
高齢者が3割増える地域と2割減る地域が、同じ県の中に並ぶ——全国333区域を2050年まで数える
病院の建て替えも、介護施設の新設も、投じた資金を回収するまでに長い年月がかかります。その間ずっと利用者がいるかどうかは、施設が建つ地域に何人の高齢者が住んでいるかで決まります。全国の話として「高齢者はこれから増える」と聞いたことがあるとしても、投資の判断に必要なのは全国の数ではなく、自分が事業を営む範囲の数です。
都道府県が医療計画の中で定めている区域を単位にすると、その数を全国分並べられます。65歳以上の人数が2025年から2050年にかけてどう変わるかを、区域ごとに数えていきます。
数え方と、使うデータ
区域の単位には二次医療圏を使います。一般の入院医療をその中で完結させることを想定して都道府県が定めるもので、複数の市区町村がまとまって1つの区域になります。全国で335区域あり、国土数値情報の医療圏データから区域の範囲(nlftp.medical.secondary_medical_area)と、どの市区町村がどの区域に属するかの対応表(nlftp.medical.medical_area_municipality)を取れます。区域の分け方は2020年度時点の医療計画にもとづくもので、その後の見直しは反映されていません。
人口は国土数値情報の1kmメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)を市区町村単位に集計したテーブル(nlftp.population.future_population_municipality)を使います。もとになっているのは総務省の令和2年国勢調査と、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」です。出発点が2020年の国勢調査なので、それ以降に起きたことは織り込まれていません。
このテーブルが持っているのは次の列です。
| 列 | 内容 |
|---|---|
population_2020 〜 population_2070 |
総人口。2020年から2070年まで5年刻み |
elderly_ratio_2025 |
2025年の65歳以上人口の割合(%) |
elderly_ratio_2050 |
2050年の65歳以上人口の割合(%) |
growth_rate_2025_2035 / growth_rate_2025_2050 |
総人口の増減率(%) |
将来推計人口のテーブルは政令指定都市を行政区の単位で持つので、たとえば千葉市は6行に分かれます。65歳以上の人数そのものを持つ列はないので、population_2025 * elderly_ratio_2025 / 100 で市区町村ごとに復元し、区域の構成市区町村について合計します。高齢化率が入っているのは2025年と2050年の2時点だけなので、人数を比べられるのもこの2時点です。
福島県の13市町村は、将来推計人口のテーブルで市区町村ごとに分かれていません。13市町村分は city_code が 07999 の1行にまとめられていて、市区町村コードで結合すると落ちます。この13市町村は相双といわきの2区域に属していて、どちらも区域を構成する市町村すべてがこの1行に入るため、区域ごとの合計が出せません。数えるのは、この2区域を除いた333区域です。
半分どころか、3分の2の区域で減る
区域ごとに2025年と2050年の65歳以上人口を出し、その増減率で333区域を並べたものが次の図です。
333区域のうち213区域、割合にして64.0%で、2050年の65歳以上人口が2025年を下回ります。増減率の中央値は−8.0%で、最も減る区域は−46.1%(石川県の能登北部)、最も増える区域は+63.7%(東京都の区中央部)でした。同じ「高齢化する日本」の中で、110ポイント近い開きがあります。
一方で、333区域の合計では65歳以上人口は+6.5%と増えます。矛盾しているようですが、減る213区域に住む65歳以上の人は2025年時点で全体の34.5%にとどまるためです。区域の数では3分の2でも、人数の重みでは3分の1です。全国の合計だけを見ていると増加に見え、区域を1つずつ数えると多数は減少に見えます。どちらも同じデータの姿で、施設の立地はどこか1つの区域の中にあります。
高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)のほうは、333区域のうち332区域で2050年に上がります。下がるのは東京都の島しょ(35.8%→34.9%)だけです。率はほぼどこでも上がるのに、人数は3分の2の区域で減る——このずれが、地域ごとの需要の見え方を大きく変えます。
高齢化率は小数第1位までの収録なので、そこから復元した人数には丸めの幅があります。増減率の絶対値が0.5%に満たない9区域は、この幅の内側にあり、増える側か減る側かを断定できません。
なお、ここで数えているのは65歳以上をひとまとめにした人数です。入院や介護の必要度は75歳以上、85歳以上と年齢が上がるほど高くなりますが、このテーブルが持つ年齢の区切りは65歳だけなので、より高い年齢層だけを取り出すことはできません。
増えるか減るかは、区域の人口規模でほぼ決まっている
333区域を2025年の総人口で5等分し、それぞれの層で65歳以上人口が増える区域の割合を見ると、次のようになります。
最も小さい層(1.75〜6.95万人)では67区域のうち増えるのは3.0%、つまり2区域だけです。層が上がるごとに7.5%、17.9%と増え、最も大きい層(56.86〜380.2万人)では90.9%が増えます。増減率の中央値も、最小の層の−30.4%から最大の層の+15.5%まで一本調子で動きます。
見方を変えると、区域の人口規模を1つ知るだけで、その区域の高齢者が増えるか減るかの見当がかなりつくということです。すでに小さい区域は、これから高齢者の人数まで減ります。区域の総人口はこのテーブルの population_2025 をそのまま合計すれば出せるので、投資先の候補を並べる段階で最初に見る指標になります。
都道府県の平均では、自分の区域は見えない
同じ都道府県の中でも、区域によって向きが逆になります。県内で最も増える区域と最も減る区域の開きが大きい10県を並べると、次のようになりました。
開きが最も大きいのは東京都で、区中央部の+63.7%と島しょの−22.3%で86.0ポイント離れます。次いで石川県が石川中央(+15.0%)と能登北部(−46.1%)で61.1ポイント、千葉県が東葛南部(+32.4%)と安房(−23.7%)で56.1ポイントです。北海道は21区域のうち増えるのは札幌だけで、残る20区域は減ります。
