
保育所の定員計画で前年と比べる前に — 通う子どもが1年で27%減ったように見えるのは数え方が変わったからです
少子化が進み、全国の保育所には定員の空きが生まれ始めています。それでも一部の地域では待機児童が残り続けています。この「余る」と「足りない」を都道府県別に並べようとすると、2023年度で数字が大きく落ち込みます。落ち込みの正体を確かめないまま定員計画の前提に使うと、需要が一年で四分の一以上消えたことになってしまいます。
この記事では、e-Stat 社会・人口統計体系の都道府県別データを使って、保育所の定員・在所児数・待機児童数を最新年度まで追い、その落ち込みが何を意味するのかを確かめます。
保育所定員と利用児童数の推移
まず、全国の保育所等の定員数と在所児数がどう推移してきたかを確認します。使っているカテゴリコードは、保育所等定員数が J2505、保育所等在所児数が J2506 です。この系列は2022年度までを描いています。2023年度から調査の対象が変わり、同じ線でつなげられなくなったためです。
在所児数は1980年度の1,996,082人まで伸びたあと少子化で減り続け、1994年度に1,675,877人まで落ちました。定員も1981年度の2,168,811人から1998年度の1,914,712人まで縮んでいます。在所児数は1995年度から回復に転じ、女性就労の増加を受けて2000年代以降も伸び続けました。国が整備を進めた定員の拡大はやや遅れて2000年代に入ってからです。在所児数は2021年度の2,643,196人をピークに2022年度は2,599,190人へ減り、定員は2,936,183人まで伸びたため、両者の差が広がりました。
2023年度に「保育所等」の中身が変わりました
この統計の出どころである社会福祉施設等調査は、2023年度(令和5年)から幼保連携型認定こども園を調査対象から外しました。2022年度まで「保育所等」は幼保連携型認定こども園・保育所型認定こども園・保育所の3種類を指していましたが、2023年度以降は保育所型認定こども園と保育所の2種類です。
そのため2023年度の在所児数1,905,477人をそのまま2022年度の2,599,190人と並べると、1年で27%減ったように見えます。減ったのは対象に含まれる施設の範囲であって、保育を利用する子どもの数ではありません。
幼保連携型認定こども園の在所児数は J2545 という別のカテゴリコードで2022年度まで収録されています。これを J2506 から差し引けば、2017年度以降を2023年度と同じ定義でそろえられます。
そろえた系列では、2022年度の1,964,131人から2023年度の1,905,477人へ3.0%の減少です。公表系列が2021年度まで増え続けていたのは、幼保連携型認定こども園に移った子どもを取り込んでいたためで、保育所と保育所型認定こども園だけを見れば2018年度の2,102,400人から毎年減り続けています。ただしこの減少には、保育所が幼保連携型認定こども園に移行した分も含まれます。子どもの数そのものの減少とは一致しません。
対象から外れた規模は地域で大きく違います
2023年度の数字が2022年度以前とどれだけ食い違うかは、その県で幼保連携型認定こども園がどれだけ広がっていたかで決まります。2022年度の在所児数のうち幼保連携型認定こども園が占めていた割合を都道府県別に見ます。
福井県が60.5%、青森県が55.9%、富山県が52.7%、石川県が51.4%と、この4県では在所児数の半分以上が幼保連携型認定こども園でした。反対に東京都は1.9%、福岡県は5.9%、神奈川県は8.1%、埼玉県は9.0%にとどまります。2023年度の数字は、東京都ではほぼ従来どおりの範囲を、福井県では従来の4割弱の範囲を測っていることになります。
定員充足率の地域差(2023年度)
定員に対して実際に何人が利用しているかを示す「定員充足率(在所児数÷定員数×100)」で都道府県を比較します。充足率が低い都道府県ほど、定員に余裕がある状態です。前節のとおり県ごとに測っている範囲が違うため、この並びは保育需要の強さの順位ではありません。幼保連携型認定こども園への移行が進んだ県では、そこに移らず残った保育所だけの充足率になります。2022年度以前の充足率とも直接は比べられません。
島根県が94.6%、神奈川県が93.3%、京都府が92.1%、熊本県が91.8%と高く、定員にほとんど余裕がありません。一方、山梨県は66.4%、高知県は66.6%、三重県は71.2%、長野県は71.6%で、定員の3割前後が空いています。
待機児童数の推移
