
定員が余る保育所と待機児童の残る都市 — 少子化が生んだ保育の二極化
2026年4月の保育所入所が決まった家庭がある一方、今も「落選通知」を受け取った保護者がいます。少子化が進むなかで全国の保育所に空きが生まれ始めているにもかかわらず、大都市圏ではなぜ待機児童が残り続けるのでしょうか。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データを使って、保育所の定員・在所児数・待機児童数の変化を分析します。
保育所定員と利用児童数の推移
まず、全国の保育所等の定員数と在所児数がどう推移してきたかを確認します。
1980年代前半まで定員・在所児数はともに高い水準にありましたが、その後の少子化で1990年代まで減少しました。2000年代から女性就労の増加にともない在所児数が回復し、国が保育所の整備を進めたため定員も拡大。2021年度に在所児数がピークを迎えた後、2022年度から減少に転じており、定員との差が広がっています。
待機児童数の推移
全国の待機児童数は2017年度以降、急速に減少してきましたが、ゼロにはなりません。
2017年度に2万6千人超を記録した待機児童数は、保育所の整備促進により急減しました。それでも2022年度時点で全国で約3千人の待機児童が残っています。
定員充足率の地域差(2022年度)
定員に対して実際に何人が利用しているかを示す「定員充足率(在所児数÷定員数×100)」で都道府県を比較します。充足率が低い都道府県ほど、定員に余裕がある状態です。
兵庫県・神奈川県・福岡県・埼玉県などでは定員充足率が95%前後と高く、保育需要が旺盛です。一方、高知県・岐阜県・山梨県・長野県では充足率が70〜77%台と低く、定員の2〜3割が空いている状態です。
待機児童の地域集中(2022年度)
全国でまだ約3千人の待機児童が存在しますが、どの都道府県に集中しているのでしょうか。
待機児童は沖縄県・兵庫県・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県など特定の都道府県に集中しています。定員充足率が高い都道府県と待機児童が多い都道府県は重なっており、保育需要の旺盛な地域では定員が追いついていない構造が続いています。
在所児数の10年間の変化(2012→2022年度)
保育所を利用する子どもの数がどの地域で増え、どこで減ったかを確認します。
在所児数が10年間で大幅に増加しているのは沖縄県・神奈川県・東京都・埼玉県などです。一方、岐阜県・長野県・青森県・山口県・秋田県・山梨県などでは減少しています。少子化と都市への人口集中が、保育需要の地域差を生み出しています。
まとめ
都道府県別データから見える保育の構造は以下の通りです。
- 全国の保育所定員は2010年代から急拡大したが、在所児数は2021年度をピークに減少に転じ、定員の空きが広がっている
- 定員充足率は都道府県間で大きな差があり、高知県や岐阜県では70%台にとどまる一方、兵庫県や神奈川県では95%を超える
- 待機児童は沖縄県・兵庫県・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県に集中しており、保育需要の高い地域ほど充足率も高い
- 在所児数は沖縄県・神奈川県・東京都で増加が続く一方、岐阜県・秋田県などでは減少しており、少子化の進行速度に地域差がある
少子化の進展にともない「保育所が足りない」から「地域によっては余る」への転換が静かに進んでいます。一方で大都市圏の一部では依然として待機児童が残っています。保育の量的整備から、施設の適正配置・統廃合への政策転換が各地で求められるようになっています。