
「健康でいられる年数」は都道府県で2年以上違う — 健康寿命の地域格差をデータで読む
日本は世界有数の長寿国です。2024年の簡易生命表によると、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳。しかし「長生き」と「健康で長生き」は同じではありません。日常生活に制限のない期間を示す「健康寿命」と平均寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年あります。この「不健康な期間」は都道府県によっても大きく異なります。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別データを使い、健康寿命の全国推移と地域格差を可視化します。
平均寿命と健康寿命の推移
まず全国の推移を確認します。平均寿命(0歳の平均余命)と健康寿命を男女別に重ねて表示します。上の線が平均寿命、下の線が健康寿命で、その間が「不健康な期間」です。
平均寿命・健康寿命ともに延びていますが、両者の差はほとんど縮まっていません。2010年時点で男性の不健康期間は約9.1年(平均寿命79.55歳 − 健康寿命70.42歳)、2019〜2020年時点では約8.9年(81.56歳 − 72.68歳)と微減にとどまります。女性は約12.7年(86.30歳 − 73.62歳)から約12.3年(87.71歳 − 75.38歳)へとやはり大きな差が残っています。
都道府県別 健康寿命ランキング(男性)
健康寿命には都道府県間で明確な差があります。2019年の男性データで上位10県・下位10県を比較してみましょう。
男性の健康寿命が最も長いのは大分県(73.72歳)で、山梨県(73.57歳)、埼玉県(73.48歳)が続きます。一方、最も短いのは岩手県(71.39歳)、愛媛県(71.50歳)、鳥取県(71.58歳)。トップの大分県とボトムの岩手県の差は2.33歳にのぼります。同じ日本に住んでいても、健康でいられる年数に2年以上の開きがあるのです。
「不健康な期間」の地域差
健康寿命だけでなく、平均寿命との差 =「不健康な期間」にも地域差があります。平均寿命が長くても健康寿命が伸びなければ、不健康な期間は逆に長くなります。2019年の健康寿命と2020年の平均寿命から、男性の不健康期間を都道府県別に算出しました。
不健康期間が最も長いのは長野県(10.13年)です。長野県は平均寿命が全国2位(82.68歳)と長寿ですが、健康寿命は72.55歳と中位にとどまり、結果として不健康な期間が長くなっています。長寿県 = 健康長寿県とは限らないことを示す象徴的なケースです。一方、不健康期間が最も短いのは青森県(7.54年)ですが、これは平均寿命自体が短い(79.27歳)ためです。大分県(8.16年)や山梨県(8.14年)のように、健康寿命が長い結果として不健康期間が短い県と、平均寿命が短いために不健康期間が短い県の2パターンがあることに注意が必要です。
9年間の改善幅
最後に、2010年から2019年にかけて健康寿命がどれだけ伸びたかを見てみましょう。男性について、改善幅の大きい10県・小さい10県を比較します。
大分県は9年間で3.87歳も健康寿命を伸ばし、2019年に全国1位に躍り出ました。長崎県(+3.15歳)、東京都(+2.95歳)も大きく改善しています。一方、改善幅が小さい県でも1歳前後は伸びており、全体として健康寿命は改善傾向にあります。ただし改善の速度には最大3倍近い差があります。
まとめ
- 平均寿命と健康寿命の差(不健康な期間)は男性約9年、女性約12年で、過去10年でほとんど縮まっていない
- 健康寿命の都道府県格差は男性で2年以上あり、大分県・山梨県が上位、岩手県・愛媛県が下位
- 平均寿命が長い県が必ずしも不健康期間が短いわけではない。長野県は長寿だが不健康期間は最長
「健康日本21(第三次)」では2040年までに健康寿命を75歳以上にする目標を掲げています。全国平均では男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)と女性は目標に近づきつつありますが、男性はまだ道半ばです。平均値だけでなく、地域間の格差をどう縮めるかも大きな課題です。健康寿命を「見える化」し、地域ごとの取り組みを比較することが、長寿大国の次のステップになるのではないでしょうか。