待機児童数(J250502)は、これまでの定員・在所児数とは出どころが違います。こども家庭庁の保育所等関連状況取りまとめが元で、社会福祉施設等調査の対象変更の影響を受けません。そのため2024年度まで途切れずに追えます。
2017年度に26,081人を記録した待機児童数は、保育所の整備促進により急減しました。それでも2022年度2,944人、2023年度2,680人、2024年度2,567人と、ゼロには近づいていません。減り方は年を追うごとに緩やかになっています。
待機児童の地域集中(2024年度)
全国でまだ2,567人の待機児童が存在しますが、どの都道府県に集中しているのでしょうか。待機児童数が1人以上の都道府県だけを表示しています。
東京都361人、沖縄県356人、滋賀県353人、兵庫県256人、埼玉県241人が上位です。全国が減るなかで滋賀県は2022年度の118人から2年で3倍に増えました。
充足率と重ねると、需要の強い県ほど待機児童が多いという単純な関係にはなっていません。三重県は充足率が下から3番目の71.2%でありながら、待機児童は108人います。定員が県全体で3割近く空いていても、待機児童は消えません。申し込みと空きは市区町村単位・年齢単位で噛み合う必要があり、都道府県の合計では相殺されて見えなくなるためです。
まとめ
都道府県別データから見える保育の構造は以下の通りです。
- 2023年度から「保育所等」は幼保連携型認定こども園を含まない。在所児数1,905,477人を2022年度の2,599,190人と並べると27%減に見えるが、対象の範囲が変わったことによる
- 同じ定義でそろえると2022年度1,964,131人から2023年度1,905,477人で3.0%の減少。公表系列が2021年度まで増えていたのは幼保連携型認定こども園への移行分を取り込んでいたため
- 対象から外れた規模は東京都1.9%、福井県60.5%と県で大きく違う。2023年度の県間比較は、県ごとに違う範囲の施設を並べている
- 定員充足率は島根県94.6%から山梨県66.4%まで開く。待機児童は別調査で2024年度2,567人が残り、充足率が下から3番目の三重県にも108人いる
少子化の進展にともない「保育所が足りない」から「地域によっては余る」への転換が静かに進んでいます。ただし2023年度以降の数字を前年と並べるときは、その差が実態の変化なのか対象の変化なのかを分けて読む必要があります。
データの出典
本記事は e-Stat 社会・人口統計体系の都道府県別福祉データ(j_pref_welfare)を 2026-08-04 時点で集計しています。定員数(J2505)・在所児数(J2506)・幼保連携型認定こども園在所児数(J2545)の元データは厚生労働省の社会福祉施設等調査、待機児童数(J250502)はこども家庭庁の保育所等関連状況取りまとめで、数値はいずれも年度の値です。
同じ名前の指標が年度によって別の範囲を指すことは、複数年をまたいで並べて初めて気づきます。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。e-Statをはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の福祉・保育データから、自分の自治体の充足状況や、対象変更の影響がどれだけ及ぶかを確かめられます。データ整備に時間を取られず、施設の配置計画の検討そのものに集中できます。
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Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「2022年度の保育所等在所児数のうち幼保連携型認定こども園が占める割合を都道府県別に出して。2017年度と比べて、どの県で移行が進んだかも見せて。」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 2022年度の保育所等在所児数のうち幼保連携型認定こども園が占める割合を都道府県別に出して。2017年度と比べて、どの県で移行が進んだかも見せて。 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/nursery-capacity-gap.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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