工場や物流拠点、事業所の新設先を探すとき、候補地が過疎地域に指定されているかどうかは条件の差になります。総務省が示す過疎地域の税制措置では、過疎地域の中で製造業・旅館業・情報サービス業などの設備を取得した場合に、市町村が固定資産税を課税免除したときの減収を国が補てんする仕組みが用意されています。用地を探す側から見れば、指定区域かどうかで自治体が出せる条件が変わります。
その指定区域が地図の上でどこにあるのかを、面のデータで確かめます。使うのは国土数値情報の過疎地域データと人口集中地区データで、どちらも区域をポリゴンで持っています。この2つを重ねると、過疎地域と市街地がどれだけ同じ場所にあるかが数えられます。
過疎地域は46都道府県にある
過疎地域データ(nlftp.region.depopulated_area)は1行が1つの指定区域で、全国に816区域あります。指定は3つの区分に分かれていて、category_code で区別します。
| コード | 区分 | 区域数 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | 過疎市町村 | 646 | 市町村の全域が過疎地域 |
| 2 | 過疎地域とみなされる市町村 | 25 | 合併後の市町村の全域を過疎地域とみなす |
| 3 | 過疎地域とみなされる区域 | 145 | 合併前の旧市町村にあたる区域だけが過疎地域 |
区分1と2は市町村の全域が指定されるので、合わせて671市町村が丸ごと過疎地域です。区分3は「一部過疎」と呼ばれ、市域の一部だけが指定されます。過疎地域コードと行政区域コードは1対1で対応するので、816区域はそのまま816市町村にあたります。
このデータは2017年(平成29年)時点の指定を収めたもので、当時の過疎地域自立促進特別措置法に基づいています。指定の一覧は法の改正に合わせて入れ替わるため、現在の指定は総務省の公示で確かめる必要があります。以下で見るのは、2017年時点でどこが指定されていたかです。
都道府県別に区域数を数えると、次のようになります。
最も多いのは北海道の149区域で、鹿児島県41、長野県37、福島県31と続きます。指定が1つも無いのは神奈川県だけで、残りの46都道府県にはどこかに過疎地域があります。東京都には6区域あり、大島町・三宅村・新島村・青ヶ島村の島しょ部に加えて、奥多摩町と檜原村が入ります。大阪府は千早赤阪村の1区域です。「地方の山間部にしかない」という分布ではありません。
市街地ごと指定されている市がある
では、指定区域の中に市街地はあるのでしょうか。市街地の範囲は人口集中地区(DID)のデータで測れます。人口集中地区は、人口密度4,000人/km²以上の基本単位区が市区町村の中で隣り合い、合わせて人口5,000人以上になる区域のことで、国勢調査が市街地の範囲を面で定義したものです。ここで使うのは令和2年(2020年)国勢調査に基づく1,463地区です。
市町村の全域が指定されている671市町村(区分1と2)について、その中にある人口集中地区を数えます。全域指定なので、その市町村にある人口集中地区はそのまま過疎地域の中にあります。
結果は83市町村・89地区で、そこに1,532,897人が住んでいます。市街地の面積は合わせて435.4km²です。市街地人口の多い順に並べると、上位は次のようになります。
最も大きいのは北海道函館市の216,044人で、釧路市148,153人、小樽市92,939人、福岡県大牟田市91,868人と続きます。いずれも市の全域が過疎地域に指定されていて、その中に十万人規模の市街地が入っています。山形県鶴岡市57,238人、愛媛県宇和島市29,893人、和歌山県田辺市28,986人も同じ形です。
「過疎地域に指定されている」と「市街地が無い」は別のことです。過疎地域の指定は人口の減り方と財政力で決まるので、市街地を抱えたまま指定される市があります。用地を探す立場から見ると、これらの市では市街地そのものが指定区域の中にあることになります。
その市街地は5年で1割近く縮んだ
人口集中地区データは、同じ地区の前回国勢調査(2015年)時点の人口と面積も持っています。2015年の値が欠測になっている1地区を除いて比べると、市街地人口は1,666,170人から1,525,539人へ8.4%減りました。同じ期間に市街地の面積は445.0km²から433.3km²へ2.6%しか減っていません。人口密度にすると3,744人/km²から3,520人/km²で、市街地の広がりはほぼそのままに、中身が薄くなっています。
人口集中地区の区域は国勢調査ごとに引き直されるため、この増減には区域が広がったこと・狭まったことによる分も含まれます。
市町村ごとに見ると、83市町村のうち7市町村では市街地人口が増えています。増えた7市町村と、減り方の大きい8市町村を並べます。
