新規出店や不動産投資の候補地を選ぶとき、多くの人が探すのが「これから人が増えて、しかもまだ地価が安い街」です。ただ、地価は将来の需要をあらかじめ織り込んで決まります。人口が増える見込みのエリアは先に買われて地価も上がるため、「人口が増える × 地価が安い」という都合のよい組み合わせは、全国を見渡すとほとんど残っていません。
そこでこの記事では、国土交通省の国土数値情報が公表する将来推計人口と、不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報を市区町村単位で掛け合わせます。まず「市場が将来人口をどれだけ地価に織り込んでいるか」を可視化し、その織り込みから取り残された——つまり「将来人口の伸びの割に、地価がまだ安い」出遅れエリアを探します。候補地の優先順位づけを、直感ではなく数字で行うための分析です。
データの概要
掛け合わせるのは次の2つのテーブルです。市区町村コードで結合します。
| データ | テーブル | 使う指標 |
|---|---|---|
| 将来推計人口 | nlftp.population.future_population_municipality |
2025→2035年の人口増減率(%) |
| 不動産取引価格 | reinfolib.main.mart_trade_prices |
住宅地の㎡単価(実取引、円/㎡) |
将来推計人口は、国土数値情報「1kmメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」を市区町村単位に集計したもので、推計値は国勢調査と国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口に基づきます。住宅地の㎡単価は、不動産取引価格情報のうち property_type = '宅地(土地)' かつ region = '住宅地' の実取引を、2023〜2025年で市区町村ごとに平均しています。取引件数が少ないと相場がぶれるため、住宅地取引が15件以上あり、人口1万人以上の1,267市区町村に絞りました。
地価は将来人口をどこまで織り込んでいるか
1,267市区町村を「住宅地㎡単価(横軸・対数)」と「2025→2035年の人口増減率(縦軸)」で散布図にし、両者の関係を表す回帰直線(市場のトレンド)を重ねます。
点は左下から右上へ伸び、住宅地㎡単価が高い市区町村ほど将来人口の増減率も高いという、明確な右肩上がりの関係が出ます。地価が将来の人口動向をかなりの程度織り込んでいることを示しています。実際、対象1,267市区町村のうち人口が増えるのは111にとどまり、その大半は地価も高い側にあります。横軸の左下(地価が安く、人口も増える)に当たる「増えて安い」エリアは、ほとんど存在しません。市場はすでに将来の伸びを価格に反映している、というのが全体像です。
注目すべきは、回帰直線(トレンド)より上に位置する市区町村です。これは「この地価水準なら市場が見込む人口動向」を実際の伸びが上回っているエリア、つまり将来人口の伸びの割に地価がまだ安い「出遅れ」エリアです。ここでは人口が増え(縦軸プラス)、かつトレンドを大きく上回る17市区町村を狙い目として紫で示しました。地価の安さそのものではなく、「伸びに対する地価の出遅れ」を基準にすることで、市場の織り込みから漏れた候補地を抽出できます。
出遅れエリアはどこにあるか
狙い目とした17市区町村を地図にプロットします。紫が出遅れエリア(点の大きさは人口規模)、灰色は人口が増えるその他の市区町村です。
Data:reinfolib.main.mart_trade_pricesnlftp.population.future_population_municipalitynlftp.boundary.municipality
出遅れエリアは、つくばエクスプレス沿線(茨城県つくばみらい市・守谷市・つくば市、千葉県印西市)、福岡都市圏(福岡県粕屋町・福津市)、沖縄(中城村・八重瀬町など)、そして半導体関連の集積が進む熊本県の菊池地域(大津町・菊陽町・合志市)に集まっています。いずれも大都市圏の中心部から外れ、地価がまだ地方〜郊外の水準にとどまりながら、人口の伸びが見込まれる地域です。鉄道延伸や産業集積など、需要を押し上げる材料が地価に十分織り込まれる前の段階にある、と読み取れます。
出遅れ(伸びの割に地価が安い)ランキング
狙い目17市区町村を、将来人口増減率の高い順に並べます。棒の長さが2025→2035年の人口増減率、ラベルが住宅地㎡単価です。
千葉県印西市(+5.8%・8.1万円/㎡)、福岡県粕屋町(+4.9%・10.2万円/㎡)、茨城県つくばみらい市・守谷市(ともに+4.8%)などが上位に並びます。地価の安さで際立つのは熊本県大津町で、人口増減率+2.8%に対して住宅地㎡単価は3.6万円/㎡と、狙い目の中でも最も安い水準です。同じ熊本県の菊陽町・合志市、茨城県つくば市(4.3万円/㎡)も、半導体や研究学園都市の集積を背景に人口が伸びる一方、地価はまだ抑えられています。これらは需要の伸びを先取りしつつ取得コストを抑えられる候補として、優先的に現地調査の対象に挙げられます。
業務での活用
この掛け合わせは、以下のような業務シナリオで使えます。
- 候補地のロングリスト作成: 将来人口の伸びに対して地価が割安な(トレンド線より上の)市区町村を機械的に抽出し、現地調査に進む候補を絞る
- 取得タイミングの見極め: 出遅れエリアは需要の織り込みが進む前の段階にあるため、地価が上がりきる前の取得余地を検討する
- 既存出店エリアのベンチマーク: 自社の主力エリアの人口の伸びと地価水準を基準に、同等の伸びでより割安な候補を探す
