
東京43%、青森13% — 学歴を答えなかった人を除くと、地域差はもっと大きい
自治体の人材政策や企業の立地検討で、都道府県別の大卒者割合を根拠に使う場面があります。国勢調査をもとにした統計から「大学・大学院卒の人数 ÷ 卒業者の総数」を計算すれば、その県の学歴構成が出るように見えます。
しかしこの割り算には、結果を10ポイント以上動かす選択が1つ隠れています。分母の卒業者総数には、最終学歴を答えなかった人が含まれているためです。しかもその割合は都道府県によって4倍以上違います。この記事では、その差がどれだけ結論を変えるかを確かめます。
使うのは、総務省統計局の社会・人口統計体系(SSDS)に収録された都道府県別の最終学歴人口です。国勢調査を出典とし、1980年から2020年まで10年おきの5時点が入っています。
| コード | 内容 |
|---|---|
| E9101 | 最終学歴人口(卒業者総数) |
| E9102 | 最終学歴人口(小学校・中学校) |
| E9103 | 最終学歴人口(高校・旧中) |
| E9105 | 最終学歴人口(短大・高専) |
| E9106 | 最終学歴人口(大学・大学院) |
学歴の区分は E9102・E9103・E9105・E9106 の4つで、それ以外の区分はありません。専修学校・各種学校は独立した区分ではなく、入学資格と修業年限に応じて4区分のいずれかに割り振られます(項目定義 E91 の別表)。つまり4区分の合計は、本来なら卒業者総数(E9101)と一致するはずです。
一致しません。2020年の全国では卒業者総数が100,763,239人、4区分の合計が85,703,934人で、15,059,305人(14.9%)が4区分のどこにも入っていません。これが最終卒業学校の種類を答えなかった人、いわゆる学歴不詳です。
学歴不詳は40年で0.2%から14.9%へ
まず、この不詳がいつから、どれくらいの規模で発生しているのかを見ます。
1980年の全国の不詳は0.2%で、事実上ゼロでした。2000年でも3.8%です。それが2010年に13.1%へ跳ね上がり、2020年は14.9%になっています。
跳ね方は地域で大きく違います。東京都は1980年の0.4%から2010年に27.8%まで上がり、2020年も26.9%です。卒業者の4人に1人以上が、最終学歴の欄で分類されていません。同じ40年で青森県は0.2%から7.3%までしか上がっていません。1980年時点では両者ともほぼゼロで違いがなかったのに、2020年には約3.7倍の開きになっています。
不詳が全国一律に増えているなら、分母に含めても都道府県の順位は動きません。実際にはそうなっていないため、比較の前に不詳の分布を見ておく必要があります。
不詳の割合は都道府県で4倍以上違う
2020年の47都道府県について、卒業者に占める学歴不詳の割合を並べます。
最も高いのは東京都の26.9%、最も低いのは山形県の6.2%で、4.3倍の開きがあります。上位には東京都・沖縄県(23.6%)・大阪府(22.7%)・京都府(20.0%)・神奈川県(17.9%)が並び、下位10はすべて10%を下回ります。
大都市圏が上位に来る傾向はありますが、それだけでは説明できません。沖縄県は上位2番目で、高知県(14.8%)と北海道(14.2%)も愛知県(13.6%)より高い位置にいます。逆に静岡県は7.5%で下位10に入ります。不詳の多寡は、県の人口規模や都市度と単純に対応しているわけではありません。
分母に不詳を残したまま大卒者割合を出すと、この6.2%から26.9%までのばらつきがそのまま指標に混ざります。不詳の多い県ほど、実際より低い割合が出ます。
学歴が判明している人だけで見た大卒者割合
そこで分母を「学歴が判明している卒業者」、つまり4区分の合計に変えて集計します。不詳の人が判明している人と同じ学歴構成を持つと仮定した場合の値です。2020年の47都道府県を並べます。
首位は東京都の43.2%です。卒業者総数を分母にした場合の31.6%より11.6ポイント高くなります。神奈川県は35.6%(総数ベース29.2%)、大阪府は28.1%(同21.8%)です。
最下位は青森県の12.7%で、こちらは総数ベースの11.8%から0.9ポイントしか動きません。不詳が7.3%と小さいためです。順位の両端は動かず、東京都が1位、青森県が47位という並びは分母を変えても同じです。変わるのは差の大きさで、総数ベースでは19.7ポイント、判明者ベースでは30.4ポイントになります。
なお、この値は不詳の人の学歴構成が判明者と同じだと仮定した推定です。不詳の人に大卒者が多い(あるいは少ない)なら、真の値はこれより高く(低く)なります。どちらに偏っているかを示す情報はこの統計に含まれていないため、確かめられるのは「総数ベースの値は不詳率の高い県ほど低く出る」という方向だけです。
順位が動く県、動かない県
両端は動かなくても、上位10・下位10の線引きの近くでは顔ぶれが入れ替わります。上位10に入るのは総数ベースでは滋賀県(10位)、判明者ベースでは大阪府(8位)です。下位10からは高知県(総数39位・判明37位)が抜け、代わりに新潟県(同37位・40位)が入ります。順位そのものが大きく動く県も見ておきます。
最も大きく動くのは沖縄県で、13順位上がります。卒業者総数を分母にすると35位で下から数えたほうが早い位置ですが、学歴が判明している人だけで見ると22位、47都道府県のほぼ中央です。不詳率が23.6%と全国2番目に高いことが、そのまま順位に効いていました。
三重県が6順位、京都府と大阪府が3順位上がります。逆に下がるのは岐阜県(5順位)・福井県(4順位)・長野県・山口県・新潟県(各3順位)で、いずれも不詳率が10%を下回る県です。
