店やエリアマーケティングで候補地を比較するとき、商圏人口とあわせて見ておきたいのが住民の購買力です。同じ人口規模でも、住民の所得水準が違えば想定できる客単価や取り扱う価格帯は変わります。この購買力を市区町村単位で定量的に把握できるのが、住民税の課税状況から得られる課税対象所得のデータです。

この記事では、e-Statの社会・人口統計体系に収録された市区町村別の経済データから、課税対象所得と納税義務者数を使って「納税者1人あたりの課税対象所得」を算出します。全国約1,700市区町村を対象に、購買力の地域差と、それを市場規模とどう組み合わせて出店判断に使うかを整理します。

データの概要

このデータは e-Stat「社会・人口統計体系」の市区町村別経済基盤データ(c_municipal_economy)から取得しています。住民の所得水準に関わる主なカテゴリは次の3つです。

コード内容
C120110課税対象所得
C120120納税義務者数(所得割)
C120130納税義務者数(均等割)

課税対象所得(C120110)は市町村民税の課税対象となった所得の総額で、単位は千円です。これを所得割の納税義務者数(C120120)で割ると、納税者1人あたりの課税対象所得が求められます。これは総務省が地域間の所得水準を比較する際にも使われる標準的な指標で、本記事では万円に換算して扱います。

市区町村集計にあたっては、政令指定都市の行政区(例: 「札幌市 中央区」)は市の合計(「札幌市」)と二重計上になるため除外し、東京23区は「特別区部」の合計を除いて各区を個別に数えています。この条件で2023年度に課税対象所得・納税義務者数がそろう市区町村は1,741団体です。

全国の購買力の推移

まず、全市区町村を合算した1人あたり課税対象所得の長期推移を見ます。

2004年度の351.6万円から、リーマンショックや東日本大震災を挟んだ2013年度の320.7万円まで約9%低下しました。その後は2013年度を底に10年連続で回復し、2023年度は366.2万円と、この20年間で最も高い水準になっています。全国平均で見ると、住民の課税対象所得はここ10年で着実に持ち直してきたと言えます。

ただしこれは全国を合算した数値であり、市区町村ごとの水準は大きくばらつきます。次に、2023年度時点の市区町村別の格差を確認します。

市区町村別の1人あたり課税対象所得(2023年度)

2023年度の1人あたり課税対象所得について、上位15団体と下位10団体を並べました。

最上位は東京都港区の1,396.8万円で、千代田区(1,121.3万円)、渋谷区(1,073.7万円)と都心3区が並びます。最下位の群馬県南牧村(223.7万円)と比べると約6.2倍の開きがあり、住民の所得水準は市区町村によって大きく異なることがわかります。

注目したいのは、上位に北海道猿払村(872.7万円)が4位で入っている点です。猿払村はホタテ漁などで知られる人口3千人規模の村で、1人あたりの所得は非常に高い一方、市場としての規模は小さく、店舗の出店候補地としては東京都心とは性格が異なります。1人あたり所得が高いことと、商圏としての市場規模が大きいことは別の話です。出店判断では、この2つを分けて見る必要があります。

市場規模と購買力の2軸で見る

そこで、横軸に総課税対象所得(市場全体の所得規模)、縦軸に1人あたり課税対象所得(購買力の高さ)を取り、全1,741市区町村を散布図に展開します。市場規模は団体間で桁が大きく異なるため、横軸は対数軸にしています。

赤い点で示した4団体が、それぞれ異なる位置にあります。横浜市は総課税対象所得が約8.5兆円(85,051億円)と全国最大で、市場規模では群を抜きますが、1人あたりは436.9万円と中位です。大阪市も総額4.8兆円規模ながら1人あたりは372.8万円と全国平均に近い水準です。一方、港区は総額こそ2.1兆円と横浜市の4分の1ですが、1人あたりは1,396.8万円と突出しています。猿払村は1人あたり872.7万円と高水準ながら、総額は123.5億円と横浜市の700分の1ほどで、グラフの左上に孤立しています。

この2軸で見ると、出店候補地は「市場規模が大きく購買力も高い(右上)」「市場規模は大きいが購買力は標準的(右下)」「購買力は高いが市場が小さい(左上)」といった象限に整理できます。狙う業態や価格帯によって、どの象限を優先するかは変わります。高価格帯の店舗なら左上・右上の購買力が高いエリアが、量を見込むチェーン店なら右側の市場規模が大きいエリアが候補になります。

業務での活用

このデータは、出店やエリア戦略の初期スクリーニングに使えます。

  • 出店候補地の購買力スクリーニング: 1人あたり課税対象所得で候補エリアを足切りし、想定する客単価・価格帯と合うエリアに絞り込む
  • 市場規模との組み合わせ評価: 総課税対象所得を市場規模の代理指標として、購買力との2軸で候補地を象限分けし、業態に合う象限を優先する
  • 商圏内の相対比較: 同じ都市圏や隣接市区町村の中で1人あたり所得を比較し、近接していても購買力が異なるエリアを見分ける

c_municipal_economy は事業所数や産業別の売上金額・付加価値額も市区町村単位で持つため、住民の購買力(需要側)と事業所の集積(供給側)を組み合わせた商圏分析にも展開できます。また人口データ(a_municipal_population)と結合すれば、世帯あたりや生産年齢人口あたりの指標に落とし込むこともできます。Queriaでは複数のオープンデータを SQL で横断的に組み合わせられるため、出店戦略のような複合的な意思決定の下支えとして活用できます。

まとめ

  • 全国の1人あたり課税対象所得は2013年度の320.7万円を底に回復し、2023年度は366.2万円とこの20年で最高水準です
  • 2023年度の市区町村別では、港区の1,396.8万円から南牧村の223.7万円まで約6.2倍の差があります
  • 1人あたり所得が高い猿払村のように、購買力が高くても市場規模が小さいエリアもあり、両者は分けて見る必要があります
  • 総課税対象所得(市場規模)と1人あたり課税対象所得(購買力)の2軸で象限分けすると、業態や価格帯に応じた出店候補地の優先順位づけに使えます

課税対象所得のデータは、人口規模だけでは見えない商圏の購買力を市区町村単位で定量化できる基礎データです。市場規模と組み合わせて見ることで、出店候補地の評価を一段精緻にできます。

本記事はAIを活用して作成し、編集部が内容を確認しています。記事内のSQLを実行してデータをご自身で検証いただけます。