- 撤退・縮小判断の材料: トレンド線より下(伸びの割に地価が割高)や人口が減り続ける市区町村を可視化し、出店ペースや投資配分を見直す
このデータの読み方と注意点
本記事は国土交通省の国土数値情報「1kmメッシュ別将来推計人口(令和6年国政局推計)」を市区町村単位に集計した将来推計人口と、不動産情報ライブラリの不動産取引価格情報を、2026年7月11日時点で取得して突き合わせています。人口は2025年と2035年の推計値、地価は2023〜2025年の実取引です。
集計では、取引価格のうち物件種別が「宅地(土地)」かつ地域区分が「住宅地」の取引だけを使い、㎡単価が0以下の行を除いています。そのうえで、2023〜2025年の住宅地取引が15件に満たない市区町村と、2025年推計人口が1万人未満の市区町村を対象から外しました。取引が数件しかない自治体では平均㎡単価が個別物件に引きずられ、市場の水準として横並びに比較できないためです。この2つの条件を通ったのが1,267市区町村で、全国の市区町村のうち取引の薄い自治体や小規模な町村は最初から視野に入っていません。「出遅れ」の判定は、㎡単価(常用対数)に対する人口増減率の回帰直線からの残差が8ポイント以上、かつ人口増減率がプラスという条件で行っています。この8ポイントという線引きは候補地を絞り込むための便宜的な基準で、統計的に定まったものではありません。
このデータで分かるのは市区町村単位の平均で、駅前と郊外といった市区町村内の差は見えません。将来推計人口は推計値であり、公表後に決まった大型開発や企業立地は反映されていません。㎡単価も住宅地の取引に限っているため、商業地の地価や賃料の水準はこの分析には含まれていません。
地価は将来の需要を映す鏡である一方、その織り込みには地域差とタイムラグがあります。どこが「伸びの割にまだ安い」のかは、将来人口と地価を全国横並びで突き合わせて初めて見えてきます。こうした分析の土台になるデータを、Queriaは整えた形で公開しています。国土数値情報や不動産取引価格をはじめとする官公庁のオープンデータについて、列名・単位・文字コードを揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えてあります。データを集めて加工する手間をかけずに、本記事で使った将来推計人口テーブルと不動産取引価格テーブルを市区町村コードで突き合わせ、自社の条件に合う候補地を絞り込めます。データ整備に時間を取られず、出店・投資の判断そのものに集中できます。
まとめ
- 住宅地㎡単価が高い市区町村ほど将来人口の増減率も高く、地価は将来人口を強く織り込んでいます。単純に「人口が増えて地価が安い」エリアはほとんど存在しません
- ただしトレンド(回帰直線)より上=伸びの割に地価が出遅れた市区町村が17あり、つくばエクスプレス沿線・福岡都市圏・沖縄・熊本の菊池地域に集中しています
- 印西市・つくばみらい市・大津町・つくば市などは、人口の伸びを取りつつ取得コストを抑えられる候補です
「人が増えて地価が安い街」をそのまま探すと、市場の織り込みでほぼ消えてしまいます。視点を「伸びに対する地価の出遅れ」に変えれば、将来人口と地価を市区町村単位で掛け合わせるだけで、候補地を直感に頼らず優先順位づけできます。
Dig deeper with an AI agent
Connect Queria to Claude or ChatGPT, or use Claude Code or Codex, and paste the prompt below. It also works from your phone or browser.
For example, you could explore “熊本県の市区町村だけで、住宅地の㎡単価(2023〜2025年平均)と将来人口増減率(growth_rate_2025_2035)を並べて、菊池地域が本当に地価の出遅れといえるか確かめて”.
Using Queria's open data, analyze the following: 熊本県の市区町村だけで、住宅地の㎡単価(2023〜2025年平均)と将来人口増減率(growth_rate_2025_2035)を並べて、菊池地域が本当に地価の出遅れといえるか確かめて Reference (this report): https://queria.io/showcase/population-growth-land-price.md Connect with the Queria connector (https://queria.io/mcp) or the Queria CLI (uvx queria). Run uvx queria --help and uvx queria docs list to learn the CLI.
Start in a terminal (CLI)
claude "Using Queria's open data, analyze the following: 熊本県の市区町村だけで、住宅地の㎡単価(2023〜2025年平均)と将来人口増減率(growth_rate_2025_2035)を並べて、菊池地域が本当に地価の出遅れといえるか確かめて Reference (this report): https://queria.io/showcase/population-growth-land-price.md Connect with the Queria connector (https://queria.io/mcp) or the Queria CLI (uvx queria). Run uvx queria --help and uvx queria docs list to learn the CLI."