沖縄県に限れば、全国平均との比較は分母を変えても動きません。判明者ベースで20.6%(全国25.6%)、総数ベースで15.8%(全国21.7%)と、どちらでも全国を下回ります。動くのは都道府県のなかでの位置で、下位3分の1に入るかどうかで対象地域を絞るような資料では、35位と22位で扱いが変わります。
その全国平均の上下そのものが入れ替わる県も1つあります。滋賀県は総数ベースで22.4%と全国の21.7%を上回りますが、判明者ベースでは25.5%で全国の25.6%を下回ります。差は0.04ポイントで、47都道府県のうち境界をまたぐのは滋賀県だけです。際どい1件ではありますが、「全国平均を上回る県」で対象を切る資料では、分母の選択がそのまま採否を決めます。順位でも平均との比較でも、どちらの分母を使ったかを明示する意味があります。
40年の推移 — 2010年代の「格差縮小」は見かけだった
分母の選択は、時系列の解釈も変えます。東京都と青森県の大卒者割合の差を、2つの分母それぞれで追います。
1980年はどちらも13.6ポイントで、不詳がほぼゼロだったため一致します。そこから2本は離れていきます。
注目したいのは2000年から2010年です。卒業者総数ベースでは17.0ポイントから16.0ポイントへ1.0ポイント縮んでいます。この線だけを見れば、2000年代に東京と青森の学歴差は縮小に転じたと読めます。しかし学歴判明者ベースでは19.3ポイントから25.3ポイントへ6.0ポイント拡大しています。同じ10年について、片方は縮小、片方は拡大という逆の結論が出ます。
この10年は東京都の不詳率が9.0%から27.8%へ跳ね上がった時期です。東京都の分母だけが大きく膨らんだ結果、総数ベースの東京都の値が抑えられ、差が縮んだように見えていました。2020年には差は総数ベースで19.7ポイント、判明者ベースで30.4ポイントとなり、どちらの線も拡大を示します。
全国の大卒者割合も同じ影響を受けています。総数ベースでは1980年の8.8%から2020年の21.7%へ約2.5倍ですが、判明者ベースでは8.9%から25.6%へ約2.9倍です。40年間の伸びは、総数ベースの数字が示すより大きくなります。
データの出典
本記事は e-Stat 社会・人口統計体系 の都道府県別の最終学歴人口を2026年8月6日時点で集計しています。元データは総務省統計局の令和2年国勢調査をはじめとする各回の国勢調査で、収録は1980年から2020年まで10年おきの5時点です。区分の定義は項目定義 E91 によります。
まとめ
- 2020年の全国では卒業者の14.9%が学歴不詳で、その割合は東京都26.9%から山形県6.2%まで4.3倍の開きがある
- 分母を学歴判明者に変えると東京都は31.6%から43.2%へ、青森県は11.8%から12.7%へ動き、両者の差は19.7ポイントから30.4ポイントに広がる
- 沖縄県は不詳率が23.6%と高く、分母の取り方で順位が35位から22位へ13上がる
- 滋賀県は総数ベースでは全国平均を上回り、判明者ベースでは全国との差が0.04ポイントで下回る。47都道府県でこの境界をまたぐのは滋賀県だけ
- 2000年から2010年の東京都と青森県の差は、総数ベースでは1.0ポイント縮小、判明者ベースでは6.0ポイント拡大と、逆の結論になる
同じテーブルの同じ列を使っても、分母に何を置くかで地域差の大きさも推移の向きも変わります。こうした確認は、47都道府県分の複数カテゴリを1つのクエリで横断できて初めて現実的になります。Queriaは、その土台になるデータを整えた形で公開しています。e-Statの最終学歴データについて、列名・単位・文字コードを揃え、カテゴリコードや項目の意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の学歴構成テーブルから、関心のある地域の値を2つの分母で出し直せます。
続きや気になることをAIエージェントで深掘りする
Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「e_pref_education の2020年データで、短大・高専卒(E9105)の割合を卒業者総数ベースと学歴判明者ベースの両方で都道府県別に出して、順位がどれだけ入れ替わるか比べて」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: e_pref_education の2020年データで、短大・高専卒(E9105)の割合を卒業者総数ベースと学歴判明者ベースの両方で都道府県別に出して、順位がどれだけ入れ替わるか比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/university-education-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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claude "Queria の公開データで次を分析してください: e_pref_education の2020年データで、短大・高専卒(E9105)の割合を卒業者総数ベースと学歴判明者ベースの両方で都道府県別に出して、順位がどれだけ入れ替わるか比べて 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/university-education-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
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