上場企業の有価証券報告書データで業種別のROEと財務体質を比べる

queria

東京証券取引所は2023年に「資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に要請し、資本効率を示すROE(自己資本利益率)が経営指標として改めて注目されています。経営企画や財務の担当者にとって、自社のROEや財務体質が同業他社と比べてどの水準にあるかを把握することは、目標設定や投資家への説明の出発点になります。

ただし、ROEの「ふつう」は業種によって大きく異なります。装置産業と情報サービスでは資本の使い方が違い、銀行や不動産のように財務構造そのものが他の業種と異なる業態もあります。自社の数字を評価するには、まず業種ごとの相場観を持つことが欠かせません。

この記事では、金融庁のEDINET(電子開示システム)で公開されている有価証券報告書のデータを使い、上場企業の収益性と財務の安全性を業種別・規模別に並べてみます。

分析するデータ

使うのは、EDINETから取り込んだ財務サマリーのテーブル(mart_business_results)と、提出会社の属性テーブル(mart_companies)です。前者には売上高・純利益・ROE・自己資本比率といった主要指標が、後者には業種区分や上場区分が収録されています。両者を提出会社コード(edinet_code)で結合すると、財務指標に業種のラベルを付けて集計できます。

ここでは直近の決算年度(2026年3月期)の数値を使い、上場区分が「上場」の企業に絞ります。対象は1,744社で、ROEの中央値は8.1%、自己資本比率の中央値は59.0%でした。業種ごとのばらつきを見るため、以下では各指標とも中央値で比較します(極端な値に引っ張られにくくするためです)。

業種別のROE

まず、所属企業が10社以上ある27業種について、ROEの中央値を並べます。

最も高いのは情報・通信業の13.6%で、続いてサービス業(11.0%)、建設業(10.9%)、不動産業(10.4%)、精密機器(10.2%)が並びます。一方で低いのは繊維製品(4.5%)、パルプ・紙(4.6%)、鉄鋼(5.3%)、輸送用機器(5.4%)でした。上位と下位では約3倍の開きがあります。

成熟した装置産業よりも、設備投資の負担が比較的軽い情報・サービス系の業種で資本効率が高く出ている様子がうかがえます。自社のROEを評価するときに「全体の中央値8.1%を上回っているか」だけでなく、「同じ業種の中央値と比べてどうか」という視点が必要になることが分かります。

稼ぐ力と財務の安全性のバランス

ROEが高いことは、必ずしも財務が健全であることを意味しません。ROEは自己資本に対する利益の比率なので、自己資本を薄くして借入などのレバレッジを効かせれば、利益が同じでもROEは高くなります。そこで、横軸にROE、縦軸に自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)を取り、業種ごとの位置関係を見てみます。自己資本比率が高いほど財務の安全性が高く、低いほど他人資本への依存が大きいことを示します。

右上に位置するのが情報・通信業(ROE13.6%、自己資本比率71.2%)や精密機器(10.2%、73.0%)で、稼ぐ力と財務の安全性を両立しています。これに対して不動産業(10.4%、31.9%)は、高いROEを薄い自己資本で実現しており、借入を活用したレバレッジ型の収益構造であることが読み取れます。

左下の銀行業(5.6%、4.7%)は自己資本比率が際立って低く見えますが、これは預金という負債を原資に運用する金融業の構造によるもので、製造業と同じ尺度で「危険」と解釈すべきではありません。業態の違いを踏まえた読み方が必要です。

逆に、医薬品(5.9%、71.4%)や繊維製品(4.5%、72.0%)は自己資本比率が高い一方でROEは控えめです。財務基盤は厚いものの、その資本を効率的に利益へ結びつけられているかという点では改善の余地が示唆されます。自社がこの領域にいる場合、安全性は強みとして維持しつつ、資本効率をどう高めるかが論点になります。

企業規模とROE

業種の違いに加えて、企業の規模もROEに影響します。売上高の規模で4つの帯に分け、ROEと自己資本比率の中央値を比較します。

売上高が大きい企業ほどROEが高い傾向が見えます。100億円未満では6.4%、100億〜1千億円で8.0%、1千億〜1兆円で8.9%、1兆円以上で9.2%と、規模が上がるにつれて資本効率が高まっています。一方で自己資本比率は100億円未満の65.9%から1千億〜1兆円の57.3%まで下がり、規模の大きい企業ほど借入なども含めた資本を活用して利益を伸ばしている構図がうかがえます。

裏を返せば、規模の小さい企業は厚い自己資本を抱えながらROEが伸びにくいということです。自社のROEが同業の大企業に見劣りする場合でも、同程度の規模帯の中央値と比べることで、より公平な評価ができます。

業務での活用

業種別・規模別の財務指標は、次のような場面で実務に使えます。

  • 自社のROEや自己資本比率を、同業種かつ同規模の中央値と並べて立ち位置を確認する
  • 投資先や取引先の候補を評価する際に、業種ごとの相場観を踏まえて収益性を補正して見る
  • 中期計画の目標設定で、金融や不動産のように財務構造が異なる業態を一律の基準で比べない

ROEのような単一の指標も、業種と規模という二つの軸で並べて初めて、その数字が高いのか低いのかを判断できます。こうした比較の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。EDINETの有価証券報告書をはじめとする公的なオープンデータについて、列名・単位・指標の意味を揃え、テーブルやカラムの定義をメタデータとして添えてあります。有報をPDFで1社ずつ開いて転記する手間をかけずに、本記事で使った財務サマリーのテーブル提出会社のテーブルから、自社や関心のある企業の数字を業種・規模で並べて確かめられます。データの収集と加工に時間を取られず、ベンチマークの判断そのものに集中できます。

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本記事はAIを活用して作成し、編集部が内容を確認しています。記事内のSQLを実行してデータをご自身で検証いただけます。