この10県はすべて、増える区域と減る区域を同じ県の中に抱えています。県単位の統計を見て「うちの県は高齢者が増える」「減る」と判断すると、事業を営む区域が県内のどちら側にあるかで結論が反転します。
千葉県の9区域を開いてみる
県の内側がどう割れるのかを、千葉県で見てみます。
| 区域 | 市区町村数 | 総人口(2025年) | 65歳以上(2025年) | 65歳以上(2050年) | 増減率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東葛南部 | 6 | 1,813,721 | 424,195 | 561,591 | +32.4% |
| 東葛北部 | 5 | 1,422,559 | 383,325 | 468,970 | +22.3% |
| 千葉 | 6 | 991,173 | 271,165 | 329,266 | +21.4% |
| 印旛 | 9 | 703,793 | 213,905 | 231,739 | +8.3% |
| 君津 | 4 | 321,012 | 100,650 | 102,607 | +1.9% |
| 市原 | 1 | 259,260 | 82,704 | 80,814 | −2.3% |
| 山武長生夷隅 | 17 | 392,364 | 151,617 | 134,655 | −11.2% |
| 香取海匝 | 7 | 243,562 | 93,871 | 74,633 | −20.5% |
| 安房 | 4 | 110,661 | 49,479 | 37,750 | −23.7% |
東京湾に面した東葛南部・東葛北部・千葉の3区域では65歳以上が2割から3割強増え、県の東部と南部にあたる山武長生夷隅・香取海匝・安房の3区域では1割から2割強減ります。同じ県の中に、需要が3割伸びる区域と2割縮む区域が並んでいることになります。
65歳以上の人数を比べられるのは2025年と2050年の2時点ですが、総人口のほうは2070年まで5年刻みで収録されています。2020年=100として4区域で並べると、道筋そのものが2070年まで分かれ続けます。
東葛南部は2030年に101.3で頂点を打ち、2070年でも90.3を保ちます。千葉は2020年から下がり続けて2070年に81.9です。これに対し山武長生夷隅は2070年に47.2、安房は45.6で、いずれも50年で人口が半分以下になります。同じ県の中で、50年後に1割減る区域と半分以下になる区域が同時に存在します。
高齢者の人数が減る区域では、総人口の減り方はそれ以上に速いということでもあります。安房は総人口が2025年から2050年で3割超減る一方、65歳以上は23.7%減にとどまります。人口に占める高齢者の比重は上がり続けるので、必要な医療・介護の量が地域の中で相対的に大きくなる状況は変わりません。変わるのは、その量を支える絶対数のほうです。
業務でどう使うか
- 投資判断の分母をそろえる: 施設の商圏を市区町村ではなく区域の単位で捉え、回収期間の終わりにあたる年の65歳以上人口を先に見ます。区域の総人口が全国で下から2割に入るなら、増える見込みは3.0%です
- 県平均で判断しない: 都道府県別の統計から入らず、
medical_area_municipalityで自社の施設がある市区町村の区域コードを引き、その区域の増減率を出してから県内の他区域と並べます - 撤退と統合の時期を逆算する: 高齢者数が減る区域では、総人口の減り方がそれより速く進みます。人員採用の見通しや外来の受け皿を、需要の大きさだけでなく支え手の細り方から考える材料になります
データの出典
本記事は国土数値情報の医療圏データ(2020年度版)と1kmメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)を 2026-09-09 時点で集計しています。推計のもとになっているのは総務省の令和2年国勢調査と、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」です。
将来の需要を地域単位で見るには、区域の定義と人口推計という別々の出どころのデータを、市区町村コードで突き合わせる必要があります。Queriaはこうした行政のオープンデータについて、列名・単位・コード体系を揃え、テーブルやカラムの意味をメタデータとして添えた形で公開しています。データを集めて整える手間をかけずに、本記事で使った市区町村と医療圏の対応表と市区町村別将来推計人口テーブルから、自社の施設がある区域の数字を確かめたり、候補地の区域を並べて比べたりできます。人口データの整備に時間を取られず、投資と撤退の判断そのものに時間を使えます。
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Claude Code や Codex に Queria スキル を入れて、下のプロンプトを貼るだけです。ターミナルでも、スマホやブラウザのリモート画面でも使えます。
たとえば「自分の県の二次医療圏ごとに、2025年と2050年の65歳以上人口と増減率を出して。構成市区町村ごとの内訳と、区域の総人口も一緒に見たい」といった深掘りができます。
Queria の公開データで次を分析してください: 自分の県の二次医療圏ごとに、2025年と2050年の65歳以上人口と増減率を出して。構成市区町村ごとの内訳と、区域の総人口も一緒に見たい 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/medical-area-elderly-divide.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。
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claude "Queria の公開データで次を分析してください: 自分の県の二次医療圏ごとに、2025年と2050年の65歳以上人口と増減率を出して。構成市区町村ごとの内訳と、区域の総人口も一緒に見たい 参考 (この記事): https://queria.io/showcase/medical-area-elderly-divide.md Queria スキル (https://docs.queria.io/queria-skill) を導入済みならスキルで、未導入なら uvx queria で接続できます。"
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