最も増えたのは福岡県八女市の20.0%で、沖縄県宮古島市13.9%、京都府南丹市10.0%が続きます。一方、最も減ったのは秋田県大仙市の44.4%減です。83市町村の中央値は7.6%減なので、増えた7市町村は例外にあたります。それでも、過疎地域の指定と市街地の人口の動きは一対一ではありません。
大きな市の市域にも過疎地域がある
もう一方の形が「一部過疎」です。合併前の旧市町村にあたる区域だけが指定されるので、市の一部が過疎地域で、残りはそうではない状態になります。145市町村がこれにあたります。
指定区域が市域のどれくらいを占めるのかは、過疎地域データのポリゴン面積を行政区域データの市域面積で割ると分かります。分子は2017年時点の指定区域、分母は令和7年版の市域なので、この間に市域が変わった市では割合がその分ずれます。145市町村の中央値は40.4%で、最も低い広島県福山市が2.5%、最も高い大分県中津市が88.5%です。市域の半分以上が指定区域になっている市町村は44あります。
2020年国勢調査の人口が多い順に15市を取り出すと、次のようになります。
人口146万人の京都市は市域の26.3%が過疎地域です。旧京北町にあたる区域が指定されています。人口79万人の浜松市は48.8%、自動車産業の集まる愛知県豊田市も48.8%で、どちらも市域のおよそ半分が指定区域です。長野市49.1%、高知市38.7%、秋田市33.3%と、県庁所在地にも3割を超える市が並びます。
市の名前だけで候補地を絞ると、この差は見えません。京都市や浜松市を「都市だから対象外」として外すと、同じ市の中にある指定区域を落とすことになります。
業務での活用
ここで使った指定は2017年時点のものです。候補地の可否を決める段になったら、最新の指定を総務省の公示で確かめてください。
- 候補地の仕分け: 候補地リストの市町村コードを過疎地域データと突き合わせ、全域指定・一部過疎・指定なしの3区分に分ける。一部過疎の市は市域の中で扱いが変わるので、区域のポリゴンと候補地の座標を重ねて、どちら側に入るかまで判定する
- 市街地との位置関係の評価: 人口集中地区データと重ねて、市街地からの距離ではなく「市街地の中にあるかどうか」で候補地を並べ替える
- 労働力の見通し: 人口集中地区の2015年と2020年の値を比べ、候補地の市街地が人口を保っているのか薄くなっているのかを確かめる
データの出典
本記事は国土数値情報の過疎地域データ(A17、2017年版)、人口集中地区データ(A16、令和2年国勢調査)、行政区域データ(N03、令和7年版)と、e-Stat 社会・人口統計体系の市区町村データの総人口(A1101、2020年)を 2026-09-17 時点で集計しています。
過疎地域と市街地は、地図の上できれいに分かれていません。全域が指定された市に十万人規模の市街地があり、人口146万人の市の市域の4分の1が指定区域になっています。こうした重なりは、指定の一覧と地図を別々に見ているかぎり数えられません。Queriaは国土数値情報やe-Statのデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えて公開しています。データを集めて座標系を揃える手間をかけずに、本記事で使った過疎地域データと人口集中地区データから、自社の候補地がある市の指定状況を確かめたり、市街地との重なりを調べたりできます。用地データの整備に時間を取られず、候補地の絞り込みそのものに集中できます。
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For example, you could explore “全域が過疎地域に指定された市町村の人口集中地区を、面積あたりの人口密度が高い順に出して。2015年と2020年で密度がどう変わったかも比べて”.
Using Queria's open data, analyze the following: 全域が過疎地域に指定された市町村の人口集中地区を、面積あたりの人口密度が高い順に出して。2015年と2020年で密度がどう変わったかも比べて Reference (this report): https://queria.io/showcase/depopulated-area-city-overlap.md Connect with the Queria connector (https://queria.io/mcp) or the Queria CLI (uvx queria). Run uvx queria --help and uvx queria docs list to learn the CLI.
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