
図書館の使われ方、都道府県でこんなに違う — 人口あたり貸出冊数の格差と変化
「図書館の充実度」は都道府県によって大きく異なります。文部科学省が3年ごとに実施する社会教育調査のデータから、図書館数・蔵書数・館外貸出冊数の3指標を使って都道府県間の差を読み解きます。施設整備計画の立案、商圏内の教育インフラ評価、移住先の生活環境調査など、さまざまな場面で活用できるデータです。
図書館数は増え続けているが、貸出は減少
まず全国の図書館数と館外貸出冊数の推移を確認します。社会教育調査では図書館調査と一般調査が交互に行われるため、データは3年おきになっています。
図書館数は2005年の2,979館から2021年の3,394館へと着実に増加しています。しかし施設数の増加が必ずしも利用増につながっていない実態があります。
全国の館外貸出冊数は2010年の約6億8,000万冊をピークに減少に転じ、2020年には約5億3,000万冊まで落ち込みました。2020年はコロナ禍の影響もあり、2017年から2020年にかけて特に大きく減少しています。
都道府県別の人口あたり貸出冊数(2020年)
施設数や絶対的な貸出冊数は人口規模に左右されるため、人口1人あたりの館外貸出冊数で都道府県を比較します。
以下の指標を使って人口1人あたりの貸出冊数を算出しています。
- 図書館館外貸出冊数: 1年間に貸し出された冊数の合計(e-Stat 社会・人口統計体系)
- 総人口: 各都道府県の総人口(同上)
滋賀県(6.89冊)が全国トップで、高知県(6.19冊)、東京都(6.06冊)が続きます。一方、秋田県(2.57冊)、青森県(2.58冊)、宮崎県(2.71冊)は最も低い水準です。最高の滋賀県と最低の秋田県の差は2.7倍に達します。
東京都が上位3位に入るのは注目です。23区の図書館ネットワークが充実しており、居住者が高い頻度で図書館を利用していることが反映されています。
蔵書数の格差も大きい
貸出冊数だけでなく、図書館に所蔵されている本の数(蔵書数)も地域差を示す重要な指標です。人口1人あたりの蔵書冊数を確認します。
社会教育調査では蔵書数は奇数回(2005、2011、2021年等)に調査されています。
蔵書数ランキングでは福井県(8.06冊)が首位で、滋賀県(7.08冊)、鳥取県(6.99冊)が続きます。最下位は神奈川県(1.84冊)で、下から2番目の京都府(2.75冊)に対しても大きな差があります。
貸出冊数と蔵書数の両指標で高い都道府県(滋賀・高知・鳥取・福井など)は、人口規模は大きくないが図書館への投資水準が高い地域です。
貸出冊数の変化:増やした県と減らした県
2007年から2020年にかけて、都道府県別の館外貸出冊数がどのように変化したかを確認します。
高知県が約92%増と圧倒的なトップです。2007年時点で全国平均以下だった高知県は、積極的な図書館整備によって2020年には全国2位まで上昇しました。和歌山県(+20%)、長崎県(+14%)なども増加が目立ちます。
一方、福島県(-54%)は東日本大震災の影響が大きく、仮設住宅への避難や図書館施設の被害が長期的に利用に影響したと考えられます。山梨県(-35%)、三重県(-30%)も大きく落ち込んでいます。
データの時点について
本記事の館外貸出冊数は2020年(令和2年度間)時点のデータです。令和6年度社会教育調査(2026年3月公表)では2023年度間の全国貸出冊数が約5億9,390万冊と報告されており、コロナ禍からの回復が確認されていますが、都道府県別データは e-Stat への反映待ちのため、本記事にはまだ含められていません。反映され次第、更新予定です。
自治体の図書館政策への活用
- 自都道府県の人口あたり貸出冊数・蔵書数を、隣接県や人口規模が近い県と比較することで、整備計画策定時の基準値として使えます
- 高知県のように短期間で貸出冊数を大幅に伸ばした事例は、施設整備や運営改善の効果を示す参考になります
- 図書館数は増えているのに貸出冊数が減少している全国傾向を踏まえ、施設数だけでなく利用促進策の検討材料にできます