市区町村の借金返済負担はどう変わったか—健全化判断比率で読む地方財政

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日本の市区町村は、財政健全化法(地方公共団体の財政の健全化に関する法律)に基づき、財政の健全度を示す指標を毎年公表しています。一見地味なこの制度のデータには、地方財政がこの15年でどう変わったかが記録されています。

この記事では、健全化判断比率のうち実質公債費比率と将来負担比率を市区町村単位で集計し、借金返済負担の推移・地域差・将来負担の実態を読み解きます。

使うデータと指標

このデータは e-Stat「社会・人口統計体系」の市区町村別行政基盤データ(d_municipal_administration)から取得しています。財政健全化法では、自治体の財政状態を客観的に示す指標として4つの健全化判断比率が定められており、このテーブルにはそのうち主要な2指標が収録されています。

コード指標意味
D2211実質公債費比率借金返済(公債費)が財政を圧迫している度合い(フロー)
D2212将来負担比率将来支払う負債の残高が財政規模に対してどれだけ大きいか(ストック)

実質公債費比率は毎年の返済負担の重さを、将来負担比率は負債の積み上がり(ストック)を表します。25%(実質公債費比率)や350%(将来負担比率、市町村の場合)という早期健全化基準を超えると、自治体は財政健全化計画の策定を義務づけられます。ここではまず、市区町村全体で実質公債費比率がどう推移してきたかを確認します。

なお、集計では政令指定都市の行政区(例: 「北海道 札幌市 中央区」)と東京23区の合計行(「特別区部」)を除き、市区町村単位で重複なく数えています。

借金返済負担はこの15年で半減した

まず、全国の市区町村の実質公債費比率の平均値の推移です。

市区町村平均の実質公債費比率は、2008年度の14.06%から2021年度には7.05%まで下がっています。15年弱でほぼ半減しました。実質公債費比率が18%を超えると地方債の発行に総務大臣等の許可が必要になりますが、平均値はその水準を一貫して下回り続けています。

この改善の背景には、2007年に成立した財政健全化法があります。比率の公表が義務化されたことで、各自治体が公債費の抑制に動いた構図が読み取れます。次に、許可基準を超えた市区町村の数の変化を見てみましょう。

許可基準を超える自治体は383団体から1団体へ

実質公債費比率が18%以上の市区町村の数を、年度ごとに数えました。

2008年度には383団体が起債許可基準の18%を超えていましたが、2021年度にはわずか1団体まで減りました。残った1団体は、財政再生基準(35%)も上回る北海道夕張市です。同市は財政再生団体として国の管理下で再建を進めており、2021年度の実質公債費比率は68.3%と突出しています。

つまり、いまや市区町村の借金返済負担は、ほとんどの自治体で健全な水準にあります。制度導入直後に課題だった「返済負担の重い団体の早期発見」という局面は、すでに過ぎたと言えそうです。

借金返済負担には地域差が残る

健全化が進んだとはいえ、比率の水準には地域差があります。市区町村の実質公債費比率を都道府県ごとに平均し、2021年度の値を地図にしました。

市区町村平均が最も高いのは島根県(11.32%)で、富山県、岩手県、新潟県、青森県といった地方圏が続きます。一方、最も低いのは東京都(0.45%)で、愛知県、神奈川県、大阪府など大都市圏が下位に並びます。

人口が分散し税源の乏しい地方圏では、住民1人あたりが負担するインフラ整備の借金が大きくなりやすく、返済負担が相対的に重く出ます。逆に税収の厚い大都市圏では、借金返済が財政を圧迫する度合いは小さくなります。返済負担の重さは、その地域が抱える人口構造やインフラ維持の事情を映していると考えられます。

フローとストック、2つの視点で見る

最後に、毎年の返済負担を表すフローの指標(実質公債費比率)と、負債の積み上がりを表すストックの指標(将来負担比率)を2軸で組み合わせ、2021年度の各市区町村がどこに位置するかを散布図で示します。財政健全化法も、この両面から財政を評価しています。

将来負担比率と実質公債費比率の両方を公表した925市区町村をプロットしています。多くの自治体が左下(両比率とも低い)に集まり、早期健全化基準を超える自治体は見当たりません。右上に大きく離れた夕張市が、いかに例外的な存在かが分かります。

注目すべきは、両比率を持つ自治体以外の存在です。実質公債費比率を公表した約1,700市区町村のうち、将来負担比率が「なし」(資産が負債を上回り、実質的な将来負担がない状態)だった団体は816、全体の約47%にのぼります。半数近い自治体が、将来世代へ先送りする実質的な負債を抱えていないことになります。

フローとストックは必ずしも連動しません。毎年の返済負担が軽くても負債残高(将来負担比率)が大きい自治体もあれば、その逆もあります。両比率を併せて見ることで、単年度の収支だけでは見えない財政の体力が浮かび上がります。

まとめ

市区町村の健全化判断比率からは、次のことが読み取れました。

  • 実質公債費比率の全国平均は、2008年度の14.06%から2021年度の7.05%へ、15年弱でほぼ半減した
  • 起債許可基準(18%)を超える市区町村は383団体から1団体(夕張市)へ激減し、財政健全化法の導入が借金返済負担の抑制に働いた構図がうかがえる
  • 返済負担には地域差が残り、人口が分散する地方圏ほど重く、税源の厚い大都市圏ほど軽い
  • 将来負担比率では、約47%の市区町村が実質的な将来負担を抱えておらず、ストック面でも健全な団体が多い

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