
ボランティア活動行動者率の都道府県データで地域の担い手構造を読む
社会福祉協議会のボランティアセンターや地域のボランティアコーディネーターにとって、担い手の確保は恒常的な課題です。どの分野の活動に人が集まりやすいのか、自分の地域は全国と比べて参加が活発なのか。こうした問いに答えるには、参加実態を地域横断で並べた基礎データが要ります。
総務省の社会生活基本調査は、人々が過去1年間にどんな活動をしたかを5年ごとに調べています。その「ボランティア活動の行動者率」(過去1年間に1回でもボランティア活動をした10歳以上人口の割合)を使うと、地域ごと・分野ごとの担い手の厚みが見えてきます。この記事では都道府県別データから、ボランティア活動の構造を読み解きます。
このデータは e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別文化・スポーツ統計(g_pref_culture)に収録されています。ボランティア活動の行動者率は、活動全体の総数に加えて活動分野ごとに11カテゴリが用意されています。
| コード | 内容 |
|---|---|
| G6417 | ボランティア活動(総数) |
| G6418 | 健康・医療サービスに関係した活動 |
| G6419 | 高齢者を対象とした活動 |
| G6420 | 障害者を対象とした活動 |
| G6421 | 子供を対象とした活動 |
| G6422 | スポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動 |
| G6423 | まちづくりのための活動 |
| G6424 | 安全な生活のための活動 |
| G6425 | 自然や環境を守るための活動 |
| G6426 | 災害に関係した活動 |
| G6427 | その他の活動 |
| G6428 | 国際協力に関係した活動 |
ここではまず総数(G6417)で全国・都道府県の傾向を見たうえで、災害分野(G6426)に絞った地域差を確認します。
全国の行動者率はどう推移してきたか
まず、全国のボランティア活動行動者率の推移を確認します。社会生活基本調査の実施年(2001年・2006年・2011年・2016年・2021年)の値を並べます。
2001年の28.9%から2016年の26.0%まで、行動者率はおおむね4人に1人を超える水準で推移してきました。ところが直近の2021年は17.8%まで大きく下がっています。2021年の調査は新型コロナウイルスの感染が広がった時期に実施されており、対面での活動が広く控えられたことが行動者率の急落に表れていると考えられます。地域の担い手をめぐる環境は、この時期に大きく揺らいだことがうかがえます。
どんな分野に人が集まるのか
ボランティア活動と一口に言っても、その中身はさまざまです。社会生活基本調査は活動分野を11に分けて行動者率を集計しています。2021年の全国値で、分野ごとの参加の厚みを比べてみます。
最も参加が多いのは「まちづくり」で7.4%。自治会や町内会を通じた清掃・防犯・地域行事などが含まれ、身近で参加しやすい分野が担い手の中心になっています。続いて「子供対象」(4.6%)、「安全な生活」(3.1%)、「自然・環境」(3.0%)、「スポーツ・文化・芸術」(2.8%)と並びます。一方、「障害者対象」(0.9%)、「国際協力」(0.8%)、「災害」(0.8%)は全国では参加者が薄い分野です。
担い手の確保を考えるとき、この分野ごとの厚みの違いは出発点になります。次に、同じ指標を都道府県で比べてみます。
都道府県でこれだけ違う参加率
ボランティア活動の総合的な行動者率を、47都道府県すべてで比べます。2021年の値を上位10・中間・下位10の3色で示します。
最も高い島根県は25.6%で、佐賀県・岩手県・滋賀県・鳥取県が続きます。一方、最も低い青森県は14.0%で、大阪府・千葉県・東京都・埼玉県が下位に並びます。上位と下位では1.8倍ほどの開きがあり、人口の少ない地方の県で高く、大都市圏で低いという構造が読み取れます。地縁のつながりが濃い地域ほど参加が活発になりやすいことがうかがえます。
この地方と都市の差は2021年に限った傾向ではありません。コロナ前の2016年も上位は滋賀県・岐阜県・島根県・熊本県・佐賀県、下位は大阪府・東京都・青森県・北海道・高知県で、地方の県が上位を占め大都市が下位に沈む並びは共通しています。コロナ禍で水準そのものは下がりましたが、地域ごとの担い手の厚みの差は底堅く残っています。
分野によって変わる地域のリーダー
総合の行動者率では地方の県が上位を占めましたが、分野を絞ると違う顔ぶれが現れます。全国では参加者が薄い「災害」分野の都道府県別行動者率を見てみます。
災害分野でトップに立つのは熊本県(2.5%)です。続く佐賀県(1.8%)、長野県(1.4%)、宮城県(1.2%)と、過去に大きな地震や豪雨災害を経験した県が上位に並びます。総合の行動者率では9番手だった熊本県が、災害分野では全国1位に立つ点が目を引きます。全国値では0.8%と薄い分野でも、被災を経験した地域では参加率が突出し、上位と下位で6倍以上の差が開いています。
ここから読み取れるのは、ボランティアの担い手は「どの地域に多いか」だけでなく「どの分野で多いか」によって地図が描き変わるということです。総合では下位の県が特定の分野では上位に入ることもあり得ます。地域の担い手構造は、総合の参加率と分野別の参加率を重ねて初めて立体的に見えてきます。
データの活かし方
ボランティアセンターやコーディネーターの実務では、こうした行動者率データは次のように使えます。
- 自分の都道府県の総合行動者率を全国・近隣県と比べ、担い手確保の優先度を測る
- 分野別の行動者率から、地域で薄い分野(災害・国際協力など)を把握し、重点的な働きかけの対象を絞る
- 5年ごとの推移を追い、コロナ禍からの参加の回復度合いをモニタリングする
地域ごと・分野ごとの担い手の厚みは、一つの数字を眺めるだけでは見えてきません。全国の都道府県を横並びにし、複数の活動分野を重ねて初めて、自分の地域がどこに立っているかが分かります。Queriaは、こうした官公庁のオープンデータを整えた形で公開しています。列名・単位・文字コードを揃え、カテゴリコードの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った文化・スポーツ統計テーブルから、自分の地域の参加率を確かめたり、関心のある活動分野のコードを選んで比べたりできます。統計の整備に時間を取られず、担い手をどう育てるかの判断そのものに集中できます。