
大卒初任給の地域格差は45年で3倍に — 東京22万円と沖縄17万円が示すもの
3月は卒業の季節です。今年も多くの大学生・高校生が社会に出て、初めての給与を受け取ります。しかし、就職する都道府県によってその額は大きく異なります。賃金構造基本統計調査(厚生労働省)をもとにしたe-Statデータによると、2019年の大学卒男性の初任給は東京都が22万4千円に対し、沖縄県は17万5千円と約5万円の開きがあります。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データから、新規学卒者初任給の1975年から2019年にかけての45年間の変化と、地域格差の構造を分析します。
初任給の45年推移
この分析では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別労働データ(pref_labor)を使用しています。新規学卒者初任給には学歴×性別で以下の6カテゴリが収録されています。
| コード | 内容 | データ期間 |
|---|---|---|
| F6401 | 高校卒(男) | 1975〜2019年 |
| F6402 | 高校卒(女) | 1975〜2019年 |
| F6403 | 大学卒(男) | 1975〜2019年 |
| F6404 | 高専・短大卒(女) | 1975〜2019年 |
| F6405 | 大学卒(女) | 2019年のみ |
| F6406 | 高専・短大卒(男) | 2019年のみ |
F6405・F6406は2019年の1年分しか収録されていないため、以降の時系列分析ではF6401〜F6404の4カテゴリを使用します。
1975年に8万4千円だった大学卒男性の初任給は、1980年代後半のバブル景気期に加速度的に上昇し、1991年には17万9千円を記録しました。バブル崩壊後も賃金の粘着性から緩やかな上昇が続き、2003年頃に20万円台に達した後、2010年代前半まで約20万円前後での長期停滞に入りました。2010年代後半に緩やかな回復傾向が現れ、2019年には全国平均21万3千円に達しています。
都道府県別の初任給分布
2019年時点で、各都道府県の初任給水準にどれほど差があるかを地図で確認します。
東京都(22万4千円)・大阪府・愛知県・神奈川県などの大都市圏が高く、東北・九州・沖縄では低い傾向が明確に読み取れます。最低の沖縄県(17万5千円)と最高の東京都の差は約4万9千円に上ります。都市圏への大企業集中と、地方における産業構造の違いが、初任給の差として現れていると考えられます。
地域格差の45年間の変化
この都道府県間の初任給格差は、45年前からどのように推移してきたのでしょうか。各年の最高県と最低県の差を追います。
1975年に約1万7千円だった格差は、バブル期から拡大を続け、2001年には5万円を超えました。その後も高い水準で推移し、2019年には約4万9千円と1975年の約3倍に達しています。格差が縮小に転じる傾向は見られず、大都市圏と地方の初任給格差は構造的に固定化しつつあると言えるでしょう。
高校卒の男女格差の変化
学歴間の格差に加え、性別による格差はどのように変化してきたでしょうか。全国の高校卒男女の初任給を比較します。
1975年に男性7万円・女性6万6千円だった高校卒の初任給は、両者ともに上昇を続けています。男女差は1975年の4,100円から、2000年代前半には最大約1万円超まで拡大しました。しかし2010年代以降は急速に縮小し、2019年には4,300円まで戻っています。給与水準全体の上昇を考えると、比率ベースの格差は1975年の5.8%から2019年の2.5%へと大幅に縮まっており、男女間の初任給均等化は着実に進んでいると言えます。
まとめ
- 大学卒男性の全国平均初任給は、1975年の8万4千円から2019年の21万3千円へと45年で約2.5倍に増加した
- 都道府県間の格差は1975年の約1万7千円から2019年の約4万9千円へと、約3倍に拡大した
- 2019年時点で最高の東京都(22万4千円)と最低の沖縄県(17万5千円)の差は約4万9千円に上る
- 高校卒の男女格差は2000年代前半に最大約1万円を超えたが、2019年には4,300円と1975年水準まで縮小している
近年は大手企業を中心とした初任給引き上げが相次いでいます。しかし本データが示すように、地域格差は数十年かけて構造的に固定化してきた問題です。賃上げの恩恵が大都市圏だけでなく、地方の中小企業にまで広がるかどうかが、格差縮小の鍵となるでしょう。
なお、本記事で使用した「社会・人口統計体系」のデータは2019年までで、大学卒(女)・高専短大卒(男)は2019年の1年分しか収録されていません。一方、賃金構造基本統計調査の元テーブル(e-Stat統計表ID: 0003445959)には、都道府県別・性別×学歴の全組み合わせで2020〜2023年のデータが収録されています。このデータを取り込めば、大学卒の男女比較や2020年以降の地域格差の変化を分析できる可能性があります。