
都道府県別の通勤時間データで読む職住近接の地域差
通勤時間は、採用競争力や従業員の定着率、在宅勤務制度の設計に影響する要素です。オフィスや拠点をどこに置くか、どの地域から人材を採用するかを考えるとき、その地域に住む人がふだんどれくらいの通勤時間をかけているかは、見落とされがちですが重要な前提になります。長時間通勤が常態化している地域では、職住近接を打ち出した勤務制度や在宅勤務の整備が、採用と定着の面で効きやすいと考えられます。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」の住宅・土地統計データを使い、都道府県別の通勤時間の構成と、長時間通勤世帯の割合の地域差を分析します。
通勤時間階級のデータ(2018年)
このデータは e-Stat「社会・人口統計体系」の都道府県別住宅データ(h_pref_housing)から取得しています。総務省統計局の住宅・土地統計調査をもとに、家計を主に支える者が雇用者である普通世帯を、通勤時間の階級ごとに集計したものです。以下の4区分が収録されています。
| コード | 内容 |
|---|---|
| H740101 | 通勤時間30分未満 |
| H740102 | 通勤時間30〜60分未満 |
| H740103 | 通勤時間60〜90分未満 |
| H740104 | 通勤時間90分以上 |
ここでは、通勤時間が判明している世帯(上記4区分の合計)に占める「60分以上」(H740103 と H740104 の合計)の割合を求め、47都道府県を比較します。片道60分以上は、往復で2時間以上を通勤に費やす水準にあたります。
通勤60分以上世帯の割合が高い上位には、神奈川県・千葉県・埼玉県・奈良県が並びます。いずれも東京や大阪といった大都市のベッドタウンを抱える県で、住まいと勤め先が県境をまたいで離れていることが、この割合の高さに表れています。
注目したいのは、東京都や大阪府そのものは上位の最上段ではない点です。都市の中心部は職住が近接しており、長時間通勤の割合はベッドタウンを抱える周辺県のほうが高くなります。下位には宮崎県・鳥取県・山形県など地方の県が並び、通勤60分以上の世帯はごくわずかです。地方では多くの人が30分未満で通勤しており、職住近接が地域の標準になっていることがうかがえます。
通勤60分以上世帯の割合(地図)
同じ指標を地図で見ると、長時間通勤が首都圏に集中している様子が一目で分かります。
濃く塗られているのは南関東(神奈川・千葉・埼玉)と、大阪近郊の奈良県です。首都圏では一都三県をまたいだ通勤が広く行われており、長時間通勤の割合が全国でも突出しています。一方、地方の多くの県は薄い色にとどまり、通勤時間の負担が地域によって大きく異なることが確認できます。
通勤時間の構成を比べる
割合だけでなく、通勤時間の階級がどう分布しているかを見ると、地域ごとの通勤事情の違いがより具体的に分かります。代表的な都道府県と全国の構成を並べます。
宮崎県では8割の世帯が通勤30分未満で、60分以上はわずかです。これに対し神奈川県では30分未満が3割を切り、60分以上が3分の1を占めます。千葉県・埼玉県も同様の構成で、長時間通勤層の厚みが地方とは明確に異なります。
東京都は30分未満こそ3割程度ですが、中心は30〜60分の層で、90分以上は5%弱にとどまります。都心の職場に対し都内から通う構成が多く、ベッドタウンを抱える周辺県より極端な長時間通勤は少ない傾向です。同じ大都市圏でも、住む場所が県のどこに位置するかで通勤時間の構成は大きく変わります。
通勤時間データの業務活用
ここで紹介したデータは、次のような業務シナリオで活用できます。
- 拠点・オフィスの立地評価: 採用したい人材が住む地域の通勤時間構成を把握し、オフィスの立地やサテライトオフィスの設置を検討する材料にできます
- 在宅勤務・フレックス制度の設計: 長時間通勤世帯の割合が高い地域を採用圏に含む場合、在宅勤務や時差出勤の整備が定着率に効きやすいと考えられます
- 採用条件の地域別チューニング: 通勤手当や勤務地の選択肢を、地域の通勤事情に合わせて設計する根拠になります
- 住宅・不動産の訴求設計: 職住近接ニーズの強さを地域別に把握し、立地の打ち出し方を検討できます
このデータの読み方と注意点
本記事は e-Stat 社会・人口統計体系の都道府県別住宅データ(h_pref_housing)を 2026-07-11 時点で取得して集計しています。元になっているのは総務省統計局の住宅・土地統計調査で、対象は2018年(平成30年)調査、集計単位は47都道府県です。
ランキングと地図では area_name <> '全国' で全国の合計行を除き、47都道府県だけを対象にしています。同じテーブルに全国行と都道府県行が混在しており、そのまま並べると全国が48番目の「県」として混ざるためです。構成比の図だけは比較の基準として全国行を意図的に残しています。分母は通勤時間4区分(H740101〜H740104)の合計で、通勤時間が判明している世帯に限っています。「不詳」や通勤していない世帯は元データの4区分に入らないため、割合の分母からも外れています。年次は year = 2018 に固定しました。同じ地域・同じ区分に複数の値が入る場合は最大値を1件に丸めています。
このデータで分かるのは、家計を主に支える者が雇用者である普通世帯の、居住地から見た通勤時間の構成までです。勤務先がどこにあるか、通勤手段が何かは分かりません。集計は居住地ベースのため、県境をまたいで通勤する人は住んでいる県に計上されます。都道府県単位の値であり、同じ県の中でも都心寄りの市区町村と郊外では構成が大きく異なります。値は2018年時点のもので、その後に広がった在宅勤務の影響は含まれていません。
通勤時間の負担は、個別の求人や物件を一つずつ眺めているだけでは地域全体の傾向が見えてきません。全都道府県を横断して構成を並べ、人口や住宅の状況と重ねてはじめて、長時間通勤がどの地域に偏っているかが浮かび上がります。Queriaは、こうした分析の土台になるデータを整えた形で公開しています。e-Statをはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った都道府県別の住宅・土地統計データのテーブルから、採用圏の地域を取り出して通勤事情を見比べられます。データの整備に時間を取られず、立地や勤務制度の判断そのものに集中できます。
まとめ
- 通勤60分以上世帯の割合は、神奈川・千葉・埼玉・奈良といった大都市のベッドタウンを抱える県で高い
- 東京都や大阪府そのものより、周辺のベッドタウン県のほうが長時間通勤の割合が高い
- 地方の県では多くの世帯が30分未満で通勤しており、職住近接が地域の標準になっている
- 通勤時間の構成は、同じ大都市圏でも住む場所によって大きく異なり、拠点立地や勤務制度の設計判断の前提になる
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たとえば「通勤90分以上(H740104)の世帯割合を都道府県別に出して、60分以上のランキングと顔ぶれが変わるか確かめて」といった深掘りができます。
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