
30年で5倍、69万人 — 不登校の長期トレンドを都道府県データで読み解く
文部科学省が2025年10月に公表した調査によると、2024年度の小中学校における不登校児童生徒数は35万人を超え、12年連続で過去最多を更新しました。ただし増加率は2.2%と前年度の15.9%から大幅に鈍化しており、変化の兆しも見えはじめています。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データを使い、1991年度から2023年度までの30年間にわたる不登校の長期トレンドを追います。全国集計だけでは見えない地域ごとの差異を可視化し、この問題の構造を考えます。
不登校児童生徒数の推移
まず、全国の不登校児童生徒数の推移を小学校・中学校別に見てみましょう。ここでの「不登校」とは、年度間に30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的理由を除いたものです。
中学校の不登校は1991年度の約10.8万人から2023年度には約43.2万人へ4倍に増加しています。小学校はさらに急激で、約2.5万人から約26.1万人へ10.3倍に膨れ上がりました。合計すると約69万人。小中学生のおよそ27人に1人が不登校という計算になります。
注目すべきは2016年度以降の加速です。それまでほぼ横ばいだった不登校数が、ここから急カーブを描きはじめました。
不登校率の推移
児童生徒数そのものが少子化で減り続けているため、絶対数だけでは実態が見えません。不登校率(百分率)で見ると、増加の深刻さがより鮮明になります。
中学校の不登校率は1991年度の1.04%から2023年度には6.80%へ。約7%、つまりクラスに2〜3人は不登校がいる計算です。小学校も0.14%から2.15%へと15倍に跳ね上がっています。
2001年度から2012年度にかけていったん横ばい~微減だった不登校率が、2013年度以降に再び上昇に転じた点も注目に値します。この時期、文科省がいじめ防止対策推進法を施行し、不登校を「問題行動」として扱わない方針への転換が進みました。認知の変化が数字に表れている可能性があります。
都道府県別の不登校率
2023年度の都道府県別データから、不登校率の上位・下位それぞれ10県を比較してみましょう。
最も不登校率が高いのは宮城県(4.73%)、最も低いのは福井県(2.69%)で、1.8倍の差があります。上位には宮城県、島根県、長野県、沖縄県、福岡県と、都市部だけでなく地方県も並んでいます。不登校は大都市特有の問題ではなく、全国的な現象であることがわかります。
一方、福井県、岡山県、岩手県、香川県など下位の県は、いずれも3%前後にとどまっています。
20年間の変化が大きい都道府県
2003年度と2023年度の不登校率を比較し、変化幅が大きかった都道府県を見てみましょう。
最も変化が大きいのは沖縄県(1.00% → 4.65%、+3.65ポイント)で、20年間で不登校率が4.7倍になりました。宮城県、長野県、北海道も+3.3ポイント以上の急増を記録しています。
上位15県はすべて+2.8ポイント以上の増加で、20年間で不登校率が2〜4倍に拡大しており、全国的に深刻化が進んでいることがうかがえます。
いじめ認知件数と不登校の関係
不登校の要因として「いじめ」が議論されることが多くあります。2023年度のデータで、都道府県別のいじめ認知件数と不登校数の関係を散布図で確認してみましょう。
散布図を見ると、いじめ認知件数と不登校率の間に明確な正の相関は見られません。北海道や山梨県のようにいじめ認知率が高い県でも不登校率が突出して高いわけではなく、逆にいじめ認知が少ない県でも不登校率が高いケースがあります。
不登校の要因は多岐にわたり、文科省の調査では「無気力・不安」が最も多く、いじめは直接的な要因としては少数です。
まとめ
- 不登校児童生徒数は30年間で約5倍に増加し、2023年度には小中合計で約69万人に達した
- 少子化で児童生徒数が減っているにもかかわらず、不登校率は上昇を続けている
- 都道府県間で最大1.8倍の格差があり、20年間の変化幅にも地域差が大きい
不登校の増加は、単に「学校に行けない子が増えた」という問題ではありません。2017年施行の教育機会確保法により、学校以外の場での学びが公式に認められるようになったことで、「無理に登校しなくてよい」という社会認識が広がりました。数字の増加には、問題の深刻化と認知の変化の両面が含まれています。
2024年度は35万人を超えつつも増加率は2.2%に鈍化し、新規の不登校は9年ぶりに減少に転じました。文科省の「COCOLOプラン」やフリースクールの拡充など、支援の多様化が進む中で、今後の数字がどう推移するか。データを注視していく必要があります。